請求人らが相続税の申告において、不動産鑑定士の鑑定評価等(本件鑑定評価等)に基づいて評価額を算定した土地及び建物については、財産評価基本通達(評価通達)に定める評価方法に拠ることのできない特別の事情があるとは認められず、本件鑑定評価等には客観的合理性を直ちに肯定することができない部分があることから、評価通達に定める評価方法によるべきであるとした事例(平成26年12月相続開始の相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成30年10月17日裁決)
裁決事例(国税不服審判所)
[消費税法][申告、更正の請求の特例]《要旨》 請求人らは、本件鑑定評価等による鑑定評価額等をもって相続税の申告をした土地(本件土地)及び建物(本件建物)について、本件土地は、標準的な画地の地積の2倍以上の規模があり、標準的な画地に比して市場性が劣ることなど、本件建物は、老朽化が激しく、それぞれの敷地の最有効使用の観点から取り壊すべきものであることなどの減価要因があるが、評価通達には、これらの点を反映させる定めがないことから、評価通達の定める評価方法によって評価された原処分庁が主張する評価額(原処分庁主張価額)は本件土地及び本件建物の時価を超え、原処分には本件土地及び本件建物の価額を過大に評価した違法がある旨主張する。 しかしながら、地積規模の大きな土地であっても、土地の取引価格は、最終的には取引当事者の合意によって定まるものであることからすれば、当然に当該土地の取引価格が低下するものではなく、本件建物は、一般的な合理性を肯定され、適正な時価と推認される固定資産税評価額に依拠して評価されている。したがって、請求人らの主張するような事情をもって、本件土地及び本件建物に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性が失われているということはできないし、評価通達の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があると認めることはできず、本件鑑定評価等には客観的合理性を直ちに肯定することができない部分があることからすれば、評価通達の定める評価方法により評価した原処分庁主張価額が時価を超え、過大に評価している違法はない。
《参照条文等》 相続税法第22条 地方税法第341条、第403条
《参考判決・裁決》 東京高裁平成27年12月17日判決(税資265号順号12771) 東京地裁平成27年6月25日判決(税資265号順号12683) 平成29年4月7日裁決(裁決事例集?107)
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