全部取得条項付種類株式の取得の対価として子会社株式が交付された場合|源泉所得税
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
私はA社の全部取得条項付種類株式10株(取得価額120万円)を保有していましたが、今般、A社がこの種類株式の全部を取得し、その対価として種類株式1株につきA社が保有する子会社株式1株の交付を受けることとなりました。
A社の資本金等の額等は次のとおりですが、この場合の課税関係はどのようになりますか。
【回答要旨】
50万円のみなし配当と20万円の譲渡損失が生ずることとなります。
法人が全部取得条項付種類株式の全部を取得する場合で、その対価としてその法人の株式及び新株予約権のみの交付を受ける場合には、その種類株式の譲渡はなかったものとみなされ(所得税法第57条の4第3項第3号)、交付を受けた株式の取得価額はその基因となった種類株式の取得価額を引き継ぎます(新株予約権の取得価額は0円となります。)(所得税法施行令第167条の7第6項第4号)。この場合、みなし配当等の課税関係は生じません(所得税法第25条第1項第4号かっこ書き、租税特別措置法第37条の10第3項第4号かっこ書き)。
これに対して、その法人の株式及び新株予約権以外の資産の交付を受けた場合には、交付を受けた資産の合計額のうち、その交付の基因となった株式に対応する資本金等の額を超える部分の金額はみなし配当課税の対象となり(所得税法第25条第1項第4号)、また、みなし配当以外の部分の金額は株式等の譲渡所得等に係る収入金額とみなされます(租税特別措置法第37条の10第3項第4号)。
なお、自己株式の取得等に係るみなし配当の金額の計算に当たって、その法人が2種類以上の株式を発行していた場合には、その取得等をした自己株式と同一の種類の株式に係る種類資本金額を基に交付を受けた株式に対応する資本金等の額を計算することになります(所得税法施行令第61条第2項第4号)。
照会の場合には、子会社株式の交付を受けていますので、みなし配当等の課税の対象となります。具体的には、交付を受けた子会社株式の価額の合計額150万円のうち、交付の基因となった取得条項付株式に対応する資本金等の額100万円(100億円÷10万株×10株)を超える部分50万円はみなし配当課税の対象となり、残余の100万円は株式等の譲渡所得等の収入金額とみなされ、20万円(100万円-120万円)の譲渡損失が生ずることとなります。
【関係法令通達】
所得税法第25条第1項第4号、第57条の4第3項第3号、所得税法施行令第61条第2項第5号、第167条の7第6項第4号、租税特別措置法第37条の10第3項第4号
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/gensen/07/03.htm
関連する質疑応答事例(源泉所得税)
- 外国に居住する公務員の妻に支払う家賃
- 販売員に対し引抜き防止のために支給した慰留金
- 弁済供託する場合の源泉徴収義務
- 退職金を分割支給した場合の源泉徴収税額の計算
- 外貨建の生命保険契約に基づく年金が年に複数回支払われる場合の源泉徴収の要否の判定
- 短期滞在者免税の適用を受けていた者の滞在日数が事後的に183日を超えた場合
- 労働組合の執行委員が休日に組合行事等に従事した場合の日当
- 手話通訳の報酬
- 海外事業所等へ勤務するための出国の意義
- 居住者に支払う職務発明の対価
- 社員に家具等を貸与した場合の経済的利益
- テロップ代金
- インド輸出入銀行によって保証された借入金の利子
- ドイツの法人に支払う技術導入に係るオプションフィー(選択権料)
- 短期滞在者免税の要件である滞在日数の計算
- 日米租税条約における短期滞在者免税を適用する場合の183日以下の判定
- 青色事業専従者である妻
- 交通用具を使用している者の通勤距離が変更となった場合の非課税限度額
- カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合
- 入国後、2年を超えて滞在することとなった場合の交換教授免税(日伊租税条約)
項目別に質疑応答事例を調べる
当コンテンツは、国税庁ホームページ利用規約に基づき、国税庁:質疑応答事例のデータを利用して作成されています。