重婚の禁止を理由として婚姻が取り消された場合の寡婦控除の適否|所得税
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
女性Aは、重婚の禁止を理由として、男性Bとの婚姻を取り消されましたが、取消し後においてもBとの間の子を扶養しています。
この場合、女性Aは、寡婦控除の適用を受けることができるのでしょうか。
なお、女性Aは男性B以外との結婚歴はありません。
【回答要旨】
女性Aは、所得税法上の「寡婦」に該当せず、寡婦控除の適用を受けることはできません。
所得税法上の「寡婦」とは、夫と死別し、若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者で一定のもののうち、扶養親族その他その者と生計を一にする親族で一定のものを有するもの、及び夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者で一定のもののうち、合計所得金額が500万円以下であるものをいいます(所得税法第2条第1項第30号)。
ところで、民法上、離婚とは、生存中に婚姻を解消することをいい、協議上の離婚と裁判上の離婚とがあります(民法第763条〜第771条)。また、婚姻の取消しとは、民法第731条から第736条の規定に違反した婚姻について、婚姻取消しの判決又は審判により、その婚姻の効力を否定することいい、その取消しの効力は、将来に向かってのみ生ずることとされています(民法第743条〜第749条)。このように、離婚と婚姻の取消しは、将来に向かってその婚姻の効果を消滅させる点で類似していますが、離婚は、適法な婚姻の解消であるのに対して、婚姻の取消しは、その成立自体に瑕疵又は違法性のある婚姻の解消である点で、両者は異なります。
所得税法では「離婚」という文言について定義規定を置いていませんので、「離婚」の解釈に当たっては、一般法である民法と同意義に解するのが相当です。また、所得税法における「配偶者」は、民法の規定による配偶者をいうこととされ、内縁関係にある者はこれに該当しないものとされています(所得税基本通達2−46)。これらのことを考慮すると、上記のとおり、「離婚」と「婚姻の取消し」は、民法上明らかに異なった概念で用いられていることから、所得税法において「離婚」に「婚姻の取消し」を含めて解釈することはできないこととなります。
したがって、女性Aは、男性Bと離婚したのではなく、婚姻の取消しがされていますので、寡婦の要件とされる「夫と離婚した後婚姻をしていない者」には当たらず、寡婦控除の適用を受けることはできないこととなります。
【関係法令通達】
所得税法第2条第1項第30号、所得税基本通達2−46、民法第743条〜第749条、第763条〜第771条
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/shotoku/05/73.htm
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