二以上の家屋が併せて一構えの家屋であると認められるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等の主観的事情は二次的に考慮すべき要素にすぎないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2009/11/20 [租税特別措置法][所得税法の特例][譲渡所得の特例][居住用財産の譲渡所得の特別控除] 租税特別措置法施行令第20条の3第2項及び第23条第1項は、個人がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、本件特例の適用対象となる家屋は、主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限る旨規定しているところ、本件特例の適用対象となる家屋の判定に当たり、二棟以上の家屋が併せて一構えの家屋であるといえるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等の主観的事情は二次的に考慮すべき要素にすぎないものと解するのが相当である。したがって、単にこれらの家屋がその者及びその者と同居することが通常である親族等によって機能的に一体として居住の用に供されているのみでは不十分であり、家屋の構造、規模、設備等の状況から判断していずれか又はそれぞれが独立の居住用家屋としては機能できないものでなければならない。そうすると、これらの家屋がそれぞれ独立の家屋としての機能を有する場合には、これらの家屋を併せて一構えの家屋であるとは認められず、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限り、本件特例の適用対象となるというべきである。
本件家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離並びに通常考えられる用法及び機能等を考慮すれば、本件A家屋と、本件BC家屋とは、それぞれ別個独立の家屋であると認められ、これらの各家屋を併せて一構えの家屋であるということはできない。そして、請求人は、妻及び長男と共に本件A家屋で日常生活を営んでいたのに対し、本件BC家屋は、もともと飲食店の店舗等として使用し、廃業後は、一部に荷物等をおいて物置に使用していたにすぎないから、請求人が主として居住の用に供していた家屋は本件A家屋であると認められ、本件BC家屋は本件特例の適用対象となる居住用家屋には該当しない。また、租税特別措置法施行令第20条の3第2項及び第23条第1項は、家屋のうちにその居住の用以外の用に供している部分があるときは、その居住の用に供している部分に限り、本件特例の適用がある旨規定しているところ、本件A家屋の2階の3室のうち、Kに賃貸していた1室及びLに賃貸し、同人の退去後に使用していなかった1室は、本件譲渡の以前に貸室とされており、請求人がこれを居住の用に転用し、ある程度の期間継続して居住の用に供していたとは認められないから、当該部分は「居住の用に供している部分」に当たらない。
したがって、本件A家屋の1階の全部及び2階の1室並びに本件A家屋の敷地の用に供されている本件借地権のうちその居住の用に供していた部分に限り、本件特例を適用するのが相当である。
平成21年11月20日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
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