免税事業者であるにもかかわらず課税事業者であるかのように装い、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている旨の虚偽の記載をして修正申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装の行為」に当たるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/04/19 [国税通則法][附帯税][重加算税][隠ぺい、仮装の認定]《ポイント》 この事例は、重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装の行為」の該当性の判断に当たり、平成12年7月3日付課消2−17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」の第2のの5の趣旨を明確にした上で、その該当性を認めたものである。
《要旨》 請求人は、基準期間の課税売上高は、当該課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実ではないから、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているかのように装った同期間の修正申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件である隠ぺい又は仮装行為に当たらず、また、平成12年7月3日付課消2−17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」の第2のの5の定め(本件留意事項)に準じて解釈すれば、本件は「重加算税を課すべきこととならない」ときに該当するから、重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する事実の隠ぺいとは、売上除外、証拠書類の廃棄等、課税要件に該当する事実の全部又は一部を隠すことをいい、事実の仮装とは、架空仕入れ、架空契約書の作成、他人名義の利用等、存在しない課税要件事実が存在するように見せかけることをいうと解するのが相当であるところ、請求人が免税事業者であるか課税事業者であるかは、消費税等の納税義務者に該当するか否かという課税要件事実そのものであり、不正に消費税の還付を受けるため、免税事業者であるにもかかわらず課税事業者であるかのように装って確定申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件を充足する。
なお、本件留意事項は、基準期間の隠ぺい又は仮装行為が、客観的にみて課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい又は仮装行為と評価できない場合には、重加算税の賦課要件を満たさないことに留意すべき旨を定めたものにすぎないと解すべきであり、基準期間の課税売上高の仮装行為が、課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の仮装に該当すると評価できる本件は、本件留意事項が定める場合とは前提を異にするというべきである。
《参照条文等》 国税通則法第68条第1項 平成12年7月3日付課消2−17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 免税事業者であるにもかかわらず課税事業者であるかのように装い、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている旨の虚偽の記載をして修正申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装の行為」に当たるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税通則法>附帯税>重加算税>隠ぺい、仮装の認定)
- 不動産取引に当たり売買価額を分散させるために虚偽の売買契約書等を作成し事実を仮装したとの原処分庁の主張を排斥して重加算税の賦課決定処分の一部を取り消した事例(平22.9.1〜平23.8.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成25年11月13日裁決)
- 第三者を介在させて買換資産を高価で取得し、その取得価額を基に圧縮損を計上したことは、国税通則法第68条の隠ぺい又は仮装に当たるとした事例
- 所得税の申告に際し、あたかも土地を有償により譲渡したかのように事実を仮装し、その仮装した事実に基づき架空の譲渡損益を計上し、納付すべき税額を過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したことが重加算税の賦課要件を満たすとした事例
- 相続財産の申告漏れの一部について、請求人がその存在を認識していたとまでは認められず、重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例
- リース取引物件の内容仮装は、隠ぺい又は仮装の行為に当たるとした事例
- 本件相続開始直後、請求人自らが被相続人名義の証書式定額郵便貯金を解約して、新たに開設した請求人ら名義の通常郵便貯金口座に預入し、その存在を確知しているにもかかわらず、後に開設した相続財産管理口座には被相続人名義の通帳式郵便貯金を解約した金額のみを預入し、証書式定額郵便貯金を除外して相続税の確定申告をした請求人の行為は、事実を隠ぺいした場合に該当するとした事例
- 請求人が、法定申告期限までに相続税の申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例(平成23年4月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成26年4月17日裁決)
- 会社員である請求人が、勤務の傍ら個人的に行った取引に係る事業所得の申告を怠ったことに関して、当初から当該事業所得を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動は認められないとした事例
- 委託した工事が課税期間中に完了していないことを認識していたにもかかわらず、工事業者に対して課税期間中の請求書の発行を依頼した上、工事が課税期間中にあったものとして消費税等の納付すべき税額を算出していた場合に、税額の基礎となる事実を仮装していたものと認定した事例
- 海外に送金した事業資金の一部をドル預金に設定し又は為替の売買等に運用し、その収益を会社益金に計上しなかったことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例
- 課税仕入れに計上した取引は架空であるとした事例
- 重加算税の賦課要件を充足するためには、過少申告行為とは別に隠ぺい又は仮装と評価すべき行為の存在を必要としているものであると解されるところ、原処分庁は隠ぺい又は仮装であると評価すべき行為の存在について何らの主張・立証をしておらず、隠ぺい又は仮装の事実を認めることはできないとした事例
- 役務の提供等の完了前に請求書の発行を受ける等、通常と異なる処理を行った行為は、事実を仮装したものと認めた事例(平23.2.1〜平24.1.31の事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分、平23.2.1〜平24.1.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・棄却、一部取消し・平成26年10月28日裁決)
- 請求人の事業、取引の内容を詳細に認定した上で、関係者の供述の信用性の有無を判断し、隠ぺい・仮装の事実を認めた事例
- 会社の休業中における土地譲渡収入を代表者個人名義預金に入金したことが事実の隠ぺいに当たらないとした事例
- 公表の預金口座とは別に請求人名義の預金口座を開設して公表外で管理し、そこに売上金の一部を入金していたことなどから隠ぺい行為を認定した事例
- 請求人の申告行為に重要な関係のある相当な権限を有する地位に就いている従業員の行った売上除外について、請求人の行為と同一視すべきであるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
- 取引及び登記等に事実の隠ぺい又は仮装が認められず、調査時にも事実の把握を困難にさせるような特段の行為が認められないなどとして、重加算税の賦課要件は満たしていないとした事例
- 使用人の詐取行為における隠ぺい、仮装行為について、請求人自身の行為と同視することはできないとした事例
- 隠ぺい行為と評価できる状況を是正する措置が採られた前後の期間があるにもかかわらず、是正する措置を採らなかった期間分について、隠ぺい行為と評価できる事実に基づき申告書を提出した場合に、重加算税の賦課要件を満たすとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。