滞納者が受け取るべき信託受益権の譲渡代金の残余金等のうち、滞納者の債務を弁済した後に生じた余剰金は、実質的に滞納者から請求人に対する無償譲渡と認められるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/03/23 [国税徴収法][第二次納税義務][無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務]《ポイント》 この事例は、滞納者と滞納者が主宰する法人が共有していた財産の譲渡代金が当該法人の預金口座に振り込まれた後、その一部が滞納者名義の預金口座、請求人名義の預金口座、請求人の妻名義の預金口座を経由して請求人の定期預金等の財産となったところ、滞納者は上記譲渡代金から自己及び上記法人の債務を弁済して余剰が出た場合には、請求人に贈与する意思を有し、当該余剰の交付や返還を求めていないから、実質的に滞納者の財産が無償譲渡されたと認定したものであり、また、その額が原処分の限度を超えるから、原処分は適法であるとしたものである。
《要旨》 請求人は、本件滞納者と本件滞納者が代表取締役を務めていた本件法人の双方から、両者が共有していた不動産の信託受益権の譲渡代金の残余金等(本件残余金等)の管理処分を任され、本件残余金等が振り込まれた本件法人の預金口座をはじめ、本件滞納者、請求人及び請求人の妻名義の預金口座のすべてを請求人の管理下に置いて入出金を行っていた。また、本件滞納者は、上記譲渡代金によって、自己及び本件法人の債務を弁済して余剰が出た場合には、請求人に贈与する意思を有し、請求人に対し、当該余剰の交付や返還を求めていないところ、本件残余金等のうち本件滞納者が取得すべき額の金員が、本件法人の取得すべき額の金員とともに本件法人の預金口座に振り込まれ、その後、その一部が、請求人の管理下にあった本件滞納者名義の預金口座、請求人名義の預金口座及び請求人の妻名義の口座に振り替えられ、さらに、請求人名義の定期預金等として請求人の管理下に移転したと認められる。
このような一連の事実経過をみると、実質的に、本件滞納者の財産が請求人に対して無償譲渡されたと認められ、その額は原処分の限度を超えるから、原処分は適法である。
《参照条文等》 国税徴収法第39条
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 滞納者が受け取るべき信託受益権の譲渡代金の残余金等のうち、滞納者の債務を弁済した後に生じた余剰金は、実質的に滞納者から請求人に対する無償譲渡と認められるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税徴収法>第二次納税義務>無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)
- 国税徴収法第39条の規定による第二次納税義務を負う受贈者が相続時精算課税制度を選択したことによって財産の贈与を受けた後に納付すべきこととなる相続税は、同条の受けた利益の額を算定するに当たって受益財産の価額から控除することはできないとした事例
- 滞納者が受け取るべき信託受益権の譲渡代金の残余金等のうち、滞納者の債務を弁済した後に生じた余剰金は、実質的に滞納者から請求人に対する無償譲渡と認められるとした事例
- 不動産賃貸業を営む請求人が賃借人から敷金及び建設協力金の返還義務を免除されたことが、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たらないとした事例
- 連帯納付義務者Lから不動産の贈与を受けた者に対して行われた国税徴収法第39条の規定に基づく第二次納税義務の告知処分が適法であるとした事例
- 贈与があったことを前提としてなされた第二次納税義務告知は、受領した金員の性質を誤認したものであり、取り消しするのが相当であるとした事例
- 担保権付不動産の贈与を受けた場合における国税徴収法第39条の第二次納税義務の限度額の算定に当たり、当該担保権の存在を減額要因として認めなかった事例
- 会社法第762条の規定に基づく新設分割によって滞納法人の事業を承継した請求人は国税徴収法第38条の規定による第二次納税義務を負うとした事例
- 滞納会社の家賃収入計上漏れ等により生じた簿外の金員を取得した代表者に対する第二次納税義務の告知処分は相当であるとした事例
- 滞納者の詐害の意思の有無は、国税徴収法第39条の第二次納税義務の成立要件ではないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却・平成27年1月19日裁決)
- 滞納法人がその構成員である組合員に対して行った賦課金の返還行為が、国税徴収法第39条の無償譲渡等に当たるとされた事例
- 請求人が滞納法人から、不動産売買に係る仲介手数料に相当する債務の免除を受けたとは認められないとした事例
- 請求人と滞納会社が共同して売却した本件不動産(土地は各別に所有、建物は共有)の売却代金について、不動産の持分に応じて配分を受けるのが相当であるから、請求人は受けた利益を限度として滞納国税につき第二次納税義務を負うとした事例
- 請求人が受領した滞納会社の売掛金のうち、滞納会社の従業員に対する給与に充てられた部分以外の部分は、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分によるものであるとした事例
- 離婚に伴う財産分与が不相当に過大であるとして国税徴収法第39条に規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」があったとした事例
- 滞納者が請求人に対してした離婚に伴う財産分与及び子の監護費用分担額の一時の支払につき、不動産を給付した上で保有し得た財産の2分の1に相当するまでの金額については、不相当に過大と認めることはできないが、これを超える部分については、不相当に過大なものとして国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等処分に該当するとした事例
- 滞納者が行った集合住宅の売却について、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等に該当するとした事例
- 滞納法人が行った債権放棄と同法人の滞納国税の徴収不足との間に基因関係が認められるとした事例
- 滞納会社が売上除外金から取締役に支出した金員は、社員総会において承認の決議を受けた損益計算書には計上されていないことから、職務執行の対価としての役員報酬には当たらず、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に当たるとした事例
- 第二次納税義務に係る租税債務が成立した時点において無限責任社員であった者は第二次納税義務を負うと解するのが相当であるとした事例(不動産の差押処分・棄却・平成25年12月2日裁決)
- 離婚9か月前にした妻に対する土地建物の贈与が国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当しないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。