有料老人ホームの入居契約に基づき返還金受取人が取得した入居一時金に係る返還金請求権に相当する金額の経済的利益は、相続税法第9条でいう「みなし贈与」により取得したものとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2013/02/12 [相続税法][贈与税の課税財産の範囲][贈与財産の範囲]《ポイント》 本事例は、第三者(請求人の弟)のためにする契約を含む有料老人ホームの入居契約により、請求人の弟は、入居者(被相続人)死亡時に、当該入居者に対価を支払うことなく、同人から入居一時金に係る返還金の返還を受ける権利に相当する金額の経済的利益を享受したことから、当該経済的利益についてみなし贈与課税の適用があると初めて判断したものである。
《要旨》 請求人は、被相続人の死亡に伴い請求人の弟に支払われた被相続人が入居していた老人ホームの入居一時金に係る返還金は相続税の課税対象とはならない旨主張する。
しかしながら、請求人の弟は、被相続人が死亡時の老人ホームの入居一時金に係る返還金受取人であり、その入居契約により、受益者として、入居者である被相続人の死亡を停止条件として当該ホーム設置会社に対して直接、入居一時金に係る返還金の返還を請求する権利を取得したものであるところ、この取得原因についてみると、本件における入居契約の内容のみをもって、被相続人と請求人の弟との間に入居一時金に係る返還金の返還を請求する権利を贈与する旨の死因贈与契約が成立していたと認めることはできないし、その他当審判所の調査の結果によっても、相続開始時より前に、当該当事者間でその旨の死因贈与契約が成立していた事実や、被相続人がその旨の遺言をしていた事実を認めることはできないものの、入居一時金の原資は被相続人の定期預金の一部であると認められることからすれば、実質的にみて、請求人の弟は、第三者(請求人の弟)のためにする契約を含む入居契約により、相続開始時に、被相続人に対価を支払うことなく、同人から入居一時金に係る返還金の返還を請求する権利に相当する金額の経済的利益を享受したというべきである。したがって、請求人の弟は、当該経済的利益を受けた時、すなわち、相続開始時における当該利益の価額に相当する金額を被相続人から贈与により取得したものとみなす(相続税法第9条)のが相当である。そして、請求人の弟は、被相続人から相続により他の財産を取得していることから、被相続人から贈与により取得したものとみなされる当該利益の価額は、相続税法第19条《相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項の規定により、当該他の財産に加算され、相続税の課税対象となる。
《参照条文等》 相続税法第9条
《参考判決・裁決》 東京高裁平成9年6月30日判決(判時1610号75頁)
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 有料老人ホームの入居契約に基づき返還金受取人が取得した入居一時金に係る返還金請求権に相当する金額の経済的利益は、相続税法第9条でいう「みなし贈与」により取得したものとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(相続税法>贈与税の課税財産の範囲>贈与財産の範囲)
- 離婚成立前に登記原因を贈与とする所有権移転登記をした上で行った贈与税の申告について、その後裁判上の離婚をしたことを理由とする国税通則法第23条第2項による更正の請求を認めなかった事例
- 当初の遺産分割協議の錯誤無効を理由に行った再度の遺産分割協議に基づき取得した新たな財産は、当初の遺産分割協議に要素の錯誤があったとは認めることができないから贈与により取得したものと認められるとした事例
- 有料老人ホームの入居契約に基づき返還金受取人が取得した入居一時金に係る返還金請求権に相当する金額の経済的利益は、相続税法第9条でいう「みなし贈与」により取得したものとした事例
- 資金の移動が、相続税法第9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合に該当するとした事例
- 賃貸料が当該土地に係る固定資産税と同額であることなどから、請求人は、貸家建付地である当該土地を著しく低い価額の対価で譲り受けたと認められるとした事例
- 請求人が父から売買契約により譲り受けた土地の対価は、当該土地の時価に比して著しく低い価額であると認められ、相続税法第7条の規定により贈与があったものとした事例
- 土地建物の譲受価額が相続税法第7条に規定する「著しく低い価額の対価」に当たるとしてなされた原処分は違法であるとした事例
- 請求人らの母親の預金口座から出金された金員が請求人らの債務の返済に充てられているが、両当事者はその事実を知らなかったのであるから、請求人らが対価を支払わないで経済的利益を受けたとは認められないとした事例
- 譲り受けた土地建物の時価について請求人及び原処分庁が算定した価額は採用できないとして、審判所が依頼した鑑定価額等を基に土地建物の時価を算定した事例
- 調停調書に基づき解決金の支払により土地を取得した場合であっても解決金の金額がその土地の時価より著しく低いときには低額譲受に当たるとした事例
- 請求人は、資力を喪失していないので、相続税法第8条ただし書の適用ができないとした事例
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。