No.1468 相続又は遺贈により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例|所得税
タックスアンサー(国税庁)
[平成27年4月1日現在法令等]
1 国外転出(相続)時課税
国外転出(相続)時課税とは、相続開始の時点で、1億円以上の有価証券等、未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引(以下「対象資産」といいます。)を所有等(所有又は契約の締結をいいます。以下同じです。)している一定の居住者が亡くなり、非居住者である相続人等が相続又は遺贈(以下「相続等」といいます。)により対象資産の全部又は一部(以下「相続対象資産」といいます。)を取得した場合に、その相続開始の時に、相続対象資産の譲渡又は決済(以下「譲渡等」といいます。)があったものとみなして、その相続対象資産の含み益に対して所得税が課税される制度です。
この制度は、平成27年7月1日以後の相続等について適用されます。
【対象者】
この制度の対象者は、次の(1)及び(2)のいずれにも該当する方(被相続人)です。
- (1) 相続開始の時に被相続人が所有等している対象資産の相続開始の時の価額等(未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引については、決済をしたものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額)の合計額が1億円以上であること。
- (2) 原則として、相続開始の日前10年以内において、被相続人が国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年を超えていること。
【対象資産】
この制度の対象資産には、有価証券(株式や投資信託など)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引及び未決済のデリバティブ取引(先物取引、オプション取引など)が該当します。
【申告手続等】
この制度の対象となる方(被相続人)の相続人が、相続開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに、その年の1月1日から死亡の日までに確定した被相続人の各種所得に、この制度の適用による所得を含めて準確定申告及び納税をする必要があります。
(注) 平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
2 納税の猶予
国外転出(相続)時課税の申告をする方(相続人)が、一定の手続を行った場合は、国外転出(相続)時課税の適用により納付することとなった所得税について、相続開始の日から原則5年間(延長の届出により最長10年間)、納税を猶予することができます。
この納税猶予の特例を受けるためには、次のことが必要となります。
- (1) 準確定申告書の提出期限までに、相続対象資産を取得した非居住者である相続人等の全員が、原則として連署による一の書面で、所轄税務署へ納税管理人の届出をすること。
- (2) 準確定申告書に納税猶予の特例を受けようとする旨を記載すること。
- (3) 確定申告書に「国外転出等の時に譲渡又は決済があったものとみなされる対象資産の明細書(兼納税猶予の特例の適用を受ける場合の対象資産の明細書)《確定申告書付表》」、「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等に係る納税猶予分の所得税及び復興特別所得税の額の計算書」など一定の書類を添付すること。
- (4) 準確定申告書の提出期限までに、納税を猶予される所得税額及び利子税額に相当する担保を提供すること。
なお、納税猶予期間中は、各年の12月31日において所有等している適用相続資産(納税猶予の特例を受けている相続対象資産をいいます。)について、引き続き納税猶予の特例を受けたい旨を記載した届出書(「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等に係る納税猶予の継続適用届出書」)を翌年3月15日までに、原則として連署による一の書面で、所轄税務署へ提出する必要があります。
3 帰国した場合等の取扱い
対象資産を相続等により取得した非居住者である相続人等が、相続開始の日から5年以内(納税猶予の特例を受け、納税猶予の期限延長の届出書(「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等に係る納税猶予の期限延長届出書」)を提出している場合には、10年以内)に帰国をした場合(これらの相続人等が国外に複数いる場合には、これらの相続人等の全員が帰国した場合)で、その帰国の時まで対象資産を引き続き所有等している相続対象資産については、国外転出(相続)時課税の適用がなかったものとして、課税の取消しをすることができます。
なお、この課税の取消しをするためには、帰国の日から4か月以内に更正の請求をする必要があります。
ただし、相続対象資産の所得の計算につき、その計算の基礎となるべき事実の全部又は一部について、隠蔽又は仮装があった場合には、その隠蔽又は仮装があった事実に基づく所得については、課税の取消しをすることはできません。
また、次の場合に該当するときにも、国外転出(相続)時課税の適用がなかったものとして、課税の取消しをすることができます。
対象資産を相続等により取得した非居住者である相続人等が、
- (1) 相続開始の日から5年以内に、その相続開始の時に所有等している相続対象資産を居住者に贈与した場合
- (2) 亡くなり、相続開始の日から5年以内に、その非居住者から相続(限定承認に係るものを除きます。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除きます。)によりその相続開始の時に所有等している相続対象資産を取得した相続人等の全てが居住者となった場合
- (注) 「相続開始の日」はいずれも国外転出(相続)時課税に係る相続開始の日であり、非居住者である相続人等の死亡に係る相続開始の日ではありません。
(所法60の3、125、129、137の3、153の3、所令170の2、266の3、平27改正法附則8)
参考: 関連コード
- 1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例
- 1926 海外転勤中の不動産所得などの納税手続
- 2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
- 2026 確定申告を間違えたとき
- 国税に関するご相談は、国税局電話相談センター等で行っていますので、税についての相談窓口をご覧になって、電話相談をご利用ください。
※ 下記の電話番号では、国税に関するご相談は受け付けておりません。
出典
国税庁ホームページ http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1468
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