金融機関の貸出債権に係るローン・パーティシペーションの取扱い|源泉所得税
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
外国銀行の在日A支店は、内国法人B社に対して貸付けを実行していましたが、この度、その貸出債権につき外国法人C社(国内に恒久的施設は有しません。)とローン・パーティシペーション契約を締結することとなり、参加対価の支払を受けました。以後、A支店は、その貸出債権に係る元利金の一定割合(参加割合)をC社に支払うこととなりますが、その元利金について源泉徴収は要しないと考えますがどうでしょうか。
なお、A支店とC社とのローン・パーティシペーション契約は、会計処理上、債権譲渡と取り扱われる要件のいずれをも満たしています。
【ローン・パーティシペーションの概要】
(概要図)
在日A支店(原債権者)←←外国法人C社(参加者) | |||
| |||
内国法人B社(原債務者) 外国法人C社は参加対価を在日A支店に支払 | |||
在日A支店は元利金を外国法人C社に支払 |
(説明)
ローン・パーティシペーション契約とは、金融機関(原債権者)と借入者(原債務者)との権利義務を移転させずに、貸出債権の全部又は一部に係る利益(原債務者から元利金として支払われた金銭等を受け取る利益)とリスクの全部又は一部を原債権者から参加者に移転させ、参加者からローン・パーティシペーションの対象となった原貸出債権の金額のうち参加割合に相当する金額(時価相当額)を参加対価として受け取るものです。
ローン・パーティシペーションについては、一定の要件を満たす場合、原債権者である金融機関が原貸出債権のうち参加割合に相当する部分を参加者に売却したものとして会計処理することとされており、この会計処理は法人税の課税上も是認されています。
また、一定の要件を満たさない場合のローン・パーティシペーション契約は、参加者から原債権者への貸付取引として会計処理することとされています。
【回答要旨】
A支店は、C社に支払う参加割合に係る元利金のうち、利子部分について源泉徴収を要します。
ローン・パーティシペーション契約が一定の要件を満たさない場合には、参加者から原債権者への貸付取引として会計処理することになるので、その利子等が外国法人に支払われたときは源泉徴収が必要なことは明らかですが、一定の要件も満たし、売却と会計処理(参加利益の売却価額と貸出債権の帳簿価額との差額は損益に計上)された場合にどのように取り扱うかが問題となります。
この点については、次の理由により貸付金の利子(6号所得)に該当し、原債権者が源泉徴収義務者として源泉徴収しなければなりません。
(所得区分の問題について)
ローン・パーティシペーションの参加者の会計処理は、「貸出債権の参加元本金額のうち参加割合に相当する部分を原債務者に対する貸出債権として計上する」旨明らかにされているとおり、参加対価は貸出債権であって、その債権より生じる所得は貸付金の利子(6号所得)以外の何ものでもないこと。
(源泉徴収義務者の問題について)
外国法人に対し国内において貸付金の利子の支払をする者は源泉徴収しなければならないこととされています(所得税法第212条第1項)。参加者の会計処理は「原債務者に対する貸出債権」として計上されていますので、原債務者が源泉徴収義務者であるとも考えられますが、原債務者はローン・パーティシペーション契約の当事者とはなっておらず(債権自体は移転していないので)、当該契約の有無や参加者が誰かを知り得ない状態にあり源泉徴収義務を履行することは不可能であることから、契約当事者である原債権者(当該契約に基づいて一定割合の利子の支払をなすべき者)が源泉徴収義務者たり得べきであること。
参加者は、対象とされている原貸出債権について、原債務者に対し直接権利行使することはできず、更に、原債権者に支払不能の事態が生じた場合には、参加者は原債権者に対する一般債権者としての地位をもつにすぎないことからすれば、(会計処理の如何にかかわらず)源泉徴収義務者は原債権者以外にはいないと解されること。
【関係法令通達】
所得税法第161条第6号、第212条第1項、平7.6.1付日本公認会計士協会「会計制度委員会報告第3号」
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/gensen/06/25.htm
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