第17条関係 譲受け前に設定された質権又は抵当権の優先|国税徴収法
基本通達(国税庁)
財産の譲受け
(譲り受けたとき)
1 法第17条の「財産を譲り受けたとき」とは、納税者が質権又は抵当権の設定されている財産を売買、贈与、交換、現物出資、代物弁済等により第三者から取得したときをいい、相続又は法人の合併若しくは分割による承継の場合を含まない。
(注)
1 納税者が相続又は法人の合併若しくは分割により承継した財産上の質権又は抵当権と納税者固有の国税との優先関係については、法第15条第1項第7号、第8号若しくは第9号又は第16条《法定納期限等》の規定の適用があることに留意する。
2 相続又は法人の合併による財産の取得があった場合には、相続人、合併後存続する法人又は合併により設立した法人等が通則法第5条《相続による国税の納付義務の承継》、第6条《法人の合併による国税の納付義務の承継》又は第7条《人格のない社団等に係る国税の納付義務の承継》の規定により、それぞれ納税義務を承継する。この場合において、承継された財産上の質権又は抵当権と被相続人又は被合併法人固有の国税との優先関係は、相続又は法人の合併以前と変わらないことに留意する。
3 法人の分割(分社型分割(法人税法第2条第12号の10《分社型分割の定義》に規定する分社型分割をいう。以下同じ。)を除く。)による財産の取得があった場合には、通則法第9条の2《法人の分割に係る連帯納付の責任》の規定により、分割承継法人は分割をした法人の所定の国税について、承継財産の価額を限度として連帯納付責任を負うことになる。この場合において、分割承継法人が負う連帯納付責任は、相続又は法人の合併の場合と異なり、分割をした法人の負う国税の納付義務とは別の分割承継法人固有のものであるため、分割により承継された財産上の質権又は抵当権と国税との優先関係については、法第15条第1項又は第16条《法定納期限等》の規定が適用されることに留意する。
4 納税者の財産を譲り受けた者が、第三者のため質権又は抵当権を設定した後、その譲渡が取り消された場合(詐害行為として取り消された場合を含む。)、解除された場合又は無効である場合において、それらの効果を第三者である質権者又は抵当権者に対して主張できないとき(例えば、売買が虚偽表示である場合には、善意の第三者である質権者又は抵当権者に対して、その無効を主張することはできない。民法第94条第2項)は、その質権又は抵当権が法第17条の譲受け前に設定されたものとして、同条を適用するものとする。
(納税者が担保財産を再取得した場合)
2 納税者が所有する財産上に質権又は抵当権を設定した後その担保財産を第三者に譲渡し、更にその納税者がその担保財産を再取得した場合には、法第17条の規定を適用することなく、法第15条《法定納期限等以前に設定された質権の優先》又は第16条《法定納期限等以前に設定された抵当権の優先》の規定を適用するものとする。
(法定納期限等との関係)
3 納税者が、質権又は抵当権の設定されている財産を譲り受けた場合においては、その質権又は抵当権の設定の時期がその納税者の納付すべき国税の法定納期限等の以前であると後であるとを問わず、その質権又は抵当権により担保される債権は、その国税に優先する。
証明
(証明の期限等)
4 登記をすることができる質権(第15条関係22、23)以外の質権が法第17条第1項の規定の適用を受けるための証明については、第15条関係24から27及び29から31までと同様である(法第17条第2項、令第4条、通則令第2条第7号)。
(譲受け前であることの確認)
5 質権の設定の時期がその質権の目的となった財産の譲受け前であるかどうかについては、譲受け前であることを判断するに足りる書類を提出させ、徴収職員が調査の上確認するものとする。
法第26条との関係
(先順位の質権の証明がなかった場合)
6 法第17条第2項の証明をすべき質権が2以上ある場合において、先順位の質権について第2項の証明がなく、後順位の質権について第2項の証明があったときの配当については、法第26条《国税及び地方税と私債権との競合の調整》の規定に準ずるものとする。
〔例〕
譲渡人を設定者とする先順位の質権甲の被担保債権・・・・・・・・30万円
譲渡人を設定者とする後順位の質権乙の被担保債権・・・・・・・・40万円
納税者(譲受人)の国税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70万円
換価代金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90万円
(1) 上記の例において、納税者が、質権甲及び質権乙の設定された財産を譲り受け、その後納税者の滞納国税につき滞納処分による換価をしたところ、質権甲については法第17条第2項の証明がなく、質権乙について同項の証明があった場合、質権甲は国税に後れるが質権乙に優先し、また質権乙は質権甲に後れるが国税に優先することになる。
(2) この場合、配当額の計算は以下のとおりである。
イ 法第26条第2号の規定に準じて、国税及び私債権に充てるべき金額の総額は、法第17条の規定により、質権乙の被担保債権に40万円、国税に50万円(換価代金90万円−質権乙の被担保債権40万円)となり、国税に充てるべき金額の総額は50万円、私債権に充てるべき金額の総額は40万円となる。
ロ 法第26条第3号の規定に準じて、国税に50万円を充てる。
ハ 法第26条第4号の規定に準じて、私債権に充てるべき40万円は、民法第355条《動産質権の順位》の規定により、質権甲の被担保債権30万円、質権乙の被担保債権10万円(40万円−30万円)となる
ニ 上記の結果、配当額は次のとおりになる。
質権甲の被担保債権・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30万円
質権乙の被担保債権・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10万円
国税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50万円
(納税者が担保財産を再取得した場合において第三者が設定した質権又は抵当権があるとき)
7 納税者が所有する財産上に質権又は抵当権を設定した後、その担保財産を第三者に譲渡し、その第三者がその担保財産上に質権又は抵当権を設定し、更にその後納税者がその担保財産を再取得した場合のその納税者の国税及び担保財産上の質権又は抵当権により担保される債権に対する配当については、法第26条《国税及び地方税等と私債権との競合の調整》の規定に準ずるものとする。
〔例〕
納税者を設定者とする抵当権甲
(設定登記 平成18.7.31)の被担保債権・・・・・・・ 400万円
譲受人を設定者とする抵当権乙
(設定登記 平成18.10.11)の被担保債権・・・・・・・600万円
差押国税(法定納期限等 平成18.5.31)・・・・・・・・・・・・・700万円
換価代金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1,000万円
(1) 上記の例において、抵当権乙を設定した後納税者がその財産を再取得し、その後納税者の滞納国税につき滞納処分による換価をした場合、抵当権甲は国税に後れるが抵当権乙に優先し、また、抵当権乙は抵当権甲に後れるが法第17条の規定により国税に優先することとなる。
(2) この場合、配当額の計算は以下のとおりである。
イ 法第26条第2号の規定に準じて、国税及び私債権に充てるべき金額の総額は、まず法第17条の規定により抵当権乙の被担保債権に600万円、次いで、抵当権甲の設定登記よりも法定納期限等の古い国税400万円(換価代金1,000万円−抵当権乙の被担保債権600万円)となり、国税に充てるべき金額の総額は400万円、私債権に充てるべき金額の総額は600万円となる。
ロ 法第26条第3号の規定に準じて、国税に400万円を充てる。
ハ 法第26条第4号の規定に準じて、私債権に充てるべき金額は、民法第373条第1項《抵当権の順位》の規定により、抵当権甲の被担保債権400万円、抵当権乙の被担保債権200万円(600万円−400万円)となる。
ニ 上記の結果、それぞれの配当額は次のとおりになる。
国税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・400万円
抵当権甲の被担保債権・・・・・・・・・・・・・・・・・・・400万円
抵当権乙の被担保債権・・・・・・・・・・・・・・・・・・・200万円
出典
国税庁ホームページ http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/chosyu/index.htm
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