民法上の相続人が不存在の場合の準確定申告の手続|所得税
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
居住者が年の中途で死亡し、民法上の相続人が不存在である場合、その確定申告手続はどのようにすればよいのでしょうか。
【回答要旨】
1 所得税法第120条に該当する申告書を提出しなければならない場合
(1) 包括受遺者がいる場合は、包括受遺者が遺贈のあったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに準確定申告書を提出しなければなりません。
(2) 包括受遺者がいない場合は、相続財産法人の管理人が確定した日の翌日から4か月を経過した日の前日までに相続財産法人が準確定申告書を提出しなければなりません。
2 所得税法第122条に該当する申告書を提出できる場合
(1) 包括受遺者がいる場合は、包括受遺者が準確定申告を提出できます。
(2) 包括受遺者がいない場合は、相続財産法人が準確定申告書を提出できます。
3 所得税法第123条に該当する申告書を提出できる場合
(1) 包括受遺者がいる場合は、包括受遺者が遺贈のあったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに準確定申告書を提出できます。
(2) 包括受遺者がいない場合は、相続財産法人の管理人が確定した日の翌日から4か月を経過した日の前日までに相続財産法人が準確定申告書を提出できます。
居住者が、年の中途で死亡した場合において、その者の死亡した年分の所得税について、所得税法第120条の規定による申告書を提出しなければならないときは、その相続人が相続の開始のあったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに申告書を提出しなければならないこととされています(所得税法第125条第1項)。
ところで、所得税法では、「相続人」には包括受遺者を含む(所得税法第2条第2項)ものとされていることから、民法上の相続人はいないが包括受遺者がいる場合は、所得税法第125条の規定がそのまま適用されることとなります。
しかし、民法上の相続人も包括受遺者もいない場合(相続人不存在)、相続財産は相続財産法人になるとされています(民法第951条)。この相続財産法人の申告手続については、所得税法上何らの規定もされていないことから、相続財産法人に所得税法第125条の規定が適用できるかどうかが問題となります。
この点については、相続財産法人は、国税通則法第5条の規定に基づき納税義務を承継することとされていますから、所得税法第125条の規定を類推解釈して相続財産法人に対して適用することが合理的であると考えられます。
次に問題となるのが、相続財産法人に同条の規定が適用された場合の申告期限がいつになるのかという点です。
相続財産法人は、相続の開始があった時に成立することから、同条に規定する「相続のあったことを知った日」は、相続財産法人が成立した日と考えることもできますが、相続財産法人が確定申告書の提出等を行うためには管理人が選定されなければ不可能です。
したがって、相続財産法人が準確定申告書を提出する場合の申告期限は、管理人が確定した日(裁判所から管理人に通知された日)の翌日から4か月を経過した日の前日とすることが相当です。
【関係法令通達】
所得税法第2条第2項、第125条、国税通則法第5条、民法第951条
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/shotoku/07/15.htm
関連する質疑応答事例(所得税)
- 防ダニ寝具の購入費用
- 親族に支払う療養上の世話の費用
- 医療費助成金を返還した場合
- 調理室、浴室などの床又は壁の模様替え
- 外貨建債券が償還された場合の償還差益及び為替差損益の取扱い
- 同一年内に転居・再居住した場合
- トタンぶきの屋根を瓦ぶきにした場合
- 引き続き勤務する従業員に対して支払われる確定給付企業年金の制度終了に伴う一時金
- 法人成りにより使用人を引き継いだ新設法人に支払う退職金相当額
- 被買収会社の従業員に付与されたストックオプションを買収会社が買い取る場合の課税関係
- お産のために実家へ帰る旅費
- 父親の控除対象配偶者である母親の医療費を子供が負担した場合
- 姉の子供の医療費を支払った場合
- 外貨建取引による株式の譲渡による所得
- 傷害特約付生命保険契約の特約の更新
- 再居住を複数回行った場合
- 適格退職年金制度廃止後に継続している退職年金契約
- 数年間にわたり支払を受ける保険金
- 生命保険金の受取人が2人いる場合の一時所得の金額の計算
- 寝たきりの者のおむつ代
項目別に質疑応答事例を調べる
当コンテンツは、国税庁ホームページ利用規約に基づき、国税庁:質疑応答事例のデータを利用して作成されています。