介護保険法に基づく居宅サービスに医療系サービスが伴わない場合、その居宅サービスの対価は医療費控除の対象とはならないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2009/06/12 [所得税法][所得控除] 医療費控除の対象となる医療費について、所得税法第73条第2項は、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう旨規定し、これを受けて、所得税法施行令第207条《医療費の範囲》には、保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話(同条第5号)等の対価のうち、その病状等に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額がこれに該当する旨規定している。
そして、所得税基本通達73−6は、上記「保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話」には、保健師、看護師又は准看護師以外の者で療養上の世話を受けるために特に依頼したものから受ける療養上の世話も含まれる旨定め、平成12年6月8日付課所4−11「介護保険制度下での居宅サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて(法令解釈通達)」は、居宅サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて、医療系サービスのいずれかが位置付けられている居宅サービス計画に基づいて、居宅サービスを利用する者を対象とし、当該対象者が医療系サービスと併せて利用する訪問介護(介護保険法第8条第2項)、訪問入浴介護(同条第3項)、通所介護及び短期入所生活介護(同条第9項)(以下、上記からまでの各居宅サービスを併せて「対象居宅サービス」という。)に要する費用(介護保険法第41条《居宅介護サービス費の支給》第4項各号に規定する「厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額」をいう。)に係る自己負担額を、療養上の世話を受けるために特に依頼した者による療養上の世話の対価として医療費控除の対象とする旨定めている。
これら各通達の定めは、医療の対価と評価できるものについて、これを医療費控除の対象としている法の趣旨に照らし相当であると認められる。
これを本件についてみると、本件利用料のうち、通所介護に係る費用の額は、対象居宅サービスに要する費用に該当するものの、本件居宅サービス計画には医療系サービスがいずれも位置付けられていないこと、請求人の妻であるAは医療系サービスを利用していないことから、療養上の世話を受けるために特に依頼した者による療養上の世話の対価とは認められない。
また、福祉用具貸与に係る費用の額及び食費の額は、対象居宅サービスに要する費用にも該当せず、日常生活に関連する費用と認められることから、医療費控除の対象とすることはできない。
したがって、本件利用料は、その全額が医療費控除の対象とならないから、請求人の主張には理由がない。
平成21年6月12日裁決
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