青色申告(法人税:推計課税の禁止)で節税
推計課税の禁止を活用して節税する
青色申告法人のメリットの1つに、推計課税の禁止があげられます。(法人税法第百三十一条)推計課税とは、証憑や帳簿書類等によらずに、一定基準により推計で課税処分することです。税務署は、納税者の帳簿を調査することなく、いきなり更正することができるのです。極端なことを言えば、担当する税務署員の考え方次第で大きく変わる可能性があります。
白色申告に対しては、下記のいずれかを基準に推計課税できる旨が明記されています。(法人税法第百三十一条)
- 財産債務の増減の状況
- 収入支出の状況
- 生産量、販売量その他の取扱量
- 従業員数
- その他事業の規模
「従業員数」や「その他事業の規模」とあるように、実額に基づく必要がないので、例えば、同業他社の平均値(経費率等)を基準に課税することが可能です。この場合、証憑や帳簿書類等が作成保存されていなければ、異議申立てや審査請求をしてもまず勝てませんし、仮に証憑等が作成保存されていたとしても、課税処分を取り消すことは非常に難しいと思われます。
推計課税のメリットを強いて挙げるとすれば、必要経費をほとんど計上できない事業の場合、有利になる可能性があります。同業他社の平均的な経費率で推計課税してもらえた場合に限りますが…
青色申告法人は、上記のような恣意的な推計課税を避けることが可能ですが、注意したいのは青色申告の承認の取消です。税務署は、悪質(仮装隠蔽行為)だと判断した場合など、青色申告の承認の取消処分をした上で、推計課税をすることができるのです。
- 青色申告(法人税)で節税
- 青色申告(法人税)で節税する。青色申告の義務や白色申告との違い(メリット)について。
- 青色申告(所得税:推計課税の禁止)で節税
- 青色申告(所得税:推計課税の禁止)で節税する。恣意的な推計課税を避けることができますが、青色申告の承認の取消しに注意を払う必要があります。
青色申告の承認の取消に気を付ける
税務署長は青色申告の承認を取り消すことが可能です。なお、事業年度を遡ることも可能なので、その場合、たとえ青色申告していたとしても白色申告扱いされます。法人税法第百二十七条によると、下記を理由に青色申告の承認を取り消すことが可能です。
- 帳簿書類の備付け、記録又は保存が財務省令に従っていない場合。
- 帳簿書類に関する税務署長の指示に従わなかった場合。
- 提出期限までに申告書を提出しなかった場合。
- 帳簿書類を隠蔽仮装し、その真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合。
上記1.の保存は、欠損金の繰越控除の繰越期間と同等です。帳簿書類を作成するだけでなく、長期間に渡って帳簿書類を保存する必要があります。
また、上記3.にも注意です。申告書の提出が1日遅れただけで、税務署は青色申告の承認を取り消すことが可能なのです。
現実的には上記1.から3.の要件のいずれかに合致したからといって、必ずしも青色申告の承認が取り消される訳ではありません。
ただし、上記4.に該当する場合はアウトです。税務署に悪質(仮装隠蔽行為)と判断された場合は、ほぼ確実に青色申告の承認が取り消されます。仮装隠蔽を疑われるような行為は厳禁です。
関連する裁決事例(推計課税の禁止)
- 協同組合が分配した剰余金について事業分量配当ではなく出資配当であるとした事例
- 役員報酬を返還したことを理由として更正の請求ができるか否かが争われた事例
- 年の中途で死亡した被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち、請求人が承継する納付すべき税額は、遺留分減殺請求により修正された相続分によりあん分して計算した額であるとした事例
- 過大な不動産管理料につき所得税法第157条を適用して否認した更正は適法であるとした事例
関連する裁決事例(更正の理由付記)
- 建物をその敷地の借地権とともに取得した後、短期間のうちに建物を取り壊した場合、当該借地権につきいわゆる無償返還の届出がされていても、当該建物の取得代価及び取壊し費用は、借地権の取得価格を構成するとした事例
- 投資事業有限責任組合の法人組合員が純額方式により組合損益を計上している場合において、組合損益の計算上費用とされた株式の評価損は法人組合員においては損金の額に算入することはできないとした事例
- 各経費が収益事業と収益事業以外の事業とに共通する費用と認められ、当該各経費の収益事業への配賦については、個々の費用の性質及び内容などに応じた合理的な基準により配賦するのが相当であるとした事例(平成23年10月1日から平成27年9月30日までの各事業年度の法人税の更正をすべき理由がない旨の各通知処分及び無申告加算税の各賦課決定処分、平成24年10月1日から平成26年9月30日までの各課税事業年度の復興特別法人税の更正をすべき理由がない旨の各通知処分、平成26年10月1日から平成27年9月30日までの課税事業年度の地方法人税の更正をすべき理由がない旨の通知処分・一部取消し・平成31年2月15日裁決)
- 所得税の確定申告において、源泉徴収義務者が過大に徴収した源泉所得税の額を算出所得税額から控除することはできないとした事例
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