相続税法第20条の2の規定(以下「本件規定」という。)は、無制限納税義務者が相続により国外財産を取得した場合、国外財産についてその国外財産の所在地国の法令により相続税に相当する税が課されたときには、その国外財産について、日本とその国外財産の所在地国の両国において二重に相続税が課税されることとなることから、その所在地国の法令により相続税に相当する税額を、当該無制限納税義務者の相続税額から控除することにより国際間の二重課税の調整を図ることにあると解される。
そして、この二重課税の調整がどこまで及ぶかについては、本件規定が「当該国外財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたときは」と規定していることからすると、この規定は財産の所在地国の法令により相続税に相当する税が課されたときの二重課税の調整をその対象とするものであって、財産の所在地国以外の国の法令により相続税に相当する税が課されたときの二重課税の調整についてまでその対象とするものではないと解されている。
本件の場合、本件被相続人は相続開始日においてF国に住所を有しており、F国の相続税は、相続開始日に被相続人の住所がF国内にある場合には全世界課税を採用していることから、本件相続に係る相続財産(F国、R国、S国、T国に所在)のすべてがF国の相続税の課税対象となっており、これを上記の本件規定の解釈にあてはめてみると、日本の相続税額の計算上、F国で課された相続税額のすべてが税額控除の対象となるものではなく、F国で課された相続税額のうちF国に所在する財産に対応する部分についてのみ税額控除の対象とされるものと解するのが相当である。
また、本件規定以外に相続税額の二重課税を調整するための法令の規定はなく、日本とF国との間には、二重課税を回避するための相続税に関する租税条約の規定もないので、F国で課された相続税額のうちF国所在財産に対応する部分を超える部分の税額については、相続税額の計算上、税額控除の対象とすることはできない。
平成20年4月17日裁決
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