給与所得者の特定支出の控除の特例を適用することはできないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2001/10/11 [所得税法][必要経費][事業所得] 請求人は、給与等の収入金額から支出した通勤費、宿泊費、衣服費、交際費、新聞雑誌費などの金額(以下「本件支出」という。)を必要経費として実額計算で控除すべきである旨主張するが、給与所得の算定に当たって実額で給与所得を求めるべきものとする法令の定めはないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
また、請求人は、本件支出が給与所得者の特定支出の控除の特例(以下「本件特例」という。)に該当するのであれば、その該当部分について本件特例を適用し、給与所得控除額を超える部分の金額を控除すべきである旨主張するが、本件確定申告書には、本件特例の適用を受ける旨及び特定支出の額の合計額の記載がなく、かつ、領収を証する書類その他の当該支出の事実及び金額を証する書類の添付もない上、本件確定申告書の提出の際にこれを提示した事実もないなど、本件支出は、本件特例の適用要件を満たしていない。
なお、請求人は、形式的判断で課税をするのではなく、常識的に必要な費用であるという実態を理解してほしい旨主張する。
しかしながら、給与所得の算定に当たって実額で給与所得を求めるべきものとする法令の定めがないことは先に述べたとおりである。
また、本件特例の控除の対象とされる特定支出の範囲もサラリーマン特有の支出として限定的なものとされているところ、本件支出のうち該当すると見る余地がある支出は旅費交通費と自家用車諸費用及びタクシー利用等の支出の合計額に限られるが、仮に当該金額が本件特例の要件に該当するとしても、当該金額が請求人の給与等に係る給与所得控除額を超えないことは明らかであるので、いずれにせよ本件特例を適用することはできない。
平成13年10月11日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 給与所得者の特定支出の控除の特例を適用することはできないとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(所得税法>必要経費>事業所得)
- 請求人が債権譲渡により生じたとする貸倒損失は認められず、また、修正申告書を作成するに当たって支払ったとする決算事務手数料は、必要経費に算入されないとした事例
- 医師が医院建築資金を銀行から借り入れる際に締結した生命保険契約に係る支払保険料は、家事上の経費に該当し、事業所得の金額の計算上必要経費とはならないとした事例
- 請求人が開業費として計上した平成10年1月〜5月の地代家賃等は、平成10年1月の開業後に支出したものであるから、平成15年分の事業所得の計算上当該開業費の償却費を必要経費に算入することはできないとした事例
- 業務遂行中に起こした交通事故の被害者に支払った損害賠償金は所得税法施行令第98条に規定する「重大な過失」により負担したものではないとした事例
- 請求人の妻である医師は、請求人の事業に専ら従事していないとして、妻に対して支払った青色事業専従者給与の額は必要経費に算入されないとした事例
- 請求人が、原処分庁が認定した必要経費を超える費用について、具体的内容を明らかにしないことから、当該費用を必要経費に算入することはできないとした事例
- 本件土地の取得に要した借入金の支払利子は、不動産所得あるいは事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができないとした事例
- 法人成りしたことに伴い個人事業を廃止した年分の必要経費に算入した従業員退職金(預り金経理)は必要経費に算入できないとする原処分庁の主張を排斥した事例
- 個人事業主の死亡は当然に雇用契約の終了事由、事業廃止原因であるから、従業員に支給する退職金の必要経費算入を認めるべきであるとの請求人の主張が排斥された事例
- 借入金の一部を定期預金に流用していた場合に、当該借入金に係る支払利息を事業上の必要経費と認めた事例
- ほぼ伐期に達した山林について生じた災害による損失の金額は立木ごとに計算すべきであるとした事例
- ロータリークラブの会費は事業所得の金額の計算上必要経費の額に算入することはできないとした事例
- 請求人の青色申告の特典控除前の所得金額に、同業者の青色申告の特典控除前の所得金額に占める妻の青色事業専従者給与の額の割合の平均値を乗じて算定した金額を必要経費に算入できる額としたことは、合理的な認定方法であるとした事例
- 青色事業専従者給与の金額については、その労務の性質及び提供の程度は他の使用人と比べて大きく異なるものではないことから、労務の対価として相当ではないとした事例
- 非常勤医師である従兄弟に支給した報酬のうち、他の非常勤医師に支給していた日給相当額を超える部分は過大であり、また、親族及び親族の家政婦に支給した給与等の額は、請求人の業務に従事した事実が認められないから、いずれも必要経費の額に算入できないとした事例
- 同居している請求人の妻の父母が独立した生計を営んでいるとはいえないから、同父母に支払った給料及び地代は必要経費に算入することはできないとした事例
- 法人成りにより個人事業を廃業した年分に、繰延資産(医師会の入会金等)の未償却残額を資産損失として必要経費に算入することはできないとした事例
- 本件保証債務については、いずれもその保証を行うことが請求人の税理士等の事業の遂行上必要であったと客観的に認められる特段の事情はないとみるのが相当であるから、所得税法第51条第2項及び同法施行令第141条にいう「その事業の遂行上生じた保証債務」には該当しないとした事例
- 事業開始前に事業の用に供する資産を借入金によって取得した場合において、事業開始前に支出した当該借入金の利子は繰延資産である開業費には該当しないとされた事例
- 請求人の夫は青色事業専従者に該当しないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。