代理権のない請求人の父に請求人名義の署名・押印をさせ、提出させた本件各修正申告書は無効で重加算税の取消しを求めるとの請求人の主張を認めず、請求人の父の納税申告手続全般にわたる代理権の存在及び同人による隠ぺい仮装行為を認定した事例
裁決事例(国税不服審判所)
2000/10/23 [国税通則法][附帯税][重加算税][隠ぺい、仮装の認定] 請求人は、調査担当職員が、請求人から代理権を授与されていない請求人の父をして、本件修正申告書に請求人名義の署名、押印をさせ、これを提出させたものであるから、本件修正申告書は無効である旨主張する。
しかしながら、請求人と請求人の父は、平成6年分以降、農業者年金を受給するため、農業所得の申告者の名義を請求人の父から請求人に変えたものの、農作業の従事の状況等確定申告に係る農業所得の金額の計算も、請求人の父が従前と変わらず行っているものというべきであり、さらに、請求人の父は、調査担当職員に対し、請求人名義の貯金通帳を提示し、請求人の各年分の所得税の確定申告書を町役場に赴いて作成、提出し、各年分の確定申告が過少申告となっていたことを自認し、請求人に迷惑を掛けたくないとして、請求人名義の署名、押印をしたこと、本件調査の全過程において請求人の父が対応していたこと、請求人は、農業について父に任せている旨述べたことからすれば、請求人の父は、請求人から、農作業及び確定申告に限って任されていたものとは考えられず、むしろ、農業に係る作業、申告に係る計算並びに確定申告及びその修正までを含めた税務上の全般の事務を任されており、請求人に代わってこれらを行っていたと認めるのが相当であるから、請求人の父が本件修正申告書に請求人名義で署名、押印をして、これを原処分庁に提出した行為の効果は、請求人に帰属するというべきである。
重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて、隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い負担を課することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとする行政上の措置であり、納税義務者本人の刑事責任を追及するものではないことからすれば、その合理的解釈としては、隠ぺい、仮装の行為に出た者が納税義務者本人でなく、その代理人、補助者等の立場にある者で、いわば納税義務者本人の身代わりとして同人の課税標準の発生原因たる事実に関与し、同課税標準の計算に変動を生ぜしめた者である場合を含むものであり、かつ、納税義務者が納税申告書を提出するに当たり、その隠ぺい、仮装行為を知っていたか否かに左右されないものと解すべきである。
これを認定した各事実に照らし判断すると、請求人の父の行った一連の行為は、国税通則法第68条に規定する隠ぺい、仮装に該当するというべきである。
平成12年10月23日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 代理権のない請求人の父に請求人名義の署名・押印をさせ、提出させた本件各修正申告書は無効で重加算税の取消しを求めるとの請求人の主張を認めず、請求人の父の納税申告手続全般にわたる代理権の存在及び同人による隠ぺい仮装行為を認定した事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税通則法>附帯税>重加算税>隠ぺい、仮装の認定)
- 特定退職金共済制度の導入に伴う過去勤務債務分を特別賞与として損金に算入し、従業員の代表者名義の預金を設定した行為が所得金額の隠ぺい又は仮装に当たらないとした事例
- 請求人の法定申告期限経過前の行為及び調査に対する虚偽答弁、虚偽証拠の提出を総合判断すると、本件では、隠ぺい仮装があったと認めることができ、無申告加算税に代わる重加算税の賦課要件を充足すると認定した事例(平成18年分〜平成24年分の所得税の各更正処分、平成18年分、平成20年分及び平成22年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分、平成19年分、平成21年分、平成23年分及び平成24年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分、平20.1.1〜平22.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分、平23.1.1〜平24.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに重加算税の各賦課決定処分・棄却、一部取消し・平成27年10月30日裁決)
- 支払利息に係る借入金が総勘定元帳に記載されておらず、支払利息の経費算入割合が各年で異なる等の事実は存するが、これをもって、隠ぺい又は仮装を認定することはできないとし、重加算税賦課決定処分の一部を取り消した事例
- 所得税の申告に際し、あたかも土地を有償により譲渡したかのように事実を仮装し、その仮装した事実に基づき架空の譲渡損益を計上し、納付すべき税額を過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したことが重加算税の賦課要件を満たすとした事例
- 居住の用に供していない土地建物の所在地に住民票を移し、その住民票を添付して相続税法第21条の6の特例の適用を受けようとしたことが、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例
- 会社員である請求人が、勤務の傍ら個人的に行った取引に係る事業所得の申告を怠ったことに関して、当初から当該事業所得を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動は認められないとした事例
- 海外に送金した事業資金の一部をドル預金に設定し又は為替の売買等に運用し、その収益を会社益金に計上しなかったことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例
- 免税事業者であるにもかかわらず課税事業者であるかのように装い、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている旨の虚偽の記載をして修正申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装の行為」に当たるとした事例
- 相続財産である家族名義預金を申告せず、税務調査においても根拠のない答弁を行った納税者について、国税通則法第68条に規定する重加算税の賦課要件を満たすとした事例(平成23年8月相続開始に係る相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分・一部取消し、棄却・平成27年10月2日裁決)
- 売買契約の内容を仮装して土地重課税の額を過少に申告した行為は仮装隠ぺいに該当するとした事例
- 役務の提供等の完了前に請求書の発行を受ける等、通常と異なる処理を行った行為は、事実を仮装したものと認めた事例(平23.2.1〜平24.1.31の事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分、平23.2.1〜平24.1.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・棄却、一部取消し・平成26年10月28日裁決)
- 相続税の申告に際して、相続財産である被相続人名義の投資信託を申告しなかった行為について、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をしており、重加算税の賦課要件を満たすとした事例
- 存在しない借入金を相続税の課税価格の計算上債務控除して申告したことは、事実の隠ぺい又は仮装に当たるとした事例
- 請求人の申告行為に重要な関係のある相当な権限を有する地位に就いている従業員の行った売上除外について、請求人の行為と同一視すべきであるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
- 仕入先との間の契約の解除に伴う解約料として支払った金員の額を損金の額に算入したことについて、隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められないとした事例(平20.12.1〜平21.11.30までの事業年度の法人税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成27年6月9日裁決)
- 帳簿の記帳を委託されていた者の仮装行為について、請求人の指示又は依頼に基づき架空計上を行ったものと認めることができると判断した事例
- 出張日の記載のない請求書に基づいて計上した旅行費用について、事実の仮装は認められないとした事例
- 使用人の詐取行為における隠ぺい、仮装行為について、請求人自身の行為と同視することはできないとした事例
- 所得を過少に申告するという確定的な意図について、請求人には外部からもうかがい得る特段の行動があったとは認められないから、隠ぺい又は仮装があるとはいえず重加算税を賦課することは相当でないとした事例
- 請求人が木材の輸入取引において仕入に計上した取引額の一部に、本事業年度以外の事業年度の損金の額に算入すべきものがあるが、当該金額については、架空、金額の水増し又は重複計上などによって過大に計上したものとは認められず、損金算入時期の誤りによるものと認められるから、重加算税の賦課要件たる事実を隠ぺい仮装したことには当たらないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。