第60条関係 差し押さえた動産等の保管|国税徴収法
基本通達(国税庁)
保管
1 法第60条の「保管」とは、差し押さえられた動産又は有価証券を自己の勢力範囲内に保持して、その滅失又はき損を防ぐことをいう。
保管責任
(滞納者が差押財産を亡失し、又はき損した場合)
2 滞納者が保管中の財産を滅失し、亡失し、又はき損したときは、その保管人としての注意義務を怠ったと怠らなかったとにかかわらず、一切の損害をその滞納者が負担する。
なお、故意に差押財産を滅失し、亡失し、又はき損した場合には、法第187条《罰則》、刑法第252条第2項《横領の罪》、第262条《毀棄の罪》等の規定が適用されることがある。
(第三者の保管責任)
3 法第60条第1項の第三者は、滞納者に対しては、滞納者の財産を占有している原因である賃貸借契約、寄託契約等の内容に従って注意義務を負い、また、国に対しては、保管者として一般に要求される程度の注意義務を負う。このため、第三者が、故意に又は注意義務を怠ったことにより、保管中の財産を滅失し、亡失し、又はき損したときは、滞納者又は国に対してその損害を賠償する責めを負う。
なお、故意に差押財産を滅失し、亡失し、又はき損した場合には、法第187条《罰則》、刑法第252条第1項《横領の罪》、第261条《毀損の罪》等の規定が適用されることがある。
(滞納者及び占有する第三者以外の第三者の保管責任)
4 法第60条第1項の第三者以外の第三者は、差押財産の保管について、特約のない限り、次に掲げる注意義務を負い、故意に又はその注意義務を怠ったことにより、保管中の財産を滅失し、亡失し、又はき損したときは、国に対してその損害を賠償する責めを負う。
(1) 無償で保管する場合((3)の場合を除く。)には、自己の財産におけると同一の注意をもって保管する義務(民法第659条)
(2) 有償で保管する場合には、善管注意義務(民法第400条)
(3) 保管者が倉庫営業者その他営業の範囲内で保管する商人(例えば、差押財産の運送を依頼した場合の運送人)である場合には、善管注意義務(商法第593条、第617条、第577条、第560条参照)
(天災等による差押財産の滅失)
5 差押財産の保管中に、天災その他の不可抗力により、その財産が滅失し、亡失し、又はき損したときは、その損害はすべて滞納者が負担する。
財産を占有する第三者
6 法第60条第1項の「財産を占有する第三者」には、法第58条第1項《第三者が占有する動産等の差押手続》の滞納者の親族その他の特殊関係者で、滞納者の財産を占有する者も含まれる。
保管させることができる場合
7 法第60条第1項の「必要があると認めるとき」とは、次に掲げる場合をいう。
(1) 法第59条第2項《引渡しを命ぜられた第三者の使用収益》及び第4項《引渡しを拒まなかった第三者の使用収益》の規定により、これらの第三者に、差し押さえた動産の使用又は収益をさせる場合
(2) 差し押さえた動産又は有価証券の運搬が困難である場合
(3) 差し押さえた動産又は有価証券を滞納者又はその財産を占有する第三者に保管させることが滞納処分の執行上適当であると認める場合
滞納者に保管させる場合
8 法第60条第1項の規定により差し押さえた動産又は有価証券を滞納者に保管させる場合には、その滞納者に、その財産を保管すべきことを命じなければならない。この保管命令は、差押調書にその旨を付記する方法により行う。
第三者に保管させる場合
(保管命令)
9 差し押さえた動産又は有価証券の運搬が困難である場合において、これらを占有する第三者に保管させるときは、その第三者に、その財産を保管すべきことを命じなければならない(法第60条第1項)。この保管命令は、差押調書にその旨を付記する方法により行う。
(運搬が困難であるとき)
10 法第60条第1項ただし書の「その運搬が困難であるとき」とは、おおむね次に掲げる場合をいう。
(1) 差し押さえた動産又は有価証券の量、型、据付け状態等により、その運搬が費用的又は物理的な観点から困難である場合
(2) 法第172条《差押動産等の搬出の制限》又は行政事件訴訟法第25条第2項《執行停止》の規定による停止命令等により搬出が法律上制限されている場合
(同意が得られなかった場合)
11 差し押さえた動産又は有価証券の運搬が困難でない場合で、これらを占有する第三者に保管をさせようとする場合において、その第三者の同意が得られなかったときは、徴収職員がその差押財産の直接占有を継続しなければならない。
(保管の同意書)
12 差し押さえた動産又は有価証券を占有する第三者の同意を得て保管させる場合には、差押調書の余白に無償で保管する旨を記載して第三者の署名押印をさせるものとする。
なお、有価証券の保管を命じた場合の保管証については、印紙税は課税しない取扱いとされている(昭和52.4.7付間消1−36ほか3課共同「印紙税法基本通達の全部改正について」(法令解釈通達)の別冊の別表第1の第14号文書4関係(差押物件等の保管証))。また、動産の保管を命じた場合の保管証は、課税文書に該当しない。
差押えを明白にする方法
(封印)
13 法第60条第2項の「封印」とは、差押財産であることを表示する令第26条《差押動産等の表示》に定める事項を記載した標識をいう。この封印の様式は、別に定めるところによる。
(公示書)
14 法第60条第2項の「公示書」とは、差押財産であることを一般に周知させるために公示し、公衆がこれを知りうる状態におくための令第26条《差押動産等の表示》に定める事項を記載した書面をいう。この書面の様式は、別に定めるところによる。
(その他の方法)
15 法第60条第2項の「その他差押を明白にする方法」とは、例えば、縄張、立札、木札等により第三者に対し差押財産であることを明白にする方法をいう(昭和28.1.30広島高(松江支)判参照)。
差押えの効力
(差押えの効力発生の時期)
16 動産又は有価証券の差押えの効力は、法第56条第2項《差押えの効力の発生時期》の規定により、徴収職員がその動産又は有価証券を占有した時に生ずるのであるが、その差押財産を滞納者又は第三者の保管に移したときは、封印、公示書その他差押えを明白にする方法により差し押さえた旨を表示した時に、差押えの効力が生ずる(法第60条第2項)。
(封印等の効果)
17 封印その他の表示は、徴収職員が差押財産を占有していることを明らかにする方法であって、徴収職員の現実の占有に代わる支配力を有するものであるから、封印その他の表示がされているときは、その財産の譲受けはその差押えに対抗することができない。
(封印と差押えとの関係)
18 封印等の標識は、第三者が通常容易に認識できるようにするものとする。また、差押えの効力の持続のためには、これらの標識の存続は必要ではなく、それが損壊され、自然に脱落し、又は消滅することがあっても、差押えの効力は消滅しない(明治34.10.9大判参照)。ただし、徴収職員は、封印等の損壊、脱落又は消滅を発見したときは、速やかに修復するものとする。
差押財産の搬出手続
19 徴収職員は、差押財産の搬出をする場合には、令第26条の2第1項《差押財産搬出の手続》に定める事項を記載した搬出調書を作成し、これに署名押印をするとともに、滞納者又はその第三者にその謄本を交付しなければならない。この書面の様式は、別に定めるところによる。
なお、差押えと同時に差押財産を搬出する場合には差押調書に差押財産を搬出した旨を付記することにより、また、差押財産の搬出に際し捜索をした場合には捜索調書に差押財産を搬出した旨を付記することにより、搬出調書等の作成に代えることができる(令第26条の2第2項)。
出典
国税庁ホームページ http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/chosyu/index.htm
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