相続開始後にされた修繕工事代金相当額は、相続税の課税価格の計算における債務控除をすることができないと判断した事例(令和元年8月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例(国税不服審判所)
[消費税法][申告、更正の請求の特例]《ポイント》 本事例は、被相続人が生前にした工事請負契約に基づき、相続開始後にされた修繕工事に係る請負代金相当額は、相続開始当時、工事が着工されていないことや、従前どおり賃借人が使用収益していたことなどの現況に照らし、その履行が確実と認められる債務には当たらないと判断したものである。
《要旨》 請求人は、相続により取得した賃貸倉庫に係る修繕工事(本件修繕工事)について、被相続人は、生前に請負契約を締結していたことから、相続開始日時点に当該請負契約に係る支払債務を負っていたと認められ、また、民法第606条《賃貸人による修繕等》第1項の規定に基づき、当該賃貸倉庫に係る土間床の修繕義務を負っていたことから、相続税の課税価格の計算上、その請負代金相当額を債務控除することができる旨主張する。 しかしながら、被相続人は、本件修繕工事の着工日前である相続開始日時点において、その請負代金の支払債務の履行を施工業者から求められる状況になく、その履行の要否すらも不確実な状況にあり、また、本件修繕工事の着工日までは、従前どおり賃借人が賃貸倉庫を引き続き使用収益していたなどの状況からは、当該賃貸倉庫に係る修繕は、任意の履行が事実上期待されていたにすぎないものであったとみるのが相当であることからすると、当該請負代金の支払債務ないし当該賃貸倉庫に係る修繕義務は、その履行が確実と認められる債務には当たらないというべきであるから、相続税の課税価格の計算上、当該請負代金相当額を債務控除することはできない。
《参照条文等》 相続税法第13条第1項、第14条第1項
《参考判決・裁決》 平成31年4月19日裁決(裁決事例集No.115)
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 相続開始後にされた修繕工事代金相当額は、相続税の課税価格の計算における債務控除をすることができないと判断した事例(令和元年8月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(消費税法>申告、更正の請求の特例)
- 相続税の総額の計算に当たり、被相続人並びにF及びGは養子縁組により養母を同じくするが、Fは被相続人と実父母を同じくし、Gは被相続人と実父母を異にするから、F及びGは、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(F)と父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(G)となり、法定相続分はそれぞれ3分の2と3分の1となるとした事例
- 土地上に建物を有していた被相続人が当該土地の所有者に対し地代として支払っていた金員は、当該土地の使用収益に対する対価であると認められないから、被相続人が当該土地上に借地権を有していたとは認めることはできないとした事例(平成24年10月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し・平成29年1月17日裁決)
- 原処分庁が配偶者が取得したと主張する財産は、遺産分割協議以前より存在し、当該遺産分割協議で子が取得したものと認めるのが相当であるから、配偶者が相続により取得した財産はなく、相続税法第19条に規定する相続開始前3年以内の贈与加算の適用もないとした事例
- 死後認知裁判により相続人となった者であっても相続により財産を取得した時及びその財産の評価の時点は相続の開始の時であるとした事例
- 評価対象土地はマンション適地と認められることから広大地には該当しないが、当該土地の評価に当たり控除すべき土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、土壌汚染対策工事見積金額の80%とするのが相当であると判断した事例(平成27年1月相続開始に係る相続税の更正処分・一部取消し・令和元年11月12日裁決)
- 遺産分割の一部が財産評価基本通達7−2(1)注書に定める不合理分割に当たる場合には、その不合理分割に当たる部分のみ分割前の画地により評価単位を判定し、それ以外の部分は分割後の画地により評価単位を判定するのが相当であるとした事例
- 請求人らが相続税の申告において、不動産鑑定士の鑑定評価等(本件鑑定評価等)に基づいて評価額を算定した土地及び建物については、財産評価基本通達(評価通達)に定める評価方法に拠ることのできない特別の事情があるとは認められず、本件鑑定評価等には客観的合理性を直ちに肯定することができない部分があることから、評価通達に定める評価方法によるべきであるとした事例(平成26年12月相続開始の相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成30年10月17日裁決)
- 居住用と居住用以外の建物の敷地となっている土地の持分である本件受贈財産のそのすべてが居住用家屋の敷地であるとはいえないとした事例
- 本件贈与に係る負担は課税価格の計算上贈与財産の価額から控除すべき負担に当たらないとした事例
- 相続税の申告書に計上された預貯金口座から出金された現金並びに配偶者名義及び次男名義の預貯金は、いずれも被相続人に帰属する相続財産とは認められないとした事例(平成30年2月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
- 人格のない社団に対する出資の評価については、企業組合等の出資の評価に準じて純資産価額方式によるのが相当であり、その場合、評価差額に対する法人税等相当額の控除を行うのは相当でないとされた事例
- 河川法第24条の規定に基づく河川区域内の土地の許可占用権は相続税の課税財産に該当し、その価額は財産評価基本通達87−5により評価するのが相当であるとした事例
- 請求人及び原処分庁の行った両鑑定額とも採用できないとして、審判所において取引事例比較法による比準価格及び公示価格を規準とした価格により本件土地の価額を算定した事例
- 相続により取得した借地権について、私道に仮路線価を設定して評価するのが相当であるとした事例
- 金員の取得原因は死因贈与ではなく贈与によるものであるとした事例
- 審判所認定地域が各土地に係る広大地通達に定める「その地域」に当たると判断した事例(平成25年10月相続開始に係る相続税の更正の請求に対する更正処分・一部取消し・平成30年11月26日裁決)
- 有限会社の出資の評価に当たって、賃借人である評価会社が賃借建物に設置した附属設備は、工事内容及び賃貸借契約からみて有益費償還請求権を放棄していると認められるから、資産として有額評価することは相当でないとした事例
- 建物の一部が収用に伴い取り壊された前後を通じて、評価対象地の利用状況及び権利関係に変化がなかったことから、評価単位は1つとすべきとした事例
- 相当の地代を支払っている場合の借地権は、贈与財産である株式の純資産価額の計算上、株式の発行会社の資産の部に算入するとした事例(平成24年分贈与税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成27年3月25日裁決)
- 相続人である配偶者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたとは認められず、相続税法第19条の2第5項に規定する隠ぺい仮装行為はなかったとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。