相互会社が株式会社に組織変更した場合の相続税の取扱い|相続税・贈与税
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
相互会社であるA社は、平成○+1年4月1日を目処に株式会社となり、その後株式の上場を予定しているとのことです。
当該会社の社員である者は、同社が株式会社となった場合には、株式の割当てを受けることができるとのことですが、仮にその者が平成○+1年4月1日前に死亡した場合、相続税の課税財産はどのようになり、その評価はどのようになるのでしょうか。
(設例)A相互会社の株式の上場までのスケジュールは次のとおり。
イ 平成○年3月31日 | 補償基準日(※) |
(※) 補償基準日の社員について、一定の計算を行い、寄与分が算出された社員は、組織変更日に株式の割当てを受け、株主となります。 | |
ロ 平成○+1年△月×日 | 内閣総理大臣(金融庁長官)の組織変更の認可 |
ハ 平成○+1年△月△日 | 金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日 |
ニ 平成○+1年□月△日 | 株式の上場に伴う売出価格の決定 |
ホ 平成○+1年4月1日 | 組織変更日(株式会社化効力発生日)及び株式の上場の日 |
【回答要旨】
組織変更日に株式の割当てを受けることになる社員(以下「補償対象者」といいます。)について、内閣総理大臣(金融庁長官)の組織変更の認可を受けた日(平成○+1年△月×日)(上記ロ)から組織変更日(平成○+1年4月1日)(上記ホ)の前日(平成○+1年3月31日)までの間に相続が開始した場合には、株式の割当てを受けることに関する権利が相続税の課税財産となるものと考えられます。
この場合、株式の割当てを受けることに関する権利は、補償対象者について、
金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日(平成○+1年△月△日)(上記ハ)から上場の日(上記ホ)の前日(平成○+1年3月31日)までの間に相続の開始があった場合には、公開価格(売出価格)により、
内閣総理大臣(金融庁長官)の組織変更の認可を受けた日(平成○+1年△月×日)(上記ロ)から金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日(平成○+1年△月△日)(上記ハ)の前日までの間に相続の開始があった場合には、公開価格(売出価格)の70%相当額により
評価することが相当と考えられます。
また、1株以上の株式の割当てを受ける補償対象者のうち金銭で交付を受けることを希望する者及び端株が生じる補償対象者には、株式の交付に代えて金銭を交付することが予定されていますが、上記と同様に評価することが相当と考えられます。
(理由)
株式の割当てを受けることに関する権利(以下「本件権利」といいます。)の相続税法上の取扱いは、相続税法第2条に規定されている相続税の課税財産とは、相続又は遺贈により取得した財産をいうところ、この財産とは、相続税法基本通達11の2-1に「金銭に見積ることができる経済的価値のあるすべてのものをいう」こととされていますので、次のとおりになると考えられます。
1 相続税の課税財産となる本件権利について
相互会社が株式会社に組織変更をするためには、保険業法において、社員総会(総代会を設けているときは総代会)での組織変更計画の承認、内閣総理大臣(金融庁長官)の組織変更の認可等の各手続きが必要とされており、組織変更日等を組織変更計画において定めたとしても、内閣総理大臣(金融庁長官)の組織変更の認可を受けなければ、その効力は生じないこととされています(保険業法96の10)ので、当該認可前においては、組織変更の効力が生じ得ないものである一方、当該認可後は、組織変更の効力が生じ得る状況となりますので、本件権利は相続税の課税財産となる経済的価値のあるものとすることが適当と考えられます。
したがって、内閣総理大臣(金融庁長官)の組織変更の認可を受けた日から組織変更日の前日までの間に、補償対象者に相続が開始した場合には、本件権利は相続税の課税財産となるものと考えられます。
2 本件権利の評価について
財産評価基本通達には、本件権利の評価方法について定めがありませんが、本件権利は、組織変更計画によって割当てが定められた株式の数に応じて組織変更日に株式の割当てを受け、株主となることのできる権利ですから、同通達168(4)に定める「株式の割当てを受ける権利」に類似するものといえますので、本件権利の評価は、次のとおりになると考えられます。
(1) 金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日から上場の日の前日までの間に相続の開始があった場合
「株式の割当てを受ける権利」の価額は、その権利の発生している株式について、財産評価基本通達に定める評価方法(同通達174など)により評価した価額に相当する金額から割当てを受けた株式1株につき払い込むべき金額を控除した金額によって評価します(同通達190)。
また、「公開途上にある株式」とは、金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式をいい、株式の上場又は登録に際して、株式の公募又は売出しが行われる場合における公開途上にある株式の価額は、その株式の公開価格によって評価することとなります。
したがって、金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日から組織変更日(株式の上場の日)の前日までの間に相続の開始があった場合における本件権利の価額は、「公開途上にある株式」と経済的本質が同様のものと考えられますので、公開価格(売出価格)により評価することが相当と考えられます。
(2) 内閣総理大臣(金融庁長官)の組織変更の認可日から金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日の前日までの間に相続の開始があった場合
内閣総理大臣(金融庁長官)の組織変更の認可日から金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日の前日までの期間は、上記と同様に公開価格(売出価格)を基礎として評価することが相当と考えられますが、当該期間は、公開途上にある株式として評価する期間に相当する期間よりも前であることから、一定のしんしゃくが必要と考えられます。そのため、「未収天然果実」の評価方法(同通達209)に準じ、組織変更日に株式が上場する蓋然性が極めて高いことからそのしんしゃく割合を最低の30%として評価することが相当と考えられます。
したがって、当該期間における本件権利は、公開価格(売出価格)の70%相当額により評価することが相当と考えられます。
(3) 補償対象者の相続人が割り当てられた株式の交付に代えて本件権利に係る金銭の交付を受けた場合
1株以上の株式の割当てを受ける補償対象者のうち金銭で交付を受けることを希望する者や端株が生じる補償対象者の相続人には、割り当てられた株式の交付に代えて金銭が交付されることとなりますが、当該金銭の交付を受ける場合にあっても、当該相続人が相続により取得する財産は、本件権利となりますので、交付を受けた金銭によって評価するのではなく上記(1)又は(2)と同様に評価することが相当と考えられます。
【関係法令通達】
相続税法第2条
相続税法基本通達11の2-1
財産評価基本通達168(2)ロ、168(4)、174(2)イ、190、209
保険業法第90条、第96条の10
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/sozoku/02/11.htm
関連する質疑応答事例(相続税・贈与税)
- 受贈者が外国に居住している場合の相続時精算課税の適用
- 同一年中に複数の者に贈与した場合
- 相続時精算課税適用財産について評価誤り等が判明した場合の相続税の課税価格に加算される財産の価額
- 相続開始の年に被相続人から贈与を受けた宅地に係る小規模宅地等の特例の適用の可否
- レジャー農園の用に供されている農地
- 被相続人の準確定申告に係る還付金等
- 人身傷害補償保険の後遺障害保険金を定期金により受け取っていた者が死亡した場合に支払われる一時金
- 共有家屋(貸家)の敷地の用に供されていた宅地等についての小規模宅地等の特例の選択
- 特例適用農地の譲渡代金の一部について代替農地の取得の見積承認申請があった場合
- 相続放棄と相続税の納税猶予
- 市民菜園として貸し付けている農地
- 被相続人の共有する土地が被相続人等の居住の用と貸家の敷地の用に供されていた場合の小規模宅地等の特例
- 代襲相続権の有無(1)
- 被相続人が外国人である場合の未分割遺産に対する課税
- 住宅取得等資金の贈与を受けた者が年の中途で出国した場合の住宅取得等資金の贈与の特例の適用の可否
- 納税猶予の対象となる農地(1)
- 国外財産の贈与を受けた場合の相続時精算課税の適用
- 確定申告書提出後に死亡した被相続人に係る還付加算金の課税関係
- 医療法人の出資持分の変更があった場合
- 未成年者が農業相続人となった場合の農業所得の申告
項目別に質疑応答事例を調べる
当コンテンツは、国税庁ホームページ利用規約に基づき、国税庁:質疑応答事例のデータを利用して作成されています。