わが国において韓国芸能人に支払った人的役務の提供に対する報酬は、日韓租税条約上免税にならないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
1997/07/02 [所得税法][源泉徴収] 請求人は、韓国の居住者である芸能人に対し、国内における芸能人としての人的役務の提供に対する報酬を支払っていたが、本件報酬は、日韓租税条約第6条(1)に規定する「産業上又は商業上の利得」に該当するところ、本件芸能人は請求人を代理人としているところから、同条約第4条(4)及び(5)により、請求人という独立の地位を有する代理人を通じて国内で役務提供をしている場合には国内に恒久的施設を有しないこととされるから、同条約第6条(1)により、本件報酬はわが国において免税となる旨主張する。しかしながら、本件報酬に係るわが国における課税権の有無は、本件報酬に係る別個の条項である日韓租税条約第12条(4)に規定する要件により判断するのであり、第6条(1)に規定する要件により判断すべきではないところ、第12条(4)によれば、わが国における恒久的施設の有無は要件とせず、役務提供が国内で行われ、その報酬の額が一定額を超えることを要件にわが国における課税権を認めていることから、請求人の主張は採用できない。
また、本件報酬は芸能人が芸能人として自らの人的役務を提供することにより取得する報酬であるから、上述のとおり第6条(1)は無関係であり、第4条(4)(b)(ii)に規定する「第12条(4)に規定する芸能人の役務」を提供する場合とは、芸能プロダクション等が芸能人の人的役務を他者に提供することにより取得する所得の場合のみの規定であるから、同条項は本件報酬のわが国における課税権の有無の判断には無関係である。
平成9年7月2日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- わが国において韓国芸能人に支払った人的役務の提供に対する報酬は、日韓租税条約上免税にならないとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(所得税法>源泉徴収)
- 役員に対し、使用人分の退職金を支給するに当たり、使用人兼務役員の期間中も自社の退職給与規定の対象となると誤解して支給した場合において、当該部分の支給は、根拠を有さないもので、支給されたものとみることはできないとして、源泉所得税の納税告知処分を当該部分につき取り消した事例
- 役職に変動がなくても労働条件等に重大な変動があり、単なる従前の勤務関係の延長とみることはできないとして、退職手当等としての性質を有する給与に該当すると認定した事例(平成24年5月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分・全部取消し・平成26年12月1日裁決)
- 請求人が負担した本件慰安旅行の参加従事員1人当たりの費用の額は、平成5年分192,003円、平成6年分449,918円及び平成7年分260,332円と、社会通念上一般的に行われている福利厚生行事としてはあまりにも多額であるから、当該従事員が受ける経済的利益は、給与所得として課税するのが相当とした事例
- 損金に算入した養老保険の保険料相当額が、保険金受取人である従業員に対する給与(経済的利益の共与)に当たるとした事例
- わが国において韓国芸能人に支払った人的役務の提供に対する報酬は、日韓租税条約上免税にならないとした事例
- 請求人が代表者に代わって送金した金員につき代表者に対してその返済を免除した事実は認められないとした事例
- 職人に対し支払った報酬は外注費ではなく給与に該当するとした事例
- 養老保険契約に加入し支払った保険料について、請求人は、所得税基本通達36−31の(3)に該当すると主張するが、当該保険契約は、被保険者が主任以上という基準であり、全従業員がその恩恵に浴する機会が与えられているとは認められず、給与に該当するとした事例
- 関係会社の名義による源泉所得税の納付は、請求人による納付としての法的効果を生じないとした事例
- マネキン報酬について、日額表乙欄、丙欄のいずれを適用するかは、正社員の勤務状況に比較して当該マネキンが継続して2月を超えて就労していたかどうかにより判定すべきであるとした事例
- 所得税法第212条《源泉徴収義務》第3項の「支払」の意義については、これを実質的に解し、現実に金銭を交付する行為のみならず、その支払債務が消滅すると認められる一切の行為を含むものと解するのが相当であるとして、形式的意味における清算人会の決議に基づく必要があるとする請求人の主張を排斥した事例
- 家族を外国に居住させ、自らは国内に住民票を置き、出入国を繰り返している請求人代表者を所得税法第2条第1項第3号の「居住者」に該当すると判断した事例
- 遠洋漁業を行う船舶に乗船させた外国人漁船員の人的役務の提供の対価は国内源泉所得に該当するから、当該対価の支払の際に源泉徴収する義務があるとした事例
- 販売業者の委託により商品の販売契約等の勧誘及び委託販売員の指導業務等を行うマネージャーは外交員に該当するとした事例
- 外国人出向者の日本における税金を立替払した場合に源泉徴収義務を負うとした事例
- すべての使用人に対して、雇用されている限り毎年誕生月に支給している誕生日祝金について、その支給形態等が、広く一般に社会的な慣習として行われているとは認められないとして所得税法第28条第1項に規定する給与等に当たるとした事例
- 法人の代表者が当該法人所有の資産を無償で専属的に利用したことは、経済的利益を享受していることに当たるから、源泉所得税の課税対象となるとした事例
- ストリップショウの出演者に対する出演料は所得税法204条第1項に規定する報酬又は料金に該当するとした事例
- ソフトウエアに係る著作権を侵害したとして外国法人に対し支払った金員は、所得税法第161条《国内源泉所得》第7号ロに規定する著作権の使用料に当たるとした事例
- 源泉徴収の対象となる匿名組合契約に基づく利益の額の計算上、契約内容の異なる別個の匿名組合契約に係る損失の額及び別途支払うこととされている管理費用の額を控除することはできないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。