不納付加算税賦課決定処分取消請求事件|平成18(行ウ)48
[所得税法][源泉徴収][国税通則法][不納付加算税]に関する行政事件裁判例(裁判所)。
行政事件裁判例(裁判所)
平成20年3月14日 [所得税法][源泉徴収][国税通則法][不納付加算税]判示事項
1 管財人報酬は,所得税法204条1項2号にいう弁護士の業務に関する報酬又は料金に当たる2 破産者の破産管財人が,当該破産管財人個人に対してした破産管財人の報酬の支払及び当該破産者の元従業員らに対してした退職金等の配当と源泉徴収義務
3 破産者の破産管財人が当該破産者の元従業員らに対して退職金及び解雇予告手当を配当したことについて,当該破産者に対してされた源泉徴収による所得税に係る不納付加算税賦課決定処分が,国税通則法67条1項ただし書にいう「正当な理由」があるとして違法とされた事例
4 破産者の破産管財人が当該破産管財人個人に対して破産管財人の報酬を支払ったことについて,当該破産者に対してされた源泉徴収による所得税に係る不納付加算税賦課決定処分が,国税通則法67条1項ただし書にいう「正当な理由」があるとはいえないとして,適法とされた事例
裁判要旨
1 所得税法204条1項2号の趣旨に加え,その文言に照らしても,同号にいう弁護士の業務を弁護士法3条1項に規定する訴訟事件等に関する行為その他一般の法律事務を行うことに限定して解すべき理由はなく,弁護士法が弁護士の使命及び職責にかんがみ,弁護士が破産管財人の地位に就きその業務を行うことを予定していることをも併せかんがみれば,弁護士が破産管財人として行う業務は,所得税法204条2号にいう弁護士の業務に該当するものであり,破産管財人の受ける報酬は,同号にいう弁護士の業務に関する報酬又は料金に当たる。2 破産者は,財団債権に対する弁済及び破産債権に対する配当について,所得税法の規定に従い当該弁済及び配当に係る所得税を徴収し納付する義務を負い,その徴収及び納付は破産管財人の権限に属するというべきであるところ,?破産管財人の報酬は,旧破産法(大正11年法律第71号,平成16年法律第75号により廃止)47条3号所定の財団債権に該当するものとして破産財団から弁済を受けるものとされているから,当該破産者は,当該報酬について,所得税法204条1項2号に掲げる報酬の支払をする者に当たり,?また,配当した退職金及び解雇予告手当は,破産債権に該当するから,当該破産者は,当該退職金等について,所得税法199条にいう退職手当等の支払をする者に当たり,それぞれ源泉所得税の徴収及び納付義務を負うのであって,当該破産者の破産管財人は,破産管財人としての権限に基づき,当該報酬及び当該退職金等にかかる所得税につき,源泉所得税を徴収し,これを納付する義務を負う。
3 破産者の破産管財人が当該破産者の元従業員らに対して退職金及び解雇予告手当を配当したことについて,当該破産者に対してされた源泉徴収による所得税に係る不納付加算税賦課決定処分につき,破産管財人は,前記退職金等に係る所得税について源泉所得税を徴収し,納付する義務を負うところ,次の(1)及び(2)のような事情の下においては,前記破産管財人において,破産債権の配当について破産管財人に源泉徴収義務はないとして,これに係る源泉所得税の徴収及び納付をしなかったとしても無理からぬ面があり,それをもって当該破産管財人の主観的な事情に基づく法律解釈の誤りにすぎないということはできず,前記破産管財人が前記退職金等に係る源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについて,真に同人の責めに帰することのできない客観的な事情があり,当初から適正に徴収及び納付をした納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,源泉所得税の不納付による納税義務違反の発生を防止し,適正な徴収納付の実現を図り,もって納税の実を挙げるという不納付加算税の趣旨に照らしてもなお前記破産者に不納付加算税を賦課することが不当又は酷になるというのが相当であるから,国税通則法67条1項ただし書にいう「正当な理由」があるとして,前記処分を違法とした事例
(1)遅くとも平成5年以降,破産債権の配当について破産管財人は源泉徴収義務を負わないという実務慣行が形成され,破産裁判所も破産管財人もその旨の共通認識の下に破産管財業務を遂行ないし監督し,課税庁においてもこれに対する態度を明確にしないままこのような実務慣行をいわば黙認してきたこと。
(2)個別的執行手続等における配当については源泉徴収義務がないと解する余地があることなどからして,破産手続においても破産債権の配当について破産管財人には源泉徴収義務はないとする見解にも相応の論拠があるといい得ること。
4 破産者の破産管財人が当該破産管財人個人に対して破産管財人の報酬を支払ったことについて,当該破産者に対してされた源泉徴収による所得税に係る不納付加算税賦課決定処分につき,破産管財人は,前記報酬に係る所得税について源泉所得税を徴収し,納付する義務を負うところ,次の(1)及び(2)のような事情の下においては,前記破産管財人が前記報酬に係る源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについて,真に同人の責めに帰することのできない客観的な事情があり,当初から適正に徴収及び納付をした納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,源泉所得税の不納付による納税義務違反の発生を防止し,適正な徴収納付の実現を図り,もって納税の実を挙げるという不納付加算税の趣旨に照らしてもなお前記破産者に不納付加算税を賦課することが不当又は酷になるとまでいうことはできないから,国税通則法67条1項ただし書にいう「正当な理由」があるということはできないとして,前記処分を適法とした事例
(1)破産管財人の報酬の支払に係る破産管財人の源泉徴収義務がないとの見解が述べられた論稿等は見当たらず,主な地方裁判所の破産事件担当部においてもこれを否定する取扱いとする旨公表したことはなく,むしろ,前記いずれの担当部においても管財業務のために従業員の雇用を継続し,又は新たに従業員を雇用したときの給与,退職金等,管財業務のために補助を受けた税理士に対する報酬等については,源泉所得税の徴収及び納付をする必要がある旨明らかにしていたこと。
(2)弁護士たる破産管財人に対する報酬が所得税法204条1項2号の弁護士の業務に関する報酬又は料金に当たらないとする見解に相応の論拠があるというのは困難である上,財団債権に対する弁済については,特に手続上の特殊性があるといった事情もないから,前記破産管財人において,破産管財人の報酬の支払について破産管財人に源泉徴収義務はないとして,これに係る源泉所得税の徴収及び納付をしないのは,前記破産管財人の主観的な事情に基づく法律解釈の誤りにすぎないこと。
- 裁判所名
- 大阪地方裁判所
- 事件番号
- 平成18(行ウ)48
- 事件名
- 不納付加算税賦課決定処分取消請求事件
- 裁判年月日
- 平成20年3月14日
- 分野
- 行政
- 全文
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- 裁判所:行政事件裁判例
- 不納付加算税賦課決定処分取消請求事件|平成18(行ウ)48
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