使用人兼務役員として勤務する会社の適格退職年金制度の廃止に伴い、年金信託契約の受託者から受領した一時金は、所得税法第31条に規定する退職手当等とみなす一時金ではなく一時所得に該当するとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2008/03/11 [所得税法][所得の種類][退職所得] 60歳定年後も引き続き、使用人兼務役員として勤務していた請求人が、勤務先の適格退職年金制度が確定拠出年金(企業型年金)制度に移行する際、新制度に移換されなかった請求人に対して支給された本件一時金は、定年に達した後引き続き勤務する使用人に対し、その定年に達する前の勤務期間に係る退職手当等として支払われた給与であるから、所得税基本通達31-1の(3)が引用する同通達30-2の(4)に掲げる事由に該当し、所得税法第31条第3号に規定するみなし退職所得に該当すると主張する。
しかしながら、所得税法第31条第3号は、みなし退職所得となる企業年金等から支給される一時金を「加入者の退職により支払われるものその他これに類する一時金として政令に定めるもの」に限定している。また、所得税基本通達31-1の(3)は、適格退職年金契約に基づいて支払われる退職一時金等のうち、同通達30-2の(2)及び(4)から(6)までに掲げる退職に準じた事実等が生じたことに伴い加入員としての資格を喪失したことを給付事由として支払われる一時金も、みなし退職所得となる旨定めている。これを本件についてみると、請求人は、本件一時金の支給後も本件労働契約に基づき使用人兼務役員として本件会社に勤務しており、退職の事実はなく、本件一時金は所得税法第31条第3号には該当しない。また、本件一時金は本件年金信託契約が解除されたことにより、本件旧年金規程第24条に基づき信託財産の残余金が分配されたものであって、加入者としての資格を喪失したことを給付事由として支払われたものではないから、所得税基本通達31-1の(3)にも該当しない。
平成20年3月11日裁決
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