〔被災事業用資産の損失の金額の計算等〕|所得税法
基本通達(国税庁)
(被災事業用資産に含まれるもの)
70−1 法第70条第3項に規定する棚卸資産には、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業に係る令第81条第1号《譲渡所得の基因とされないたな卸資産に準ずる資産》に掲げる資産が含まれるものとする。
(棚卸資産の被災損失額)
70−2 棚卸資産(まだ収穫しない水陸稲、麦、野菜等の立毛、果実等(70−3において「未収穫農作物」という。)を除く。)が災害により滅失し又はその価値が減少したために生じた損失の金額は、次に定める区分に応じ、それぞれ次に定める金額に相当する金額とする。(平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)
(1) 滅失した棚卸資産 当該棚卸資産について被災直前において法第47条第1項《棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法》の規定に準じて評価した金額
(2) 価値が減少した棚卸資産 当該棚卸資産につき(1)により評価した金額が被災直後における当該棚卸資産の価額を超える場合における当該超える部分の金額
(未収穫農作物の被災損失額)
70−3 未収穫農作物が災害により枯死、倒伏、流失、冠水等をしたことにより滅失し又はその価値が減少したために生じた損失の金額(災害により農作物が減産し又は収穫皆無となったため生じた損失の金額を含む。)は、当該農作物に係る種苗費の額並びに成熟させるために要した肥料費、労務費及び経費の額(冷害、干害等の自然現象の異変又は害虫その他の生物による災害の発生に伴い農作物の肥培管理のために特別に支出した費用の額を含む。)の合計額が収穫できた部分の農作物の収穫時の価額の合計額を超える場合における当該超える部分の金額に相当する金額とする。
(固定資産等の損失に関する取扱いの準用)
70─4 事業用固定資産の災害による損失の金額及び法第70条第3項かっこ内に規定する「その他これらに類するもの」については、51−2及び51−6の取扱いに準ずる。
(災害のあった年の翌年以後に支出した災害関連費用)
70−5 法第70条第3項かっこ内に規定する災害に関連するやむを得ない費用は、51−3により資本的支出とされるものを除き、当該費用を支出した日の属する年分の必要経費とされるのであるから、災害のあった年の翌年以後に支出した当該費用は、災害による資産そのものの損失及び災害のあった年において支出した当該費用とは区分して同条第2項の規定を適用することに留意する。(平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)
(災害後1年以内に取壊し等をした資産に係る損失額の特例)
70−6 災害により損壊し又は価値が減少した資産を取壊し又は除去した場合であっても、それが災害後相当な期間使用した後に行われたときは、その資産につき取壊し又は除去により生じた損失はもちろん、その資産の取壊し又は除去に要する費用その他の付随費用も災害損失には含まれないのであるが、災害後おおむね1年以内(大規模な災害の場合その他やむを得ない事情がある場合には、3年以内)に取壊し又は除去したときは、その資産の取壊し又は除去により生じた損失及びその資産の取壊し又は除去に要する費用その他の付随費用の全てを災害損失に含まれるものとして差し支えない。(平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)
(登記登録の抹消費用)
70−7 災害により滅失した被災事業用資産又は損壊し若しくは価値が減少したことにより取壊し若しくは除去した被災事業用資産につき要する登記登録の抹消費用は、令第203条第1号に掲げる「その他の付随費用」に含まれるものとする。
(第三者に対する損害賠償金等)
70−8 次に掲げるような場合において、損害賠償金、見舞金、弔慰金等として支出する費用は、法第45条第1項第7号《必要経費に算入されない損害賠償金》に該当するものを除き、令第203条に規定する費用に含まれるものとする。
(1) 災害により事業用の建物又は構築物等が倒壊し、その倒壊により第三者に損害を与えた場合
(2) 災害により事業に関連して保管している第三者の物品について損害が生じた場合
(取壊し、除去等に従事した使用人の給与等)
70−9 災害を受けたことにより使用人を専ら被災事業用資産の取壊し若しくは除去又は原状回復若しくは障害物の除去の作業に従事させることにより支払う給与等は、令第203条に規定する費用に含まれる。
(損壊等を防止するための費用)
70−10 事業用資産の災害による損壊等を予測して事前に当該損壊等を防止するために支出する費用(資本的支出に該当するものを除く。)は、その支出した日の属する年分の必要経費に算入されるのであるが、現実に災害による損壊等の事業が生ずるに至らなかった場合又は当該費用が令第203条第3号に掲げる費用に該当しない場合には、当該費用は被災事業用資産の損失とはならないことに留意する。(昭57直所3−1改正)
(災害関連費用に含まれる被害の発生防止費用)
70−10の2 令第203条第3号に規定する被害の発生を防止するために緊急に必要な措置を講ずるための費用とは、切迫している被害の発生を防止するための応急措置に係る費用のように、その費用の支出の効果がその災害による被害の発生を防止することのみに寄与するものをいうものとする。
したがって、被災の発生を予測して支出する費用であっても、修繕等を施す費用は、原則として、同号に規定する費用には該当しないことに留意する。(昭57直所3−1追加)
(貸借建物等に係る原状回復のための修繕費等)
70−11 賃借建物等を不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業の用に供している場合において、当該賃借建物等が災害により損壊等をしたため賃借人がその災害のやんだ日の翌日から1年以内(大規模な災害の場合その他やむを得ない事情がある場合には、3年以内)に原状回復のため修繕費等を支出したときは、その支出した金額のうち賃貸人に対して有益費の請求等を行わないことが明らかな部分については、当該賃借人に係る被災事業用資産の損失とするものとする。(平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)
(注) 賃貸建物等につき貸借人の負担により原状回復が行われた場合には、賃貸人についてはその回復された限度において当該賃貸建物等の損失はなかったこととなる。
(船舶等の捜索費用)
70−12 災害により行方不明になった船舶若しくは航空機又は牛馬等の事業用資産の捜索費用等は、令第203条第2号に規定する「その他これらに類する費用」に含まれるものとする。
(更正の請求による更正により純損失の金額があることとなった場合)
70−13 法第70条第4項に規定する「純損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し、」には、提出された確定申告書につき通則法第23条((更正の請求))に規定する更正の請求に基づく更正により新たに純損失の金額があることとなった場合も含まれることに留意する。(平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)
(更正により純損失の金額が増加した場合)
70−14 純損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出した場合において、当該確定申告書に記載された純損失の金額又は法第70条第2項各号に掲げる損失の金額が過少であるため更正が行われたときは、その更正後の金額を基として同条第1項又は第2項の規定を適用することに留意する。(平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)
(居住者が死亡した場合の繰越控除の適用関係)
70−15 法第70条第1項及び第2項に規定する純損失の金額を有する者が死亡した場合には、これらの純損失の金額については、これらの規定の適用はないこととなるのであるから、被相続人の事業を承継した相続人があった場合であっても、当該相続人の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算上控除することができないことに留意する。
(注) 被相続人の死亡した日の属する年及びその前年において生じた純損失の金額については、法第141条第1項又は第4項《相続人等の純損失の繰戻しによる還付の請求》の規定により当該被相続人の死亡した日の属する年の前年分又は前前年分に繰り戻して還付の請求ができることに留意する。
(更正の請求により雑損失の金額があることとなった場合)
71−1 法第71条第2項に規定する「雑損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し、」には、提出された確定申告書につき通則法第23条に規定する更正の請求に基づく更正により新たに雑損失の金額があることとなった場合も含まれることに留意する。(昭57直所3−15、直法6−13、直資3−8追加、平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)
(更正により雑損失の金額が増加した場合)
71−2 雑損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出した場合において、当該確定申告書に記載された雑損失の金額が過少であるため更正が行われたときは、その更正後の金額を基として法第71条第1項の規定を適用することに留意する。(昭57直所3−15、直法6−13、直資3−8追加、平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)
出典
国税庁ホームページ http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/01.htm
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