金銭の払込みに代えて報酬債権をもって相殺するストックオプションの課税関係|所得税
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
当社では、「ストックオプション等に関する会計基準」に従い、会計上、新株予約権に係る公正な評価額を勤務対象期間(割当日から翌年の株主総会開催日の前日(権利確定日)までの間)において費用計上することを前提に、取締役に対する役務提供の対価として、新株予約権に係る金銭の払込みに代えて報酬債権をもって相殺する方法により、譲渡制限を付した新株予約権を発行する予定です。
この新株予約権に係る経済的利益に対する課税関係はどのようになりますか。
なお、この新株予約権に係る報酬債権は、役職に応じて支給される固定報酬とは別のものであり、新株予約権の払込金との相殺に供されるほかは、いかなる事情があっても金銭による支給はされません。
【回答要旨】
権利行使時に権利行使益を給与所得として課税することとなります。
照会の新株予約権については、取締役の役務提供の対価として付与され、新株予約権の内容として譲渡制限が付されており、取締役は本件新株予約権の権利を行使することによって初めて経済的利益を享受することができることから、その経済的利益を享受することとなる権利行使時に、権利行使益を給与所得として課税することとなります(所得税法施行令第84条第4号、所得税基本通達23〜35共−6(2)イ)。
なお、取締役から受ける役務提供の対価としてストックオプションを用いる取引については、会社法上、報酬債権をもって相殺しているため、有償発行と整理されますが、照会の報酬債権については、いかなる事情があろうとも現実に金銭が支払われることはなく、本件新株予約権の払込金との相殺に供する目的においてのみ生ずるものとされているとともに、権利行使がされるまでは新株予約権に係る経済的利益は実現しないことから、所得税法第36条《収入金額》の適用上、付与時及び相殺時における収入すべき金額はないこととなり、権利行使時まで課税関係は生じません。
また、権利行使益は、権利行使日における株価(時価)から新株予約権の取得価額にその行使に際し払い込むべき額(権利行使価額)を加算した金額を控除した金額とされていますが、照会の新株予約権のように、その譲渡が禁止されていること等により付与時に課税されない新株予約権については、その取得価額はないこととなりますので、権利行使日における株価(時価)から権利行使価額を控除した金額が権利行使益となります。
【関係法令通達】
所得税法第36条、所得税法施行令第84条第4号、所得税基本通達23〜35共−6
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/shotoku/02/33.htm
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