請求人が負担すべき給与を関連会社が負担したとは認められないことから、請求人に受贈益が生じていないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/08/02 [法人税法][所得金額の計算][益金の額の範囲及び計算]《要旨》 原処分庁は、請求人の関連会社(H社)が請求人の取締役に対して「褒賞金」の名目で支払った金員(第一金員)は、賞与として経理処理されているものの、当該取締役には当該関連会社の従業員等としての勤務実態はなく、当該取締役が当該関連会社に対し何らかの役務提供等を行ったという事実も認められないことから、請求人が支払うべき取締役に対する給与を当該関連会社が負担したものである旨主張する。
しかしながら、当該取締役が当該関連会社に対して何らかの役務提供をしていないことは推認できるものの、請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によって認定できる一切の事実をもってしても、第一金員が当該関連会社の取締役の地位にあることを理由に支払われたとまでいうことはできない。したがって、請求人が負担すべき給与を当該関連会社が負担したとは認められないから、請求人に受贈益が生じたとする原処分庁の主張は採用できない。
一方、請求人は、請求人の各関連会社(L社及びK社)が請求人の各取締役に対して「永年勤続賞金」又は「褒賞金」の名目で支払った各金員(第二金員、第三金員及び第四金員)は、当該各関連会社と当該各取締役との間で交わした合意書(本件各合意書)に基づき、営業指導や情報提供を行ったことに対する対価として支払ったものであり、請求人が支払うべき給与を当該各関連会社が負担したものではない旨主張する。
しかしながら、本件各合意書は調査時に提出されておらず、調査時におけるその存在又は成立に疑義があり、信用できないこと、当該各取締役が提供した役務は、請求人の業務の一環としてなされたものであって当該各取締役が個人として提供したものとは認められないこと及び当該各金員の支払が当該各取締役の請求人における永年勤続表彰に関して支払われていることなどを総合すると、当該各関連会社において当該各金員を支払う特段の理由はなく、請求人が支払うべき給与を当該各関連会社が支払ったものと認めるのが相当である。したがって、請求人には受贈益が生じたものと認められる。
《参照条文等》 法人税法第22条
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 請求人が負担すべき給与を関連会社が負担したとは認められないことから、請求人に受贈益が生じていないとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(法人税法>所得金額の計算>益金の額の範囲及び計算)
- 取引実例、買取実例等を基に総合的に判断して決めた取引相場のない株式の譲渡価格は適正と認められた事例
- 香港子会社による第三者株式割当てにより、請求人が所有する当該香港子会社の株式の資産価値の一部が無償で他社に移転したことは、当該第三者株式割当てが請求人の株主と割当先との合意に基づくものと認められることから、法人税法第22条第2項に該当し、益金の額に算入されるとした事例
- 低額譲渡による土地の時価の算定に当たり不動産鑑定士の評価額を採用できないとした事例
- 原処分庁の認定した土地の譲渡価額は過大であるとした事例
- 本件土地の譲渡価額は、請求人の主張する不動産売買契約書(甲契約書)に基づく金額ではなく、これとは別に存在する不動産売買契約書(乙契約書)が真正なものと認められるから、同契約書上の金額から実測により減額された金額を差し引いた金額とするのが相当であるとした事例
- 化粧品の特約店等の店舗内に化粧品メーカー等が設置した広告宣伝用資産は無償貸与されたものではなく受贈益に該当するとした事例
- 公益法人である請求人が債権未確定であるとして収益に計上しなかった本件賃貸料収入について、賃貸借契約が有効に成立していること等から収益に計上すべきであるとして請求人の主張を斥けるとともに、原処分庁が本件賃貸料収入を収益事業以外の事業のために支出したみなし寄附金に該当するとして行った更正処分について、本件賃貸料収入は収益事業以外の事業に支出したとする経理がなされていないので、原処分庁がみなし寄附金として所得金額を計算したのは誤りであるとした事例
- 土地の売買代金圧縮額相当額の金員を請求人が取得したとする原処分庁の主張を排斥した事例
- 株式の取得価額の算定に当たり、相続税財産評価通達の例に準じ類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式により算定したことは合理性があるとした事例
- 請求人が子会社から受けた利益剰余金を配当原資とする剰余金の配当及び資本剰余金を配当原資とする剰余金の配当は、その全額が資本の払戻しによるものに該当するとした事例
- 請求人が作成した輸出承認申請書に記載された金額のみをもって、譲渡価額と認定することはできないとした事例
- 請求人が前代表者から購入した土地の譲受価額は、その土地の時価に比し低廉であることから、時価と譲受価額との差額は受贈益として益金の額に算入されるとした事例
- 債務者である代表者が債務超過に陥っているか否かの判断に当たり、代表者が所有する個々の資産、負債の評価は、代表者が所有する請求人の株式を含め、時価評価(純資産価額方式)によることが相当であるとした事例
- 宝石の販売代金の一定割合の部分は買換え・買戻しの保証金として購入者から預かったものであるとする請求人の主張を退けた事例
- 土地の賃貸借に伴い地主に対して融資した貸付金の受取利息と支払地代を同額とした相殺取引を認容した事例
- 会社更生法による評価益のすべてについて未実現利益であるから課税所得を構成しないとする請求の主張を退けた事例
- 交換により取引の相手方に譲渡した資産の価額は、交換契約において確定している交換取得資産の価額を基として算定すべきであるとした事例
- 二輪車販売店のメーカーから無償で供与された資産は専らメーカーの広告宣伝を目的としたものではないとして受贈益を認定した事例
- 不動産業を営む請求人が不動産の販売について、他の不動産業を介在させることによって、販売代金の一部を除外していたものと認定した事例
- 土地の譲渡に当たり、架空の契約書及び架空の土地付建物の販売代理契約書を作成することにより、譲渡価額を過少に申告していたとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。