取締役が行った取引により当該取締役が取得した金員については、当該取締役の業務上の権限によって判断すると、役員賞与と認めることはできないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
1994/12/21 [法人税法][所得金額の計算][損金の額の範囲及び計算][役員報酬、賞与及び退職給与][役員賞与]原処分庁は、請求人の前代表取締役が代表取締役を退任後(退任後は単なる日常業務に従事する取締役)に行った個人名義の取引について、同人が請求人のただ一人の常勤取締役として、日常の業務をゆだねられ、請求人の実質的な代表取締役として、その業務を行っていたと認定し、同人が取得した金員は、請求人が隠れた利益処分として同人に対し賞与を支給したものと経済的実質において変わりがなく、当該取得した金員は、請求人から同人に対し賞与として支給されたものと認められるとして更正処分した。
[1]当該前代表取締役は、代表取締役退任後は、請求人の経理及び資金管理には関与せず、会社の運営は後任の代表取締役が行っていたこと、[2]当該前代表取締役は、請求人の給与の支給に関する権限を有していないこと及び[3]同人は、新代表取締役に隠れて取引をしたものと認められることから、当該前代表取締役が、代表取締役を退任後も請求人の実質的な代表取締役としての業務を行っていたとは認められず、請求人の給与の支給に関する権限を持たない同人の行為をもって、同人が取得した金員について、請求人が同人に対し賞与として支給したものと認めることはできない。
また、上記金員に関し、請求人と当該前代表取締役との間には、金銭消費貸借契約が締結されているとは認められないから、上記金員を同人に対する貸付金であると認定することはできない。
しかし、上記取引は、当該前代表取締役が役員の業務として行ったものであるから、請求人に帰属すると認められ、当該前代表取締役が新代表取締役に隠れて上記取引に係る金員を取得していることからすれば、請求人は、当該前代表取締役に対し同人が取得した金員に相当する債権を有しているというべきである。
平成6年12月21日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
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