事実上の耕作権の放棄の対価に係る収用特例の適用|譲渡所得
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
甲が乙に賃貸している農地が収用事業(ダム事業)のために買収され、甲は対価補償金を取得しました。甲、乙間の当該農地に係る賃貸借は農地法上の許可を受けたものではなく、乙の権利はいわゆる事実上の権利です。
ところで、甲は、上記買収による対価補償金の一部を、乙の貸借権放棄の対価として乙に支払いました。
この乙の受け取った貸借権放棄の対価については、土地の上に存する権利の譲渡対価として分離課税の対象となる譲渡所得としてよろしいですか。また、譲渡所得とした場合に、租税特別措置法関係通達33-31の2により、対価補償金の代理受領があったものとして収用等の場合の課税の特例を適用することができますか。
【回答要旨】
1 いわゆる事実上の耕作権の放棄(譲渡)の対価は、農地法上の許可を受けた権利ではありませんが課税上は土地の上に存する権利の譲渡対価と同様に分離課税の譲渡所得として差し支えありません。
2 農地法上の許可を受けていない事実上の耕作権は、土地収用法第5条第1項第1号に規定する権利には該当せず、当該権利については、土地収用法上、収用の対象とされません。
したがって、事実上の耕作権が収用事業のために起業者によって消滅させられることはなく、収用等の場合の課税の特例を適用する余地はありません。乙の受領した事実上の耕作権の放棄の対価は、事実上の耕作権を甲との任意契約により消滅させたことによる対価と解さざるを得ません。
(注) 租税特別措置法関係通達33-31の2では、借地権等の設定されている土地について収用等があった場合において、当該権利と土地の対価とが一括して地主に支払われた場合には、借地人等の土地に関する権利の消滅の対価を地主が代理受領をしたものとして、当該権利の譲渡所得について収用等の場合の課税の特例の適用を認めています。これは、当該借地人等の所有する権利が土地収用法第5条第1項に規定する権利に該当し、当該権利が土地収用法の規定により収用できるという前提があるからです。しかし、照会の事例では、事実上の耕作権は土地収用法上のいわゆる権利収用の対象とはならないので、地主による耕作権の消滅補償の代理受領とは考えられません。
【関係法令通達】
租税特別措置法関係通達33-31の2
土地収用法第5条第1項第1号
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/joto/14/02.htm
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