役員退職金制度の廃止に伴い親会社から発行される新株予約権の課税関係|源泉所得税
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
A社及びその子会社3社では、本年6月開催の株主総会において、役員に対する退職慰労金制度を廃止し、それぞれの固定報酬とは別枠で翌年の株主総会までの1年分の職務執行の対価としてA社の新株予約権を付与することが決議されました。
具体的には、A社、子会社及び子会社の役員の三者間による報酬債務の債務引受契約により、A社が子会社の役員に対する報酬債務について重畳的債務引受を行い(A社は、その報酬債務について対外的には連帯債務者となりますが、子会社との内部関係においてA社の負担部分は0円とし、A社がその報酬債務を負担することにより取得した求償権に基づき、その報酬債務相当額が子会社からA社に弁済されます。)、役員はその報酬債権との相殺によりA社から新株予約権の割当てを受けることとなります。
なお、この新株予約権については、権利行使価額を1円とし、譲渡制限が付されるほか、役員を退任した日の翌日以降10日間以内に一括して行使することが条件となっています。
子会社の役員が、この新株予約権の権利行使をしたときの課税関係はどのようになりますか。
【回答要旨】
権利行使益(権利行使時における株価から権利行使価額1円を控除した金額)は、退職所得として課税対象となります。また、その退職所得については、子会社が源泉徴収義務者として源泉徴収をする必要があります。
- (1) 所得区分
照会の新株予約権は、親会社であるA社から割り当てられるものですが、子会社の役員の地位に基づき、その役務提供の対価(報酬)として与えられ、その権利行使益については、その職務遂行に対する対価としての性質を有しますので、給与等に該当します。
また、照会の制度は、従前の退職慰労金制度の代替として設けられ、翌年の株主総会までの期間に係る役員の職務執行の対価として割り当てられるものであるとともに、その権利行使は役員を退任した日後10日間以内に限り一括して行うことが条件とされています。
したがって、照会の新株予約権に係る権利行使益は、役員が退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与等と認められますので、退職所得に該当します(所得税法第30条第1項、所得税基本通達30-1)。 - (2) 源泉徴収義務
居住者に対し国内において退職手当等の支払をする者は、その支払の際に所得税を徴収しこれを納付しなければなりません(所得税法第199条)。
照会の場合、子会社は、単に本件新株予約権の発行に係る費用負担をするだけでなく、役員に対してその退任後にストックオプションに係る経済的利益を与えることを目的として、新株予約権に関する報酬を株主総会で決議するとともに、債務引受契約等を通じ、A社から新株予約権が発行され、その権利行使によって株式が交付されることとなっています。これらのことからすると、新株予約権に係る経済的利益(権利行使益)については、子会社からその役員に与えられた給付に当たり、A社は子会社の指図に基づき株式の交付を行っているにすぎず、子会社が権利行使益(退職所得)について、その支払者として源泉徴収義務を負うことになります。
【関係法令通達】
所得税法第30条、第199条、所得税基本通達30-1
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/gensen/04/10.htm
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