比較法人の平均功績倍率が、裁判事例や裁決事例による功績倍率よりも低いことのみをもって相当性を欠くものではないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2007/11/15 [法人税法][所得金額の計算][損金の額の範囲及び計算][役員報酬、賞与及び退職給与][役員賞与] 請求人は、法人税法第36条及び法人税法施行令第72条に規定する適正役員退職給与の額の具体的な判断基準としていわゆる功績倍率法を用いることについて争いはないが、原処分庁が類似比較法人として選定した会社は不明であり、その数も少ないこと、代表取締役と取締役の功績倍率が同じというのは不自然であり、社会通念上も余りに低率であること、Fは創業以来の代表取締役であること、Hは創業者の妻であり創業以来の取締役であること、裁判事例や裁決事例でも功績倍率が3.3〜3.6倍というのは定着していることなどからすると、Fの功績倍率を3.6、Hの功績倍率を3.3とするのが相当である旨主張する。
原処分庁は、功績倍率を求めるために、請求人の類似比較法人として4社を選定しているところ、その抽出基準は請求人の事業内容や事業規模等を反映させたものであって合理的なものと認められ、実際に比較法人を抽出するに当たって、し意的に抽出した等の事情は認められない。
ただし、比較法人のうち、a法人については、資金繰りのために役員退職給与規定に定められた功績倍率より大幅に低率の功績倍率に基づいて算定した退職給与を支給したとの特殊な事情があり、実際に支給された金額も他の3社に比べて大幅に低いものであることに照らすと、比較法人からa法人を除外した3社を比較法人として、功績倍率を算定するのが相当である。そうすると、平均功績倍率は1.9となる。
確かに、平均功績倍率を算出するに当たっては、比較法人の数が多いことは望ましいが、その数が少ないことのみをもって、算出された平均功績倍率が相当性を欠くということはできず、上記の事情によれば、比較法人を3社として平均功績倍率を算出したことに合理性がないとはいえない。
また、功績倍率を定めるに当たっては、代表取締役か取締役か、また、創業以来の役員であるかどうかなどの名目だけではなく、会社への実際の貢献度等の実質も考慮されるべきであるところ、当審判所の調査によっても、上記の平均功績倍率を本件に当てはめることが相当性を欠くと認められるほどに、F及びHの請求人への貢献度が高かったことを裏付ける事情は認められない。
さらに、本件に関する具体的事情を考慮せず、裁判事例や裁決事例と異なるというだけで、上記の平均功績倍率が社会通念上不相当に低率であるということもできない。
平成19年11月15日裁決
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