本件相続によりF国で課された相続税額のうち相続税法第20条の2の規定により控除できるのは、F国内に所在する相続財産に対応する部分の税額であり、これを超える部分の税額については控除できないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2008/04/17 [消費税法][申告、更正の請求の特例] 相続税法第20条の2の規定(以下「本件規定」という。)は、無制限納税義務者が相続により国外財産を取得した場合、国外財産についてその国外財産の所在地国の法令により相続税に相当する税が課されたときには、その国外財産について、日本とその国外財産の所在地国の両国において二重に相続税が課税されることとなることから、その所在地国の法令により相続税に相当する税額を、当該無制限納税義務者の相続税額から控除することにより国際間の二重課税の調整を図ることにあると解される。
そして、この二重課税の調整がどこまで及ぶかについては、本件規定が「当該国外財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたときは」と規定していることからすると、この規定は財産の所在地国の法令により相続税に相当する税が課されたときの二重課税の調整をその対象とするものであって、財産の所在地国以外の国の法令により相続税に相当する税が課されたときの二重課税の調整についてまでその対象とするものではないと解されている。
本件の場合、本件被相続人は相続開始日においてF国に住所を有しており、F国の相続税は、相続開始日に被相続人の住所がF国内にある場合には全世界課税を採用していることから、本件相続に係る相続財産(F国、R国、S国、T国に所在)のすべてがF国の相続税の課税対象となっており、これを上記の本件規定の解釈にあてはめてみると、日本の相続税額の計算上、F国で課された相続税額のすべてが税額控除の対象となるものではなく、F国で課された相続税額のうちF国に所在する財産に対応する部分についてのみ税額控除の対象とされるものと解するのが相当である。
また、本件規定以外に相続税額の二重課税を調整するための法令の規定はなく、日本とF国との間には、二重課税を回避するための相続税に関する租税条約の規定もないので、F国で課された相続税額のうちF国所在財産に対応する部分を超える部分の税額については、相続税額の計算上、税額控除の対象とすることはできない。
平成20年4月17日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 本件相続によりF国で課された相続税額のうち相続税法第20条の2の規定により控除できるのは、F国内に所在する相続財産に対応する部分の税額であり、これを超える部分の税額については控除できないとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(消費税法>申告、更正の請求の特例)
- 土地及び建物に対する被相続人の共有持分は単なる名義上のものにすぎないとする請求人の主張を排斥した事例
- 土地(私道)が不特定多数の者の通行の用に供されていたとは認められないからその土地の価額は自用宅地の価額の60パーセントに相当する金額により評価することが相当であるとした事例
- 被相続人が毎年一定額を入金していた未成年の子名義の預金口座に係る預金は相続財産に含まれないと認定した事例
- 相続により取得した土地は、いわゆるマンション適地等に該当するので、財産評価基本通達24−4に定める広大地に該当しないとした事例
- 1. 請求人が土地の価額に影響を及ぼすと主張する諸要因は、路線価額に折込み済みであるとした事例2. 借地権の目的となっている宅地は、評価通達によって評価すべきであり、収受している地代を基にして収益還元法によって評価すべきでないとした事例
- 使用貸借により貸し付けている土地の評価単位について判断した事例(平成23年6月相続開始に係る相続税の各更正の請求に対する各更正処分・一部取消し、棄却・平成28年12月20日裁決)
- 取引相場のない出資を純資産価額方式により評価するに当たり、割賦販売に係る未実現利益の金額は控除できないとした事例
- 相続税法第34条第1項が規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から控除すべき金額は、相続等により財産を取得することに伴って現実に支払義務が生じた金額と解することが相当であるとした事例(連帯納付義務の各納付通知処分・棄却)
- 地価の急落により時価が路線価を下回る、いわゆる逆転現象が生じているとして、鑑定評価額による申告がなされたが、相続開始日における時価は相続税評価額を上回っていることが認められるとして、原処分庁が相続税評価額により評価したことを相当と認めた事例
- 配偶者の税額軽減に係る承認申請の却下処分を適法とした事例
- 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合に利益を受けたか否かは、現物出資の前後における出資の価額の差額によって判断すべきであるとした事例
- 有価証券及び貸付金債権が請求人らの相続財産であるとした事例
- 取引相場のない株式の評価を純資産価額方式で行うに当たって、評価会社が土地収用に伴い取得した代替資産の価額は、圧縮記帳後の価額ではなく財産評価基本通達の定めにより評価した価額によるのが、また、評価会社が保有する上場会社が発行した非上場の優先株式の価額は、その上場会社の株式の価額ではなく払込価額により評価した価額によるのが相当であるとして、請求人の主張を排斥した事例
- 所有権の帰属につき係争中の不動産は相続税延納担保として不適格であるとしてされた延納申請却下処分は、適法であるとした事例
- 前住職から請求人への資金移動により相続税法第66条第4項に規定する贈与者である前住職の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果になるとは認められないとした事例
- 相当の地代を支払っている場合の借地権は、贈与財産である株式の純資産価額の計算上、株式の発行会社の資産の部に算入するとした事例(平成24年分贈与税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成27年3月25日裁決)
- 貸付金債権につきその回収が不可能又は著しく困難と見込まれる事実は認められないのでその元本価額で評価すべきとした事例
- 相続人以外の者が市街化調整区域内の農地の特定遺贈を受けた場合において、受遺者の責めに帰さない事情により当該農地が非農地化されたときには、農地法上の許可を受けていなくても、非農地となった時点において所有権移転の効力が生ずるというべきであるから、受遺者については、その非農地化の事実を知った日をもって相続税法第27条第1項に規定する「相続開始があったことを知った日」と解すべきであるとした事例
- 相続税法第34条第1項の連帯納付義務には、補充性がなく、告知は不要であり、本件連帯納付義務は徴収権の消滅時効等により消滅していないとされた事例
- 医療法人の出資持分の評価に際し、相続開始時点において既に退社した社員が出資金払戻請求権を行使していない場合であっても、当該出資持分については、当該退社社員が退社する直前の出資持分の総口数から当該退社社員が有していた出資持分の口数を控除した後の口数を総口数として、財産評価基本通達194−2の定めにより評価するものとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。