法人税の申告期限延長の特例適用を受けていることをもって、消費税の期限後申告について、正当な理由があるとはいえないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2000/12/11 [租税特別措置法][登録免許税法の特例] 請求人は、[1]消費税等の確定申告についても、法人税と同様に確定申告期限までに請求人の決算が確定しないし、法人税と消費税等の確定申告相互間には両輪若しくは一体の概念があることから、法人税の確定申告書の提出期限の延長が認められた以上、消費税等の確定申告書の提出期限も延長されるべきであり、[2]本件納付税額は、法定申告期限内に納付しており、国に何らの損害も与えていないし、[3]原処分庁は、請求人が法人税の確定申告書の提出期限延長に関する指導を受けた際、消費税等に関連した説明を何ら行っておらず、また、本件納付税額を納付した際においても、原処分庁は納付の事実をもって確定申告書との照合が可能であり、照合の結果、本件確定申告書がその時点で提出されていないのであるから、期限内に提出するよう指導すべきであったにもかかわらず、何らの指導も行っておらず、原処分は信義誠実の原則に反し、不当な処分である旨主張する。
しかし、[4]消費税の納税義務は、課税資産の譲渡等の時に成立しており、確定した決算に基づくことは、消費税等の確定申告の要件とはなっておらず、また、消費税法には、確定申告書の提出期限の延長を認める旨の規定も設けられていない。さらに、法人税法と消費税法とは別個の規定であるから、法人税の確定申告書の提出期限の延長適用の有無が、消費税等の確定申告書の提出期限に影響を及ぼすものでもない。
また、[5]申告納税方式を採用する国税においては、納税申告が納税義務を確定させる重要な意義を有することから、国税通則法第66条第1項の規定は、申告の適正を担保し申告納税制度を確保するために、納税義務者に課せられた税法上の義務の不履行に対する行政上の措置として無申告加算税を課すものであり、このことは、納付すべき税額が法定納期限内に納付されたことにより左右されるものではない。さらに、[6]請求人は、原処分庁が消費税等に関しては確定申告書の提出期限の延長はない等の適切な指導を行っておれば、本件確定申告書を法定申告期限内に提出しており、原処分を避けることができた旨主張するが、申告納税制度の下における確定申告は、本来、納税者自身の判断と責任においてなされるべきであることから、指導がなかったとしても原処分を違法とすることはできない。租税法規に適合する課税処分について法の一般原理である信義誠実の原則の法理の適用により課税処分を取り消すことができる場合があるとしても、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、信義誠実の原則の法理の適用については慎重でなければならず、信義誠実の原則に反するというには、租税法規の適用における納税者間の公平平等という要請を犠牲にしても、なお当該課税処分を免れさせて、納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならないと解される。
これを本件についてみると、請求人の主張をもって、上記した特別な事情が存するとは認められない。
したがって、原処分が信義誠実の原則に反し不当であるということはできない。
平成12年12月11日裁決
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