上場株式が株式としての価値を失ったことによる損失は事業所得又は雑所得の必要経費に算入することができるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2012/09/25 [所得税法][必要経費][雑所得]《ポイント》 本事例は、いわゆる一般口座で保管していた上場株式が株式としての価値を失ったことによる損失の金額は、当該上場株式を含む株式の譲渡による所得が事業所得又は雑所得に該当する場合には、当該事業所得又は雑所得の計算上、必要経費に算入できるとしたものである。
《要旨》 原処分庁は、請求人の所有していた民事再生法の規定による再生計画に基づき平成21年中に無償で消滅した株式(本件株式)の取得金額は、譲渡所得の金額の計算上、取得費として控除できない旨主張する。
しかしながら、所得税法においては、株式が株式としての価値を失ったことにより損失が生じた場合、その株式が事業所得の基因となるものであるときは、所得税法第37条《必要経費》第1項の規定に基づき、売上原価の計算を通じて自動的にその株式の取得価額相当額がその損失の発生した年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入され、また、その株式が雑所得の基因となるものであるときは、所得税法第51条《資産損失の必要経費算入》第4項の規定に基づき雑所得の金額を限度として、その株式の取得価額相当額が資産損失としてその損失が発生した年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入され、その株式が譲渡所得の基因となるものであるときは、その損失は所得金額の計算上考慮されないところ、請求人の上場株式等の譲渡による所得は、事業所得又は雑所得と認められることから、本件株式が株式としての価値を失ったことによる損失の金額は、平成21年分の株式等の譲渡による事業所得又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入できることになる。
《参考条文》 所得税法第33条第2項第1号、第37条第1項、第51条第4項
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 上場株式が株式としての価値を失ったことによる損失は事業所得又は雑所得の必要経費に算入することができるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(所得税法>必要経費>雑所得)
- 区画形質を変更して土地を譲渡したことによる所得は、雑所得に当たるとして、土地取得のための借入金の利子の額を必要経費に算入した事例
- 雑所得の基因となった金融商品を外貨で取得するに当たり支出した金額のうち、通貨交換の際に適用された電信売相場と電信売買相場の仲値との差額に相当する部分の金額は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例
- 関係会社の資金繰りの用に供するため担保に提供した株式が回収不能となった場合に、当該回収不能相当額を、他の株式の譲渡に係る雑所得の収入金額から控除したりあるいは必要経費に算入したりすることはできないとした事例
- ライブチャットサービス業務を行う請求人が主張する各費用のうち、少なくともパソコン等の購入費及びインターネット接続料金については必要経費に算入するのが相当であるとした事例(平成19年分〜平成23年分の所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し・平26年5月22日裁決)
- 還付加算金に係る雑所得の金額の計算上、課税処分の取消訴訟に要した費用等は必要経費に該当しないとした事例
- 退職手当金の一部を一時金で受領せず従前の勤務先が営む年金制度の原資に振り替えて受給する年金は公的年金等に該当し、振り替えた原資部分の金額については、雑所得の金額の計算上控除できないとした事例
- 上場株式が株式としての価値を失ったことによる損失は事業所得又は雑所得の必要経費に算入することができるとした事例
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。