滞納会社に対する滞納処分として差し押さえられた請求人名義の定期預金の払戻請求権について、預金の原資となっている滞納会社から振り込まれた金員は請求人に対する役員報酬ということはできないこと等から、滞納会社に帰属すると認めるのが相当であるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2000/04/11 [国税徴収法][差押え][財産差押えの通則][差押財産の帰属] 請求人は、同人名義の本件定期預金口座に係る払戻請求権は請求人に帰属しており、これが滞納会社に帰属するものとしてなされた本件差押処分は違法である旨主張する。
本件定期預金口座は、滞納会社から請求人名義の普通預金口座(以下「本件普通預金口座」という。)に振り込まれた金員(以下「本件金員」という。)により開設されたものであることから、まず、本件普通預金口座の預金者について検討すると、[1]請求人は、本件金員は請求人が滞納会社から支給を受けた役員報酬である旨主張するが、請求人が滞納会社に対し役員としての役務を提供した事実は認められず、本件金員が役員報酬であると認められないから、本件普通預金口座は、滞納会社の出捐によって開設されたものというべきであり、また、[2]本件普通預金口座の開設手続等は、滞納会社の実質的経営者の指示でその社員が行っていたこと及び本件普通預金口座の届出印は滞納会社によって管理保管していたことが認められることから、本件普通預金口座は、滞納会社が自らの預金とする意思で開設したものというべきであり、したがって、本件普通預金口座の預金者は請求人ではなく滞納会社というべきである。
次に、本件定期預金口座の預金者について検討すると、本件定期預金口座の届出印には請求人の印章が用いられており、このことからは、本件定期預金口座は請求人が自らの預金とする意思で開設したとみる余地もある。しかしながら、その原資となった本件普通預金口座の預金者は元々請求人ではないし、本件定期預金口座の開設に当たり、滞納会社が請求人に対し本件普通預金口座に係る払戻請求権を譲渡した事実も、請求人が本件普通預金口座から払戻を受けた金員を自己のものとした上、自らの預金とする意思で本件定期預金口座に入金したなどの特段の事情も認められないことから、本件定期預金口座の預金者は、やはり滞納会社というべきである。
したがって、本件定期預金の払戻請求権は、請求人ではなく、滞納会社に帰属するものであり、請求人の主張には理由がない。
平成12年4月11日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 滞納会社に対する滞納処分として差し押さえられた請求人名義の定期預金の払戻請求権について、預金の原資となっている滞納会社から振り込まれた金員は請求人に対する役員報酬ということはできないこと等から、滞納会社に帰属すると認めるのが相当であるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税徴収法>差押え>財産差押えの通則>差押財産の帰属)
- 差押えに係る債権の譲渡は第三者たる原処分庁に対抗できないとした事例
- 滞納会社の任意整理を受任した滞納会社代理人(弁護士)名義の預金が滞納会社に帰属するとした事例
- 原処分庁が差し押さえた滞納会社名義の普通預金は、滞納会社から任意整理の委任を受けた請求人に帰属する債権であるとの主張を退け、滞納会社に帰属するとした原処分に違法はないとした事例
- 請求人は、差し押さえられた債権に付されていた譲渡禁止特約につき悪意の譲受人と認められるから、滞納者から請求人への当該債権の譲渡は無効であり、当該債権が請求人に帰属することを前提に当該債権の差押処分の取消しを求める請求人の主張は、その前提を欠き採用できないとした事例
- 申告相談時の事情や、事前に差押えをする旨の話がなかったことをもって分割納付継続中に行われた差押処分が違法又は不当であるとはいえないとした事例
- 供託金の取戻請求権及び供託金利息の支払請求権は供託書上の供託者である滞納者に帰属するとした事例
- 滞納処分により債権差押えをする場合、全額差押えを原則としており、被差押債権の範囲を一部とするか否かは徴収職員の裁量に任されていて、その濫用が認められない限り、債権の全額差押えは違法とはいえないとした事例
- 自動車の差押処分について、その財産の帰属を誤ったとした事例
- 差押処分が超過差押え又は無益な差押えに該当しないとした事例
- 滞納会社に対する滞納処分として差し押さえられた請求人名義の定期預金の払戻請求権について、預金の原資となっている滞納会社から振り込まれた金員は請求人に対する役員報酬ということはできないこと等から、滞納会社に帰属すると認めるのが相当であるとした事例
- 不動産の差押処分が無益な差押えに当たるとした事例
- 差押処分の直後に自主納付により滞納国税が完納される可能性は著しく低く、請求人の財産を早期に保全する必要性があったと認められることからすると、差押処分に係る徴収職員の裁量権の行使は差押処分の趣旨及び目的に反して不合理なものであったとはいえず、差押処分は不当なものではないとされた事例(債権の差押処分・棄却・平成27年6月1日裁決)
- 土地と建物の差押えが超過差押えに該当しないとした事例
- 差し押さえた株券に係る権利が滞納者に帰属するとの推定を覆す事実は認められず、また、当該株券に係る権利の取得につき滞納者に悪意又は重過失があったことを認めるべき証拠もないとして、当該権利が自己に帰属する旨の請求人の主張を排斥した事例
- 債権譲渡は民法第467条第2項に規定する第三者対抗要件を具備しておらず、債権譲渡の効力を差押債権者である国に対して主張できないとされた事例
- 差押不動産は一筆の土地で分割できないものであり、滞納国税の額に比較して差押不動産の処分予定価額が合理的な裁量の範囲を超え著しく高額であるとは認められないから、超過差押えに当たらないとした事例
- 請求人は、原処分庁に対して、信義則上、請求人が滞納会社と別異の法人格であることを主張して被差押債権の帰属を争うことができないとした事例
- 企業組合が理事会の承認を受けることなく退任理事に譲渡した協同組合の組合員の持分は企業組合の所有に帰するとしてした差押処分が適法であるとした事例
- 滞納処分により差し押さえられた滞納会社の代表者名義の預託金制ゴルフ会員権につき、取得資金の全額が滞納会社の資金により支払われていること、滞納会社の決算報告書に本件会員権が資産として計上されていること等から、滞納会社に帰属すると認めるのが相当である等とした事例
- 滞納者への所有権移転登記の無効の主張について、民法第94条第2項の規定により原処分庁に対抗できないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。