所得税納税告知処分取消等請求,訴えの追加的併合控訴事件(原審・東京地方裁判所平成21年(行ウ)第121号等)|平成23(行コ)117
[所得税法][譲渡所得][源泉徴収]に関する行政事件裁判例(裁判所)。
行政事件裁判例(裁判所)
平成23年8月3日 [所得税法][譲渡所得][源泉徴収]判示事項
所得税法(平成16年法律第14号による改正前)2条1項5号所定の「非居住者」に当たる者に対して支払われた不動産の譲渡対価が,所得税法(平成17年法律第21号による改正前)161条1号の2所定の国内源泉所得に当たり,所得税法(平成16年法律第14号による改正前)212条1項により源泉徴収の対象になるとして,前記譲渡対価の支払をした者に対してされた所得税の納税告知処分が,適法とされた事例裁判要旨
所得税法(平成16年法律第14号による改正前)2条1項5号所定の「非居住者」に当たる者に対して支払われた不動産の譲渡対価が,所得税法(平成17年法律第21号による改正前)161条1号の2所定の国内源泉所得に当たり,所得税法(平成16年法律第14号による改正前)212条1項により源泉徴収の対象になるとして,前記譲渡対価の支払をした者に対してされた所得税の納税告知処分につき,前記源泉徴収に関する制度は,国内にある不動産を譲渡した非居住者等が,申告期限前に譲渡代金を国外に持ち出し,無申告のまま出国する事例が増え,申告期限前に保全措置を講ずる手段がなく,他方,申告期限後の決定処分をしても,実際に税金を徴収することは非常に難しい状況がある中で,こうした事態を放置することは税負担の公平を欠き,納税思想にも悪影響を及ぼしかねないことから,これに対しても適正な課税を確保できるようにするために導入されたものであることからすれば,その立法目的は正当なものである上,前記源泉徴収制度によれば,①国は,受給者である非居住者等が所得税を申告,納付しないことによる徴収不能のおそれを回避して税収を確保し,徴税手続を簡便にしてその費用と労力とを節約し得ること,②受給者(担税者)の側においても,申告,納付等に関する煩雑な事務から免かれることができること,③支払者(徴収義務者)にしても,通常,不動産の譲渡に関する交渉,契約締結及び契約の履行を通じて受給者の国内外における住所等を容易に把握し得る特に密接な関係にあって,徴税の対象となる譲渡対価を受給者に支払う立場にある点で,譲渡対価に対する徴税上,特別の便宜を有し,能率を挙げ得る地位にあること,④その徴税方法も,支払者が譲渡対価の支払をなす際に所得税を天引きし,これを国に納付すればよいというものであり,これ自体に格別の不利益が含まれているということはできないこと,⑤税率も,個人の土地等の長期譲渡所得については20%の税率等の分離課税が行われていることにかんがみ,グロスの収入を課税標準とする前記源泉徴収においてはその半分程度が適当であるとして10%とされていること,⑥支払者が源泉徴収をしていなかった場合において,税務署長から納税告知により徴収されたときは,所得税法222条により受給者に対する求償等の権利も認められていることからすると,前記源泉徴収制度は,非居住者等が不動産を売却する場合における所得税の徴収方法として能率的,合理的であって,支払者においても格別の負担を強いるものでもなく,合理性があり,前記立法目的達成のための手段として必要性,合理性に欠けることが明らかであるということはできず,立法府の政策的,技術的な裁量の範囲を逸脱するということはできないから,憲法29条1項及び13条に反するものということはできず,また,この制度のために,支払者(徴収義務者)において,所定の負担を負うものであるとしても,その負担は公共のために私有財産を用いる場合には当たらず,憲法29条3項の補償を要するものではないから,前記源泉徴収制度は同条項に反するものともいえないとして,前記所得税の納税告知処分を適法とした事例- 裁判所名
- 東京高等裁判所
- 事件番号
- 平成23(行コ)117
- 事件名
- 所得税納税告知処分取消等請求,訴えの追加的併合控訴事件(原審・東京地方裁判所平成21年(行ウ)第121号等)
- 裁判年月日
- 平成23年8月3日
- 分野
- 行政
- 全文
- 全文(PDF)
- 裁判所:行政事件裁判例
- 所得税納税告知処分取消等請求,訴えの追加的併合控訴事件(原審・東京地方裁判所平成21年(行ウ)第121号等)|平成23(行コ)117
関連するカテゴリー
関連する裁決事例(所得税法>譲渡所得>源泉徴収)
- 役職に変動がなくても労働条件等に重大な変動があり、単なる従前の勤務関係の延長とみることはできないとして、退職手当等としての性質を有する給与に該当すると認定した事例(平成24年5月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分・全部取消し・平成26年12月1日裁決)
- 請求人が実施した社員旅行は、社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事として行われる旅行とは認められないとした事例
- 弁護士である破産管財人に支払われた破産管財人報酬は、所得税法第204条第1項第二号に規定する弁護士の業務に関する報酬に該当し、破産者の源泉徴収義務及び納付義務に関する手続は破産管財人が負うものとした事例
- 海外出向者の帰国後に、当該海外出向者の国外勤務中の給与に係る外国所得税の額を請求人が負担したことについて、居住者に対する経済的利益の供与に当たるとした事例
- 衣料品の輸入販売業を営む請求人が海外の取引先に支払った金員は、所得税法第161条第7号イに規定する工業所有権等の使用料に該当し、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分は適法であるとした事例
- 外国人出向者の日本における税金を立替払した場合に源泉徴収義務を負うとした事例
- ストリップショウの出演者に対する出演料は所得税法204条第1項に規定する報酬又は料金に該当するとした事例
- 簿外普通預金からの払戻金の使途は、代表者からの借入金の返済ではなく代表者に対する給与等の支給であるとした事例
- 損金に算入した養老保険の保険料相当額が、保険金受取人である従業員に対する給与(経済的利益の共与)に当たるとした事例
- 関係会社の名義による源泉所得税の納付は、請求人による納付としての法的効果を生じないとした事例
- 懲戒解雇した従業員に対し地位保全仮処分申請に係る裁判所の決定に基づき支払った金員は給与所得に該当するとした事例
- 派遣医に支払う給与等の源泉徴収につき、勤務した日ごとに定額の給与を支給していた場合であっても、月間の給与総額をあらかじめ定めておき、これを月ごとに又は派遣を受ける都度分割して支払うこととするものとして月額表の乙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきとした事例
- 外国人研修生等が在留資格の基準に適合する活動を行っていないことを理由に日中租税条約第21条の免税規定の適用がないとした事例
- 救急病院等に勤務する医師等に対する宿直料は、本来の職務に従事したことに対する対価であるから、所得税基本通達28−1ただし書は適用できないとした事例
- 販売業者の委託により商品の販売契約等の勧誘及び委託販売員の指導業務等を行うマネージャーは外交員に該当するとした事例
- 受給者が確定申告をしたことにより支払者の源泉徴収義務が消滅することはないとした事例
- 外国人芸能タレントの招へい業者へ支払った金員及びその芸能タレントへ支払った、いわゆるドリンク・バックについて源泉徴収を要するとされた事例
- 家族を外国に居住させ、自らは国内に住民票を置き、出入国を繰り返している請求人代表者を所得税法第2条第1項第3号の「居住者」に該当すると判断した事例
- 不動産売買業を営む法人が、土地売買により生じた簿外収益の一部を同法人の実質的代表者に賞与として支給したものと認定し、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分をしたことは適法であるとした事例
- ソフトウエアに係る著作権を侵害したとして外国法人に対し支払った金員は、所得税法第161条《国内源泉所得》第7号ロに規定する著作権の使用料に当たるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。