土地等の売買契約中に売主に相続が開始した場合における相続税の課税財産は、相続開始後に相続人が当該売買契約を解除した場合であっても、売買残代金請求権とするのが相当であるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2009/09/16 [相続税法][相続税の課税財産の範囲] 相続税の納税義務は、相続による財産を取得した時、すなわち、相続開始の時に成立するものと解される。そして、相続により取得した財産の価額の合計額をもって相続税の課税価格とすることとされており、相続により取得した財産の価額は、原則として、当該財産の取得の時における時価によることとされていることから、相続開始後の当該財産に生じた事情は、制度の上の措置がなされている場合など、これを考慮すべき特段の事情と認められない限り考慮されないこととなる。また、相続開始時に売買契約が締結されている土地等について、相続税の課税対象となる財産を判定するに当たっては、相続開始の時において、売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認められるか否かの観点から判定するのが相当と解される。そうすると、このようにして判定した相続税の課税対象となる財産について、相続開始後に何らかの事情が生じたとしても、相続開始の時において売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認めることが不相当であるというべき特段の事情でない限り、その事情は考慮されるものではないと解される。
本件売買契約の各当事者は、本件売買契約の実現に向け、本件売買契約書に定められた各条項を誠実に履行し、本件相続の開始時において、本件各土地建物の引渡予定日及び売買残代金の決済予定日の決定していたことが認められる。このように、本件相続の開始時において、本件売買契約が履行されることが確実であると認められるような状況下にあっては、本件各土地建物の所有権が本件被相続人に残っているとしても、もはやその実質は本件売買契約に係る売買残代金請求権を確保するための機能を有するにすぎないものといえ、請求人らが相続した本件各土地建物は、独立して相続税の課税財産を構成しないというべきである。そして、請求人らが本件相続の開始後に行った本件売買契約の解除は、本件被相続人から本件売買契約に係る契約上の地位を承継した請求人らの意思によるものであり、当該解除をもって、相続開始時において売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認めることが不相当であるというべき特段の事情ということはできないから、本件相続の開始時において、売買残代金請求権は確定的に本件被相続人に帰属していると認めるのが相当である。
そうすると、本件相続に係る相続税の課税財産とすべき財産は、本件売買契約に係る売買残代金請求権である。
平成21年9月16日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 土地等の売買契約中に売主に相続が開始した場合における相続税の課税財産は、相続開始後に相続人が当該売買契約を解除した場合であっても、売買残代金請求権とするのが相当であるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(相続税法>相続税の課税財産の範囲)
- 親族間で賃貸借契約書及び売買契約書が作成されていた土地について、契約成立の事実は認められず、その所有者は被相続人であるとした事例
- 被相続人以外の者の名義である財産について、その財産の原資の出捐者及び取得の状況、その後の管理状況等を総合考慮して、相続開始時において被相続人に帰属するものと認定した事例
- 無記名の本件貸付信託及び本件割引債は被相続人に帰属し、相続財産に当たると認定した事例
- 相続人らの名義の株式等について、相続財産と認定した事例
- 香港に所在する財産について、相続税の課税財産と認定するとともに、その時価を香港政庁に提出された遺産宣誓書に記載されている各財産の価額の邦貨換算額により評価した原処分を相当と認めた事例
- 請求人ら名義の関係会社の株式は相続財産と、請求人ら名義の定期預金は請求人らが生前に贈与により取得したものと認定した事例
- 本件株式は、すべて被相続人固有の資金によって取得され、かつ、すべて同人名義で保護預かり又は登録されていることから、被相続人に帰属するものと認められるとした事例
- 借地権者の地位に変更がない旨の申出書を提出後その土地の所有権者が建物を建て替えた場合その借地権は所有権者に無償で返還され消滅している旨の請求人の主張を排斥した事例
- 本件土地は現時点においてその所在を確定できないから相続財産に含まれないとした事例
- 相続人又はその家族名義の預金、株式及び割引債について、生前贈与された資金の運用により取得されたものではなく、被相続人が請求人に指示して管理運用していたもので、その一部を除き相続財産であると認定した事例
- 有価証券及び貸付金債権が請求人らの相続財産であるとした事例
- 所得税の課税処分取消訴訟継続中に被相続人が死亡した場合、相続人である請求人は訴訟上の権利、すなわち過納金の還付を求める権利を相続により取得したとした事例
- 被相続人の家族名義の預貯金等について、その管理状況、原資となった金員の出捐者及び贈与の事実の有無等を総合的に勘案したところ、被相続人に帰属する相続財産とは認められないとした事例(平成21年12月相続開始に係る相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分・全部取消し・平成25年12月10日裁決)
- 相続開始直前に銀行預金から引き出した現金について、相続開始時における手持現金と認定した事例
- 貸金庫内に保管されていた株券は、貸金庫の開閉状況、株券の管理・処分の決定方法等の状況からみて、本件被相続人名義分も含めて、その全部が、本件被相続人の被相続人である父親の未分割遺産であるから、そのうち本件被相続人の法定相続分相当のみが本件被相続人の相続財産であると認定した事例
- 被相続人の雇用主である会社が契約した生命保険契約による支払を受けた保険金について、相続税法第3条第1項第1号に規定する保険金に該当するものとした事例
- 被相続人の相続開始数日前に相続人によって引き出された多額の金員は、被相続人によって費消等された事実はないことから相続財産であると認定した事例
- 特定遺贈を受けた財産を遺産分割協議書に記載したことが遺贈の放棄に当たるとした事例
- 酒類販売のための事業用財産は生前贈与により取得したものではなく相続財産であるとした事例
- 宅地の売買契約が成立して特約による所有権移転時期前に買主に相続が開始した場合、相続財産は所有権移転請求権であるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。