遺贈の効力は認められるものの、請求人がその効力の有無について疑問を抱いたとしてもやむを得ない客観的な事情が認められるとして、遺贈に関する調停の成立により国税通則法第23条第2項第1号の規定による更正の請求を認めた事例
[国税通則法][納付義務の確定][更正の請求]に関する裁決事例(国税不服審判所)。
裁決事例(国税不服審判所)
2000/06/26 [国税通則法][納付義務の確定][更正の請求]本件遺言は、その文言からみる限りでは、[1]財産を与える旨の具体的な記載がないこと、[2]相続財産に属する特定の財産の処分でないこと、[3]本件遺言書の文言からみると継続的に金銭を給付する金銭債権の遺贈ともみられるが、必ずしも十分な記載がないこと、[4]仮に、継続的に金銭を給付する金銭債権の遺贈だとしても、いつまで金銭を交付すればよいのか、何ら給付期間に関する記載がないこと等遺贈としての効力を巡って、判断の分かれる余地が大きいものであると認めざるを得ない。
ところで、遺言の解釈に当たっての基本的な考え方(最判昭和58年3月18日)を踏まえて本件遺言に係る遺言者である被相続人の真意を推認すると、被相続人は、本件受遺者に恩義を感じ、感謝の気持ちから、本件受遺者に相当額の財産を遺贈する意思を有していたことは確実であり、本件遺言は、本件受遺者を信頼し、屋敷、墓等の管理を依頼するため、将来にわたり受遺者の生活を安定させ得る程度の金銭を取得させる意図の下に記載されたものと認めるのが相当である。
したがって、このような被相続人の真意を踏まえれば、本件遺言は、単なる被相続人の希望の表明と解するのは相当でなく、毎年金銭を継続的に給付することを内容とする金銭債権の遺贈と解するのが相当である 請求人は、相続税の期限内申告の時点で既に承知していた本件遺言書の内容に基づき、本件受遺者に対して実現すべき金銭債権の相続開始時の価額を評価し、それを相続財産の価額から控除して課税価格を計算すべきであったにもかかわらず、これをしなかったにすぎないのであるから、本件調停の成立によりその具体的な内容が確定したことを理由として、当然に国税通則法第23条第2項第1号の規定による更正の請求ができると解するのは相当ではない。
しかしながら、遺言の解釈において、結果的には遺贈の効力を認めるべきではあるものの、納税者がその効力の有無につき疑問を抱いたとしてもやむを得ないと認められる客観的な事情が認められることにより、申告等の時点において、遺贈の実現義務の負担を確実には予想し得ず、相続財産の価額からその義務の金額を控除しないところにより課税価格を計算したことにつき納税者に責めを負わせることが酷と認められる事情が存する場合には、国税通則法第23条第2項第1号の規定による更正の請求を認めるのが相当である。
本件遺言については、文言からみる限りでは、遺贈としての効力を巡って、判断の分かれる余地の大きいものであると認められ、原処分庁も、不確実なもので、そもそも遺言としての効力はないとの判断にたっていることを踏まえれば、請求人が、期限内申告の時点において、遺贈の実現義務の負担を確実には予想し得なかったとしてもやむを得なかったものと認められる。
したがって、本件更正の請求は、国税通則法第23条第2項第1号に該当し、適法なものと解するのが相当である。
平成12年6月26日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 遺贈の効力は認められるものの、請求人がその効力の有無について疑問を抱いたとしてもやむを得ない客観的な事情が認められるとして、遺贈に関する調停の成立により国税通則法第23条第2項第1号の規定による更正の請求を認めた事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税通則法>納付義務の確定>更正の請求)
- 土地譲渡益重課制度の適用除外に該当する旨の申告をしなかった場合には、同制度を適用して法人税額を減額することを求める旨の更正の請求は認められないとした事例
- 国税通則法第23条第2項第1号の「判決」に基づいた更正の請求であると認容した事例
- 登録免許税及び不動産取得税を固定資産の取得価額に算入した会計処理の選択の誤りを理由とする更正の請求は認められないとした事例
- 株主総会において支給が確定した退職金の一部を受領しなかったのは、相続人たる請求人らが退職金の支払義務の一部を免除したものであるから更正の請求は認められないとした事例
- 本件判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決には該当せず、本件判決を基にして、同規定による更正の請求はできないとした事例
- 相続回復請求権は実質的にみて被相続人の遺産であるから、和解の成立時に現に取得した相続回復請求権の範囲内で課税すべきである旨の請求人の主張を排斥した事例
- 相続税の連帯納付義務を免れるためになされた遺産分割協議の合意解除は、後発的な更正の請求事由の一つである「やむを得ない事情によって解除」された場合には当たらないとした事例
- 分離長期譲渡所得等について、保証債務の履行のための譲渡に関する課税の特例を適用すべきであるとしてなされた更正の請求に対し、確定申告書にその旨の記載がなく、また、その旨の記載がなかったことについてやむを得ない事情があるとは認められないとして、当該特例を適用することはできないと判断した事例
- 法人税法犯則事件の判決は国税通則法第23条第2項第1号にいう「判決」に該当しないとした事例
- 社会福祉法人の理事が県等から不正受給した補助金の一部を当該法人からの賞与とした所得税の申告について、当該不正受給に係る刑事事件の判決の確定を理由として更正の請求をすることはできないとした事例
- 国税通則法第23条第2項第1号にいう「判決」に該当しないとした事例
- 土地売買契約解約条項を含む訴訟上の和解は当該土地譲渡所得金額の計算に影響を及ぼさないとした事例
- 平成8年分の所得税の確定申告において、措置法第36条の6第1項の特例の適用を受けた結果、8年分と10年分の所得税の合計額が、適用を受けなかった場合の合計額よりも過大になったとしても、更正の請求はできないとされた事例
- 相続税法第32条第3号に規定する更正の請求をすることができる期間の起算日は、遺留分減殺請求訴訟の和解が成立した日であり、適法な期間内に提出された更正の請求を前提とした同法第35条第3項第1号の規定に基づく原処分も適法であるとした事例
- 申告行為の無効は国税通則法第23条及び相続税法第32条の更正の請求の事由とすることはできないとした事例
- 出資口の譲渡について、売買契約の要素に錯誤があるとして契約解除したことが、国税通則法第23条第2項に規定する「やむを得ない理由」に該当しないとした事例
- 個別対応方式における用途区分の方法に誤りがあったとしてされた更正の請求について、確定申告において採用した用途区分の方法に合理性がある場合には、国税通則法第23条第1項第1号の適用はないとした事例
- 刑事判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決等」には当たらないとした事例
- 「更正の申出に対してその更正をする理由がない旨のお知らせ」は国税に関する法律に基づく処分に該当しないとした事例
- 本件の訴訟上の和解は、国税通則法第23条第2項第1号の更正の請求の事由には該当しないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。