非居住者である役員が税制適格ストックオプションを行使して取得した株式を譲渡した場合|所得税
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
内国法人の役員Aは、国内本店に勤務していましたが、2年前からフランス支店に勤務しています。
ところで、今般、Aは、本店勤務中に付与された税制適格ストックオプションを適格に行使し、本年、その行使により取得した株式を譲渡しましたが、日本における課税関係はどのようになりますか。
なお、Aは、現在も引き続きフランスに居住しており、国内に恒久的施設を有していません。
【回答要旨】
株式の譲渡益のうち権利行使益に相当する金額が、株式等の譲渡に係る国内源泉所得として、当該株式を譲渡した日の属する本年分において、15%の税率による申告分離課税の対象とされます(注)。
日仏租税条約第16条《役員報酬》は、「一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課すことができる。」と規定しています。
ここでいう「その他これに類する支払金」には、一般に、ストックオプションによる現物給付も含まれ、ストックオプションの付与から権利行使(発行法人による消却又は取得を含みます。)までの利益(以下「権利行使益」といいます。)がいずれの時点で課税されるかにかかわらず、その権利行使益に本条が適用されると解されます。一方、株主の資格で取得する株式譲渡収益(権利行使後に生じた株式の価値に対応する部分)については、譲渡所得条項が適用されます。
したがって、照会の場合は、株式の譲渡収益のうち権利行使益に相当する金額については、日仏租税条約第16条が適用され、我が国で課税されることとなり、権利行使後に生じた株式譲渡収益については、同条約第13条《譲渡所得》が適用され、我が国では課税されないこととなります。
なお、課税は国内法の規定に基づいて行われますので、国内に恒久的施設を有しない非居住者の株式等の譲渡に係る国内源泉所得として、株式を譲渡した日の属する本年分において、15%の税率による申告分離課税の対象とされます(租税特別措置法第29条の2第8項、第37条の12第1項、租税特別措置法施行令第19条の3第14項)(注)。
(注) 確定申告の際には、所得税と併せて基準所得税額(所得税額から、所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の金額)に2.1%を掛けて計算した復興特別所得税を申告・納付することになります。
【関係法令通達】
租税特別措置法第29条の2、第37条の12第1項、租税特別措置法施行令第19条の3第14項、日仏租税条約第13条、第16条
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/shotoku/02/36.htm
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