請求人の子が代表取締役を務める法人は、賃貸の目的物に係る管理業務を行っているから、同法人に対して支払った管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/06/07 [所得税法][必要経費][不動産所得]《ポイント》 この事例は、請求人の子が代表取締役を務める法人の業務を認定し、請求人が当該法人に対して支払った管理料相当額の必要経費算入及び課税仕入れを認めたものである。
《要旨》 原処分庁は、店舗用建物たる本件建物及びその敷地たる本件各土地を併せた本件各土地建物に係る管理全般についてN社が行っており、請求人の子が代表取締役を務める本件法人は、請求人ら及びN社に対する金銭の支払行為を行っているものの、本件建物に係る共有持分(本件建物持分)及び本件各土地の一部である本件土地の管理業務を行っているとはいえないため、本件法人に請求人が支払った管理費相当額(本件管理費)は請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できない旨主張する。
しかしながら、ある支出が不動産所得における必要経費に該当するためには、業務関連性がなければならないとともに、その必要性の判断においても、単に事業主の主観的判断のみによるものではなく、客観的に必要経費として認識できるものでなければならないと解されるところ、請求人の不動産所得の総収入金額に算入すべき金額は、賃借人をK社として本件建物を賃貸する旨の本件契約に係る賃料であることから、必要経費に算入すべき金額も本件契約に関して支出された費用に限られることとなる。そして、本件法人は、請求人らから本件建物持分及び本件土地の管理業務を受託し、本件契約の更新及び補修工事等に係る各種連絡を受けてK社及びN社と協議し、本件法人名議で本件契約に係る各種の支払を行うなどしてこれらに対処している事実が認められることから、本件建物持分及び本件土地に対する管理業務を行っているものと認められる。
そうすると、請求人から本件法人に対して支払われた本件管理費は、請求人のN社に対する本件建物持分の賃貸業務の遂行上必要な支出であると認められることから、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるものと認められる。
《参照条文等》 所得税法第37条第1項
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 請求人の子が代表取締役を務める法人は、賃貸の目的物に係る管理業務を行っているから、同法人に対して支払った管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(所得税法>必要経費>不動産所得)
- 不動産所得の金額の計算上、相続税の延納に係る利子税は、必要経費にならないとされた事例
- 賃借人のいる建物をその土地と共に取得した後、賃貸借契約の解除に伴い賃借人に支払った立退料は、土地の取得費に算入すべきであるとした事例
- 相続を原因とする所有権移転の登記に係る登録免許税は不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できないものとした事例
- 土地取得のための借入金の利子のうち業務の用に供していなかった期間の支払利子は不動産所得の必要経費ではないとした事例
- 請求人が管理業務を委託した同族会社は、請求人が必要経費に算入すべきと主張する管理費の額に見合う管理業務を行っていたと認められることから、その全額を必要経費に算入すべきであるとした事例
- 土地を貸付けし得る状態にあっても、それだけの理由でその土地に係る費用が必要経費とされるものではないとした事例
- アパートの貸付けによる不動産所得の金額の計算上、青色事業専従者給与について必要経費に算入することができないとした事例
- 保証債務の履行に伴う求償権の行使不能額は事業遂行上生じたものではないとした事例
- 不動産所得について青色事業専従者給与の必要経費算入を容認した事例
- 税法の改正により減価償却資産の耐用年数が短縮された場合の減価償却費の処理方法については、明文の規定がなく理論により決するほかないとの請求人の主張が排斥した事例
- 不動産所得の金額の計算上、生計を一にする親族に支払った土地賃借料は必要経費に算入されないとした事例
- 不動産の貸付先に対する貸付金の貸倒れによる損失は、その不動産貸付業の遂行上生じたものではないから、必要経費とすることはできないとした事例
- 鉄筋コンクリート造り店舗共同住宅の外壁等の補修工事に要した金員は修繕費に当たるとした事例
- 不動産貸付業務遂行上、直接関連のないゴルフ接待費用は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例
- 請求人は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した一部の経費について、不動産賃貸業の遂行上直接必要であった部分を明らかにしていないことから、当該経費を必要経費に算入することはできないとした事例
- 平成13年3月の相続により取得した建物の減価償却費の計算及びその方法は定額法によるとした事例
- 平成14年1月4日の相続により取得した建物の減価償却費の計算及びその方法は定額法によるとした事例
- 業務用の固定資産の取得に伴い納付することとなる租税公課等は、当該固定資産の取得価額に算入されず、業務上の必要経費に算入されるとした事例
- 本件土地等は、貸付けの用に供されることが客観的に明らかとは認められないから、不動産所得を生ずべき業務の用に供されている資産には該当せず、本件土地等の取得に要した借入金利子等の額は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例
- 同族会社に対する本件委託業務は、不動産賃貸業の遂行上必要な業務とは認められず、かつ、同族会社が当該業務を履行したとする客観的な資料も認められないことから、請求人が本件契約に基づき不動産管理料を支払ったとしても、必要経費には算入されないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。