第59条関係 引渡命令を受けた第三者等の権利の保護|国税徴収法
基本通達(国税庁)
動産を使用又は収益する権利
(賃借権)
1 法第59条第1項の「賃借権」とは、当事者の一方(貸主である滞納者)が他方(借主)に対してある動産を使用及び収益させることを約し、借主がこれに対して賃料を支払うことを約する契約により、借主が取得する権利をいい(民法第601条)、買取権付賃貸借契約による割賦払約款付売買も含まれる。
(使用貸借権)
2 法第59条第1項の「使用貸借権」とは、当事者の一方(借主)の相手方(貸主である滞納者)からある動産を無償で借りて使用及び収益をした後、その物を返還することを約する契約(使用貸借)により、借主が取得する権利をいう(民法593条)。
(その他動産の使用又は収益をする権利)
3 法第59条第1項の「その他動産の使用又は収益をする権利」とは、例えば、受寄者が寄託者(滞納者)の承諾を得て受寄物を使用する場合(民法第658条第1項)、賃貸借、使用貸借等の混合契約に基づき使用又は収益をする場合等におけるその使用又は収益をする権利をいう。
契約の解除
(意義)
4 法第59条第1項の「契約を解除することができる」とは、契約の内容いかんにかかわらず、その契約を一方的に解除することができることをいう(民法第540条第1項、第543条、第620条参照)。
なお、法律の規定(民法第548条参照)により、法第59条第1項の規定にかかわらず契約の解除ができない場合がある。
(占有の目的)
5 法第59条第1項の「占有の目的を達することができなくなる」とは、その動産を、その占有の基礎となった契約の内容のとおり使用又は収益することができなくなることをいう。
(契約解除の通知)
6 引渡命令を受けた第三者は、引渡命令に係る動産の差押えの時までに、その引渡しを命じた税務署長に対して、法第59条第1項の規定による契約の解除をした旨の通知を、書面によりしなければならない(令第25条第1項)。
損害賠償請求権
(意義)
7 法第59条第1項の「滞納者に対して取得する損害賠償請求権」は、同項の契約の解除によって当然に取得するものではなく、その契約の解除の結果生じた債務不履行、不法行為その他契約に基づく損害賠償請求権であり、また、その行使は、契約の解除によって影響を受けるものではない(民法第415条、第709条、第545条第3項。昭和6.4.28大判、昭和8.2.24大判参照)。
(賠償請求の範囲)
8 法第59条第1項後段の損害賠償請求権による求償の範囲は、原則として、民法第415条《債務不履行》及び第416条《損害賠償の範囲》その他の規定によるものであって、債務の不履行によって被ったいわゆる積極的損害のほか、不履行のなかった場合の得べかりし利益の喪失たるいわゆる消極的損害も含まれる。
(売却代金)
9 法第59条第1項後段の「売却代金」は、法第94条《公売》、第109条《随意契約による売却》又は第110条《国による買入れ》の規定により換価した引渡命令に係る動産の売却代金に限られる。
(配当の方法)
10 法第59条第1項後段の「残余のうちから配当を受けることができる」とは、9の動産の売却代金を法第129条第1項《配当の原則》に掲げる国税その他の債権(法第59条第1項後段及び第4項の損害賠償請求権を除く。)に配当し、その残余のうちから、配当を受けることができることをいう。
(配当の請求)
11 損害賠償請求権による配当の請求は、その動産の売却決定の日の前日までに、債権現在額申立書を税務署長に提出することによってしなければならない(法第130条第1項。令第48条第1項参照)。
(配当が受けられない場合)
12 動産の引渡しを命ぜられた第三者は、その動産の差押え時までに、法第59条第1項の規定による契約の解除をした旨の通知をしないときは、動産の差押え後にその通知をしたことについて相当の理由があると認められるときを除き、法第59条第1項の規定による配当を受けることができない(令第25条第2項、第3項)。
なお、この場合には、次のことに留意する。
(1) 令第25条第3項《みなし使用又は収益の請求の不適用》に該当する場合であっても、引渡しに係る動産の売却代金の交付期日までに契約の解除をした旨の通知をしなければ配当を受けることができないこと。
(2) 令第25条第3項の「相当の理由があると認められるとき」とは、その動産を引き渡すべき期限を繰り上げて引渡命令を発したとき(令第24条第3項)又は通知の遅延が火災、風水害等の理由によるとき等をいうこと。この場合における令第25条第1項の通知は、引渡命令を発した日又は火災、風水害等のやんだ日からおおむね7日以内にしなければならないものとする。
使用又は収益
(請求)
13 法第59条第2項の「請求」は、その請求に係る動産の差押え時までにしなければならない(令第25条第1項)。
(使用又は収益の請求)
14 引渡しを命ぜられた第三者がする法第59条第2項の規定による動産の使用又は収益の請求は、書面によりしなければならない(令第25条第1項)。
なお、引渡しを命ぜられた第三者が、その命令に係る動産の差押え時までに、法第59条第1項の規定による契約の解除をした旨の通知又は同条第2項の請求をしないときは、同項の請求があったものとみなされる(令第25条第2項前段)。
(使用又は収益できる期間)
15 法第59条第2項の「その期限がその動産を差し押えた日から3月を経過した日より遅いときは、その日」とは、契約の期間の末日が、その動産を差し押さえた日から3月を経過した日より遅いときは、その経過した日をいう。この場合の「3月を経過した日」が休日等に当たるときは、これらの日の翌日をもってその期限とみなされる(通則法第10条第2項)。
(使用又は収益をさせる場合の第三者の保管)
16 法第59条第2項の規定により第三者に動産の使用又は収益をさせる場合には、その動産をその第三者に保管させるものとする。
前払借賃を支払った第三者の配当請求
(配当請求)
17 法第58条第2項《第三者が占有する動産等の差押手続》の規定により動産の引渡しを命ぜられた第三者が、法第59条第1項前段の規定により賃貸借契約を解除し、かつ、その引渡命令があった時前にその後の期間分の借賃を支払っているときは、その第三者は、税務署長に対し、その動産の売却代金のうちから、その借賃に相当する金額で差押えの日後の期間に係るもの(3月分に相当する金額を限度とする。)の配当を請求することができる(法第59条第3項前段)。
なお、法第59条第3項の「借賃」とは、賃貸借契約に基づいて支払われる賃借料をいい、その名称のいかんを問わない。
(請求額)
18 配当の請求額については、次のことに留意する。
(1) 差押えの日後の期間分の前払借賃について1月未満に係るものがある場合には、日割りにより計算すること。
(2) 差押えの日後の期間分の前払借賃の金額が借賃の3月分相当額を超えるときは、その3月分の金額とすること。
(配当の順位)
19 法第59条第3項前段の前払借賃の配当順位は、その動産上の留置権により担保されていた債権(法第21条第1項参照)に次ぎ、かつ、動産保存の先取特権により担保されていた債権(法第19条第1項参照)に先立つことに留意する(法第26条第1号参照)。
参加差押えをした行政機関等に対する配当請求
20 税務署長が、法第87条第2項《参加差押えに係る財産の差押えの解除時の措置》の規定により、参加差押えをした行政機関等に動産を引き渡した場合には、その動産に係る法第59条第1項又は第3項の規定によりその売却代金から配当を受けることができる権利は、その行政機関等に対して行使することができる(令第41条第3項)。
動産の引渡しを拒まなかった第三者
(契約解除の通知)
21 動産の引渡しを拒まなかった第三者が、差押え後(引渡し後)であっても相当の期間内(おおむね7日以内)に、契約の解除をした旨の通知をしたときは、法第59条第1項及び第3項の規定による配当を受けることができる(法第59条第4項、令第25条第3項)。この場合の配当の方法及び順位については、10及び19に準ずる。
(使用又は収益の請求)
22 動産の引渡しを拒まなかった第三者については、差押え後(引渡し後)であっても、相当の期間内(おおむね7日以内)は使用又は収益の請求ができるが、この請求は書面によりさせるものとする(法第59条第4項、令第25条第3項)。
(参加差押えをした行政機関等に対する配当請求)
23 税務署長が、法第87条第2項《参加差押えに係る財産の差押えの解除時の措置》の規定により、参加差押えをした行政機関等に動産を引き渡した場合には、その動産に係る法第59条第4項の規定によりその売却代金から配当を受けることができる権利は、その行政機関等に対して行使することができる(令第41条第3項)。
出典
国税庁ホームページ http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/chosyu/index.htm
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