第68条関係 不動産の差押えの手続及び効力発生時期|国税徴収法

[第68条関係 不動産の差押えの手続及び効力発生時期]に関する基本通達。

基本通達(国税庁)

法第68条の適用を受ける財産

1 法第68条の適用を受ける財産は、次に掲げる財産(以下「不動産」という。)である。

(1) 民法上の不動産 土地及び土地の定着物

(2) 不動産を目的とする物権(所有権を除く。) 地上権及び永小作権

(3) 不動産とみなされる財産 立木法による立木、工場財団、鉱業財団、漁業財団、道路交通事業財団、港湾運送事業財団及び観光施設財団

(4) 不動産に関する規定の準用がある財産 鉱業権、特定鉱業権、漁業権、入漁権、採石権及びダム使用権

(5) 不動産として取り扱う財産 鉄道財団、軌道財団及び運河財団

民法上の不動産

(土地及び土地の定着物)

2 1の(1)に掲げる「土地及び土地の定着物」とは、民法第86条第1項《不動産の定義》に規定する不動産をいい、なお次のことに留意する。

(1) 土地の所有権は、法令の制限内においてその土地の上下に及ぶが(民法第207条)、鉱業法において、鉱物として列挙されたもので、未採掘のものを取得する権利等は国により賦与されるので、その権利の賦与がない限り、その鉱物には土地の所有権が及ばないこと(鉱業法第2条、第3条)。

(2) 土地の定着物とは、土地に付着させられ、かつ、取引上の性質としてその土地に継続的に付着させられた状態で使用されるもの(例えば、建物その他の工作物、植栽された樹木、大規模な基礎工事によって土地に固着させられた機械等)をいい、原則として、土地の一部として土地の差押えの効力が及ぶこと。ただし、建物及び立木法による立木は、取引上及び登記上、土地とは別個の不動産として取り扱われ(不動産登記法第2条第1号、第5号、立木法第1条、第2条)、その差押えには別個の差押手続を必要とすること。

(注) 登記することができない土地の定着物は、民事執行の手続の上では、動産執行の対象となる(執行法第43条第1項、第122条第1項)。

(3) 仮植中の樹木、簡単な方法で土地に据え付けた機械、灯ろう等は独立の動産であって、土地の定着物ではないこと。

(4) 工場抵当法第2条《財団を組成しない工場の土地、建物の抵当権》の規定による工場抵当権の目的となっている土地の備付物には、その土地に対する差押えの効力が及ぶこと(同法第7条第1項。4参照)。

(注) 「工場抵当権」とは、工場抵当法第2条の規定により、工場所有者が工場に属する土地又は建物(工場財団を組成する土地又は建物を除く。)の上に設定した抵当権をいう。
 なお、抵当権者の同意を得て付加物を分離し又は備付物の備付けを廃止したときは、抵当権はその物について消滅し(同法第6条)、その物についての差押えの効力も及ばない(同法第7条)が、抵当権者の同意を得ないで分離した付加物又は備付けを廃止した備付物は、第三取得者に引き渡された後においても民法第192条から第194条まで《即時取得等》に定める即時取得に関する規定の適用がない限り抵当権の効力は失われず(工場抵当法第5条第2項)、差押えの効力も及ぶことから、これらを一括して換価することができるものであることに留意する。

(建物)

3 1の(1)に掲げる「土地の定着物」に該当する建物とは、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいい(不動産登記規則第111条)、取引上及び登記上、土地から独立した不動産とされ、土地とは別個に差し押えなければならない。
 なお、次のことに留意する。

(1) 不動産登記手続上、建物の認定に当たっては、次に掲げる例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定するものとされている(不動産登記事務取扱手続準則(平成17.2.25付民事二第456号法務省民事局長通達)第77条)。

イ 建物として取り扱うもの

(イ) 停車場の乗降場及び荷物積卸場(ただし、上屋を有する部分に限る。)

(ロ) 野球場、競馬場の観覧席(ただし、屋根を有する部分に限る。)

(ハ) ガード下を利用して築造した店舗、倉庫等の建造物

(ニ) 地下停車場、地下駐車場及び地下街の建造物

(ホ) 園芸、農耕用の温床施設(ただし、半永久的な建造物と認められるものに限る。)

ロ 建物として取り扱わないもの

(イ) 瓦斯タンク、石油タンク、給水タンク

(ロ) 機械上に建設した建造物(ただし、地上に基脚を有し、又は支柱を施したものを除く。)

(ハ) 浮船を利用したもの(ただし、固定しているものを除く。)

(ニ) アーケード付街路(公衆用道路上に屋根覆を施した部分)

(ホ) 容易に運搬し得る切符売場、入場券売場等

(2) 建築中の建物のうち、建物の使用の目的からみて使用可能な程度に完成していないものは、動産として差し押さえる(大正15.2.22大判参照)。この場合において、その後通常建物として使用することができる程度(屋根、周壁及び床を備える状態)に完成したときは、改めて不動産としての差押えの上、動産としての差押えを解除するものとする。
 なお、建築中の建物については、不動産工事の先取特権の登記がある場合(不動産登記法第86条参照)であっても、建物としての差押え及びその登記をすることはできない。

(3) プレハブ式建物については、その土台を土地に付着させしめるような特別の付加工事を施した場合又は土地に永続的に付着した状態で一定の用途に供されるものであると取引観念上も認めうるような特段の事情がない限り、動産として差し押さえる(昭和54.3.27釧路地判参照)。

(注) プレハブ式建物とは、屋根、周壁等によって構成され、一時的あるいは場所的な移動を必要とする用途に供する目的で移設に適するような構造に製作された建物をいう(昭和54.3.27釧路地判参照)。

(4) 1棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるもの(建物の区分所有等に関する法律第1条参照)があるときは、その各部分について独立した不動産として差し押さえる(不動産登記法第2条第5号、第22号、第12条参照)。

(5) 同一の建物につき2以上の表示の登記がされている場合には、先にされた表示の登記が建物の現況と符合している以上、後にされた表示の登記は無効である(昭和37.10.4付民事甲第2820号法務民事局長通達参照)。

(6) 工場抵当法第2条《財団を組成しない工場の土地、建物の抵当権》の規定による工場抵当権の目的となっている建物の備付物には、その建物に対する差押えの効力が及ぶ(同法第7条第1項。4参照)。

財団を組成しない工場抵当の目的となっている土地又は建物

(差押えの効力が及ぶ財産)

4 工場抵当法第7条《差押え等の及ぶ範囲》の規定により、工場抵当権の目的となっている土地又は建物についての差押えの効力は、その土地又は建物に付加してこれと一体となっている物及びその土地又は建物に備え付けた機械器具その他工場の用に供する物に及び、その備え付けた時期が工場抵当権の設定又は差押えの前であると後であるとを問わない(大正9.12.3大判参照)。

(差押えの効力が及ばない財産)

5 工場抵当法第1条《工場の定義》にいう工場の土地又は建物についての工場抵当権の効力は、次に掲げる物には及ばないから、その土地又は建物についての差押えの効力も及ばない。したがって、これらの物件が同法第3条《抵当権の目的物の登記》の目録に記録されている場合においても、その記録は効力がない(同法第3条第2項、第3項参照)。

(1) 土地を差し押さえた場合の建物及び建物を差し押さえた場合の土地(工場抵当法第2条)

(2) 備付物のうち、設定行為で工場抵当権の効力が及ばない旨の特約の登記のある物(工場抵当法第2条第1項ただし書、第2項)

(3) 工場抵当権設定者が工場抵当権者以外の一般債権者を害することを知り、工場抵当権者もその事情を知りながら備え付けた物(工場抵当法第2条第1項ただし書、第2項。民法第424条参照)

(4) 他人の所有物(民法第242条ただし書、昭和37.5.10最高判参照)

(5) 工場所有者が工場抵当権者の同意を得て土地又は建物から分離し、又は備付けをやめた物(工場抵当法第6条)

(6) 性質上土地又は建物に備え付けられたと認められない物(例えば、車両、運搬具等)

(目録に記載されていない財産)

6 工場抵当法第2条《財団を組成しない工場の土地、建物の抵当権》の規定により工場抵当権の効力が当然に及ぶ物であっても、同法第3条《抵当権の目的物の登記》に規定する目録にその記録がない場合には、これらの物についての工場抵当権の効力は第三者に対抗することができないから、これらの財産の差押えも第三者に対抗することができない。したがって、この場合には、滞納者に代位して、工場抵当権者の同意を得て目録の記録の変更登記をするか、又はこれらの財産を独立の動産として差し押さえる(同法第3条第2項、第3項、第4項、第38条。平成6.7.14最高判参照)。

(差押え後の抵当権の設定)

7 土地又は建物を差し押さえた後、その土地又は建物について工場抵当法第2条《財団を組成しない工場の土地、建物の抵当権》の工場抵当権が設定された場合には、その工場抵当権の設定は、差押債権者である国に対抗することができない。

地上権

8 1の(2)に掲げる「地上権」とは、工作物(建物等を含む。)又は竹木を所有する目的のため他人の土地を使用する権利をいい(民法第265条)、所有すべき目的物のない土地の上にも設定することができ、また、地下又は空間について、その上下の範囲を限って設定することもできる(民法第269条の2)。
 なお、農地又は採草放牧地(以下「農地等」という。)の上の地上権の移転については、原則として、農業委員会又は都道府県知事の許可を受けなければならない(農地法第3条第1項)。

(注) 地上権の処分の効力は、立木法による立木には及ばない(同法第2条第3項)。

永小作権

(意義)

9 1の(2)に掲げる「永小作権」とは、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利をいう(民法第270条)。
 なお、農地等の上の永小作権の移転については、原則として、農業委員会又は都道府県知事の許可を受けなければならない(農地法第3条第1項)。

(譲渡禁止の特約がある永小作権)

10 永小作権については、設定行為によって権利の譲渡を禁ずることができ、その特約が登記されている場合には、第三者に対抗することができるが、差押えをすることは妨げられない。ただし、換価については、永小作権設定者の同意を得て特約の登記を抹消した後でなければ、することができない(民法第272条、不動産登記法第79条第3号)。

立木法による立木

11 1の(3)に掲げる「立木」とは、立木法第1条《定義》の規定により登記した樹木の集団をいい、独立した不動産とみなされるから(同法第2条第1項)、土地とは別個に差し押さえなければならない。
 なお、次のことに留意する。

(1) 明治42年法律第22号第1条第2項ノ規定ニ依リ樹木ノ集団ノ範囲ヲ定ムルノ件により、立木法の規定の適用を受ける樹木の集団で、その所有者が同法の規定により所有権の保存の登記をしたものは、土地から独立した不動産となり、1筆の土地又はその一部分の土地の上に生立する集団ごとに、1単位の立木として差し押さえる。

(2) 登記をしない樹木の集団及び独立の取引価値がある個々の樹木は、通常の土地の定着物としてその土地の差押えの効力が及ぶが、それらの樹木を土地から独立した不動産として差し押さえる場合には、滞納処分の前提として滞納者に代位してする立木の保存登記の申請は受理されない(昭和33.7.2付民事甲第1328号法務省民事局長心得通達)から、立札、縄張等の明認方法を施すものとする(大正10.4.14大判、昭和46.6.24最高判参照)。

(3) 植栽された樹木の集団は、果実の採取を目的とするものであっても、立木としての保存登記をすることができる(明治42年法律第22号第1条第2項ノ規定ニ依リ樹木ノ集団ノ範囲ヲ定ムルノ件第1条ただし書、昭和30.6.10付民事甲第1175号法務省民事局長通達)。

工場財団

(意義)

12 1の(3)に掲げる「工場財団」とは、工場抵当法により物品の製造等の工場の施設としての土地、建物、機械、器具その他の物的設備のみならず、そのための地上権、賃借権、工業所有権又はダム使用権等をもって組成され、抵当権の目的とするためその所有権保存の登記によって成立する財団をいう(同法第8条、第9条、第11条)。工場所有者が工場財団登記簿に所有権保存の登記をした工場財団は、1個の不動産とみなされる(同法第14条第1項)。
 なお、工場抵当法第21条第2項《工場財団目録》の工場財団目録に記録された不動産、船舶、航空機、自動車、建設機械、動産、無体財産権その他の財団組成物件は、個々の物又は権利として差し押さえることができない(同法第13条第2項、昭和7.12.21法曹会決議)。

(差し押さえた動産が工場財団に組み入れられた場合)

13 差し押さえられた動産は、工場財団に属させることができないが(工場抵当法第13条第1項)、滞納処分により差し押さえた動産について工場財団の所有権保存の登記の申請があったときは、登記官は、登記制度のない動産については、1月以上3月以内の期間を指定してその間に権利の申出をすべき旨を官報に公告するから(同法第24条第1項)、徴収職員は、その期間内に、その動産が滞納処分による差押えの対象財産である旨を登記官に申し出なければならない。この場合において、上記の公告期間中にその申出をしないときは、工場財団の所有権保存登記後6月内に抵当権設定の登記がされなかったためにその登記が効力を失う場合を除いて、その差押えは効力を失うことに留意する(同法第25条、第10条)。

(差し押さえた不動産等が工場財団に組み入れられた場合)

14 不動産、地上権、賃借権、工業所有権、ダム使用権及び登記制度のある動産について差押えの登記をした後は、これらの物件を工場財団に組み入れることができないが(工場抵当法第13条第1項)、差押えの登記前にこれらの物件について工場財団の所有権保存の登記の申請があった旨の登記がされた場合において(同法第23条)、工場財団について抵当権設定登記があったときは、差押えの登記はその効力を失うから(同法第31条、第32条)、改めて工場財団として差し押さえるものとする。

(保存登記申請後の差押え)

15 不動産、地上権、賃借権、工業所有権、ダム使用権及び登記制度のある動産については、工場財団の所有権保存登記の申請があった旨の登記があった後においても、差し押さえてその登記を嘱託することができるが、所有権保存登記の申請が却下されない間及びその登記が効力を失わない間は換価をすることができず(工場抵当法第30条)、また、工場財団について抵当権設定登記がされたときは、差押えの登記はその効力を失うから(同法第31条)、改めて工場財団として差し押さえるものとする。
 なお、工場財団に属する登記制度のない動産についても、工場抵当法第24条第1項《利害関係人に対する公告》に規定する公告がされた後の差押えについては、上記と同様である(同法第33条)。

(保存登記があった後の差押え)

16 工場財団について所有権保存登記があった後は、工場財団としての差押えをすることができるが、その保存登記後6月内に抵当権設定の登記がされないときは、その保存登記は効力を失うから、個々の財団組成物件について新たに差押えをしなければならない(工場抵当法第10条参照)。また、抵当権が全部抹消された後若しくは分割により消滅した後6月内は工場財団は消滅しないから、この期間中は、工場財団として差し押さえることができるが、6月内に新たな抵当権の設定の登記がないときは、個々の財団組成物件について、新たに差押えをしなければならない(同法第8条第3項参照)。

鉱業財団等

(鉱業財団)

17 1の(3)に掲げる「鉱業財団」とは、鉱業抵当法により鉱業権、土地、機械、器具及びその他の物的設備のほか、地上権、賃借権又は工業所有権等をもって組成され、抵当権の目的とするためその所有権保存の登記によって成立する財団をいう(同法第1条、第2条、第3条)。採掘権者が鉱業財団登記簿に所有権保存の登記をした鉱業財団には、同法第3条《工場財団の規定の準用》の規定により工場抵当法のうち工場財団に関する規定が準用されるので、1個の不動産とみなされる。
 なお、鉱業財団に対する差押えについては、13から16までに定めるところに準じて行う。

(漁業財団)

18 1の(3)に掲げる「漁業財団」とは、漁業財団抵当法により定置漁業権又は区画漁業権、船舶、漁具及びその他の物的設備のほか地上権、水面の使用に関する権利又は工業所有権等をもって組成され、抵当権の目的とするためその所有権保存の登記によって成立する財団をいう(同法第1条、第2条、第6条)。定置漁業権者、区画漁業権者又は漁業の用に供する登記した船舶若しくは水産物の養殖場の所有者が、漁業財団登記簿に所有権保存の登記をした漁業財団には、同法第6条《工場財団に関する規定の準用》の規定により工場抵当法のうち工場財団に関する規定が準用されるので、1個の不動産とみなされる。
 なお、漁業財団に対する差押えについては、13から16までに定めるところに準じて行う。

(道路交通事業財団)

19 1の(3)に掲げる「道路交通事業財団」とは、道路交通事業抵当法により、自動車、土地、機械、器具及び軽車両等のほか、地上権、地役権等をもって組成され、抵当権の目的とするためその所有権保存の登記によって成立する財団をいう(同法第3条、第4条、第6条)。道路運送事業者、自動車ターミナル事業者又は貨物利用運送事業者が道路交通事業財団登記簿に所有権保存の登記をした道路交通事業財団は、同法第8条《事業財団の性質》の規定により1個の不動産とみなされ、工場抵当法のうち工場財団に関する規定が準用される(同法第19条)。
 なお、道路交通事業財団に対する差押えについては、13から16までに定めるところに準じて行う。

(港湾運送事業財団)

20 1の(3)に掲げる「港湾運送事業財団」とは、港湾運送事業法により、港湾運送事業に関する上屋、荷役機械、はしけ、事務所及び一般港湾運送事業等の経営のため必要な器具等のほか地上権、地役権等をもって組成され、抵当権の目的とするためその所有権保存の登記によって成立する財団をいう(同法第23条、第24条、第26条)。一般港湾運送事業者等が港湾運送事業財団登記簿に所有権保存の登記をした港湾運送事業財団には、同法第26条《工場抵当法の準用》の規定により工場抵当法のうち工場財団に関する規定が準用されるので、1個の不動産とみなされる。
 なお、港湾運送事業財団に対する差押えについては、13から16までに定めるところに準じて行う。

(観光施設財団)

21 1の(3)に掲げる「観光施設財団」とは、観光施設財団抵当法により、観光施設に属する土地、機械、動物、植物、展示物、船舶、車両及び航空機等のほか、地上権、貸借権、温泉を利用する権利等をもって組成され、抵当権の目的とするためその所有権保存の登記によって成立する財団をいう(同法第3条、第4条、第7条)。観光施設を観光旅行者の利用に供する事業を営む者が、観光施設財団登記簿に所有権保存の登記をした観光施設財団は、同法第8条《財団の性質》の規定により、1個の不動産とみなされ、工場抵当法のうち工場財団に関する規定が準用される(同法第11条)。
 なお、観光施設財団に対する差押えについては、13から16までに定めるところに準じて行う。

鉱業権

22 1の(4)に掲げる「鉱業権」とは、登録を受けた一定の土地の区域(鉱区)において、登録を受けた鉱物及びこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物を掘採し、取得する試掘権及び採掘権をいい(鉱業法第5条、第11条)、経済産業局長が設定の許可をし(同法第21条)、鉱業原簿に登録することによって成立する(同法第59条、第60条)。この権利は、物権とみなされ、鉱業法に別段の規定がある場合を除き不動産に関する規定が準用される(同法第12条、第13条)。
 なお、鉱業法には鉱業権とともに租鉱権についての規定がある。租鉱権とは、設定行為に基づき、他人の鉱区において鉱業権の目的となっている鉱物を掘採し、自己の所有物とする権利をいい(鉱業法第6条)、相続その他の一般承継の目的となるほか、権利の目的となることができないから、差し押さえることができない(同法第72条)。

(注) 試掘権とは、一定の鉱区において主として鉱物の探鉱を内容とする鉱業権をいい、採掘権とは、一定の鉱区において主として鉱物を掘採し、自己の所有物とすることを内容とする鉱業権をいう。

特定鉱業権

23 1の(4)に掲げる「特定鉱業権」とは、日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定第2条第1項に規定する大陸棚の区域(共同開発区域)内の登録を受けた一定の区域において天然資源の探査又は採掘をし、及び掘採された天然資源を取得する権利をいい(大陸棚特別措置法第2条第3項)、経済産業大臣がその設定の許可をし(同法第12条)、特定鉱業原簿に登録することによって効力を生ずる(同法第32条第3項)。
 特定鉱業権には、探査権と採掘権とがあり(大陸棚特別措置法第4条)、特定鉱業権は物権とみなされ、大陸棚特別措置法に別段の定めがある場合を除き、不動産に関する規定が準用される(同法第6条)。

漁業権

24 1の(4)に掲げる「漁業権」とは、定置漁業権(定置漁業を営む権利)、区画漁業権(区画漁業を営む権利)及び共同漁業権(共同漁業を営む権利)をいい(漁業法第6条)、物権とみなされ、土地に関する規定が準用される(同法第23条第1項)。

(注) 定置漁業権及び区画漁業権について移転ができるのは、次の場合であるが、2から4までの場合には、買受人は、都道府県知事の認可を受けなければならない(漁業法第26条第1項ただし書)。
 なお、共同漁業権は、相続又は法人の合併若しくは分割による場合を除き、移転の目的となることができず、滞納処分はできないことに留意する(同法第26条第1項本文)。

1 相続又は法人の合併若しくは分割による場合

2 滞納処分による場合

3 先取特権者又は抵当権者がその権利を実行する場合

4 漁業法第27条第2項《漁業権を取り消す旨の通知》の通知を受けた者が譲渡する場合

入漁権

25 1の(4)に掲げる「入漁権」とは、設定行為に基づいて、他人の共同漁業権又はひび建養殖業、藻類養殖業、垂下式養殖業(縄、鉄線その他これらに類するものを用いて垂下して行う水産動物の養殖業をいい、真珠養殖業を除く。)、小割り式養殖業(網いけすその他のいけすを使用して行う水産動物の養殖業をいう。)若しくは第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とする区画漁業権に属する漁場においてその漁業権の内容である漁業の全部又は一部を営む権利をいい(漁業法第7条)、物権とみなされる(同法第43条第1項)。
 なお、入漁権を差し押さえたときは、漁業権者に対しても差押えの通知をするものとする。

(注) 入漁権は、漁業協同組合及び漁業協同組合連合会以外の者は取得することができず(漁業法第42条の2)、漁業権者の同意がなければ譲渡することができない(同法第43条第3項)。

採石権

26 1の(4)に掲げる「採石権」とは、設定行為に基づき、他人の土地において岩石及び砂利(砂及び玉石を含む。)を採取する権利をいい(採石法第4条第1項)、採石法によって認められる物権であり、地上権に関する規定が準用される(同法第4条第3項)。

ダム使用権

27 1の(4)に掲げる「ダム使用権」とは、多目的ダムによる一定量の流水の貯留を一定の地域において確保する権利をいい(特定多目的ダム法第2条第2項)、ダム使用権又はダム使用権を目的とする抵当権の設定、変更、移転、消滅及び処分の制限は、ダム使用権登録簿に登録することによって成立する(同法第26条)。この権利は、物権とみなされ、特定多目的ダム法に別段の定めがある場合を除き、不動産に関する規定が準用される(同法第20条)。

(注) ダム使用権は、国土交通大臣の許可を受けなければ、移転(相続、法人の合併その他の一般承継によるものを除く。)の目的とし、分割し、合併し、又はその設定の目的を変更することができない(特定多目的ダム法第22条)。

鉄道財団等

(鉄道財団)

28 1の(5)に掲げる「鉄道財団」とは、鉄道抵当法によって抵当権の設定を認められる財団をいい、鉄道の全部又は一部について設定され、鉄道事業経営に関する物的設備と地上権、地役権、登記した賃借権をその内容とし、1個の物とみなされる(同法第2条、第2条ノ2、第3条、第4条、第13条ノ4参照)。
 なお、鉄道財団の差押えについては、13から16までに定めるところに準じて行う。

(注) 鉄道財団についての滞納処分に関しては、鉄道抵当法第65条本文《競落代金の支払》、第66条《競落による権利の移転》、第67条第1項及び第2項《競落を許す決定の取消し》、第68条《競落代金の配当、競売申立ての登録の抹消》、第70条《財団の分割競売》、第71条第1項《分割競売の手続》、第73条《競落人の許可申請》、第74条《競落人が会社の発起人であるときの許可申請手続》、第76条《国土交通大臣の許可義務》並びに第77条《競落人の許可の効力》の規定が準用される(同法第77条ノ2)。

(軌道財団)

29 1の(5)に掲げる「軌道財団」とは、軌道ノ抵当ニ関スル法律によって抵当権の設定を認められる財団をいい、別段の規定がある場合を除いて鉄道抵当法が準用され(同法第1条)、財団の組成物件も鉄道財団とおおむね同様である(同法第2条参照)。
 なお、軌道財団の差押えは、13から16までに定めるところに準じて行う。

(運河財団)

30 1の(5)に掲げる「運河財団」とは、運河法によって抵当権の設定を認められる財団をいい、運河事業に関する物的設備と地上権、地役権、登記した賃借権をその内容とし、1個の物とみなされる(同法第14条、第13条)。
 なお、運河財団の差押えは、13から16までに定めるところに準じて行う。

不動産の共有持分

31 不動産の共有持分とは、共有者がその不動産に対して有する量的に制限された所有権をいい、特約がなければ各共有者の持分は相等しいものと推定される(民法第250条)。

差押手続

(差押書)

32 法第68条第1項の「差押書」とは、令第30条第1項各号《不動産の差押書等の記載事項》に掲げる事項を記載した規則第3条《書式》に規定する別紙第5号書式によるものをいい、これを滞納者に送達することによって差押えの効力を生じる(法第68条第2項)。

(差押調書)

33 法第68条第1項の不動産を差し押さえた場合には、差押調書を作成しなければならないが、その謄本を滞納者に交付する必要はない(法第54条参照)。

(差押えの登記の嘱託)

34 不動産を差し押さえたときは、税務署長は、差押えの登記を関係機関(36参照)に嘱託しなければならない(法第68条第3項)。
 なお、差押えの登記の嘱託等については、次のことに留意する。

(1) 不動産登記法第61条に定める登記原因を証する情報は、別に定めるところによる。また、登記権利者は財務省、登記を嘱託することができる者は国税局長、税務署長又は税関長である(不動産登記令第7条第2項、財務省の所管に属する不動産及び船舶に関する権利の登記嘱託職員を指定する省令)

(2) 差押登記嘱託書には、工場抵当法第3条《抵当権の目的物の目録》の規定による目録又は工場財団の目録の添付を要しない。

(3) 工場抵当法第3条《抵当権の目的物の登記》の規定による目録に、他人の物件が記録されている場合には、その物件を除外して差押えの登記を嘱託して差し支えない(昭和31.6.14付民事甲第1273号法務省民事局長通達参照)。

(4) 同一の登記所の管轄に属する数個の不動産の差押えの登記を嘱託する場合には、同一の嘱託書をもって差押えの登記を嘱託することができる(不動産登記法第16条第1項、不動産登記令第4条)。

(5) 表示登記又は所有権の保存登記がされていない不動産について、差押えの登記を嘱託した場合には、登記官は、職権で、表示登記がないときは表示登記及び保存登記を、保存登記がないときは保存登記をそれぞれ行った上、差押えの登記をする(不動産登記法第76条第2項、第3項、第75条)。

(6) 土地区画整理法第103条第4項《換地処分の公告》の規定により国土交通大臣又は都道府県知事による換地処分の公告があった後においては、同法第107条第3項本文《換地処分の公告後の登記の制限》の規定により、同条第2項《事業の施行による変動に係る登記等》に規定する土地区画整理事業の施行による変動に係る登記がされるまでの期間は、差押えの登記の嘱託をすることができない。
 なお、換地処分の公告の日前に差押えの登記原因が生じているときは、上記の期間中であっても、差押えの登記の嘱託をすることができる(土地区画整理法第107条第3項ただし書)。

(未登記不動産と民法第177条)

35 未登記不動産についても民法第177条《不動産物権の対抗要件》の適用があり、その取得者は、その旨の登記を経なければ、取得後に所有権を取得して登記を経た第三者に対し、自己の所有権の取得を主張することができない(昭和57.2.18最高判参照)。

(関係機関)

36 法第68条第3項の「関係機関」については、別に定めるところによる。

(登録免許税の非課税)

37 税務署長が差押えの登記を嘱託する場合には、登録免許税法第5条第11号《滞納処分に関する登記等の非課税》の規定により、登録免許税は課されない。

差押えの効力

38 法第68条第1項の規定による差押えの効力は、差押書が滞納者に送達された時に生ずるが(法第68条第2項)、差押書の送達前に差押えの登記がされた場合には、その登記がされた時に差押えの効力が生ずる(法第68条第4項)。また、鉱業権又は特定鉱業権の差押えの効力は、上記にかかわらず、差押えの登録がされた時に生ずる(法第68条第5項、鉱業法第60条、大陸棚特別措置法第32条、同法施行令第5条)。
 なお、差押えの登記がされても差押書が送達されていない場合は、差押えの効力が生じないことに留意する(昭和33.5.24最高判参照)。

各別の所有者に属する工場を含む工場財団の差押え

39 各別の所有者に属する工場について1個の工場財団が設定されている場合には、その所有者のうちの1人に対する滞納処分として、その財団全体を差し押さえることはできないから、次によるものとする(工場抵当法第8条第1項参照)。

(1) 抵当権者に対し、滞納者の所有に属する工場財団の分割及び分割された工場財団についての抵当権の消滅の承諾を得て、その承諾を証する書面を添付して、他の工場所有者と共同して分割の登記を求め、その登記を了したときに、その滞納者に属する分割された工場財団を差し押さえる(工場抵当法第42条ノ2、第42条ノ4、第42条ノ5)。

(2) 抵当権者から(1)の承諾が得られないときは、滞納者の有する財団持分を差し押さえる。この場合における持分とは、土地、建物等の共有持分とは異なり、その滞納者の所有に係る工場等をいうものであるから、差押えに当たっては、財団持分の差押えである旨及びその内容であるその工場等の表示を明らかに記載するものとする。

出典

国税庁ホームページ http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/chosyu/index.htm

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