平成18年分については、請求人が養育費の送金は行っておらず長男と「生計を一にするもの」には該当しないことから、また、平成19・20年分については、元妻が請求人より先に勤務先に対し長男を扶養親族とする旨の扶養控除等申告書を提出していることから、いずれの年分も請求人において長男を扶養親族とする扶養控除の適用は認められないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/04/18 [所得税法][所得控除]《ポイント》 所得税法第2条第1項第34号に規定する「生計を一にするもの」とは、一般に親族が同一の生活共同体に属して日常生活の資を共通にしていることをいうものと解される。また、所得税法施行令第219条第1項は、二以上の居住者の扶養親族に該当する者があるときは、その所属は原則として居住者の自由な選択に委ね、いずれの居住者の扶養親族であるか定まらない場合には同条第2項により、いずれの居住者の扶養親族であるかを決することとしている。
この事例は、離婚後、元妻と同居している長男について、請求人と生計を一にしているか、また、元妻が請求人に先立って長男を扶養親族とする扶養控除等申告書を勤務先に提出している場合に請求人の扶養親族となるか否かが争われたものである。
《要旨》 請求人は、裁判により本件養育費の債務を負うことが確定していることから、送金がなくても、長男は請求人と「生計を一にするもの」に該当する旨主張するが、「生計を一にするもの」とは、常に生活費等の送金が行われている場合のように、日常生活の資を共通にしているものをいうと解すべきところ、請求人が平成18年中に本件養育費を送金していない以上、長男が請求人と日常生活の資を共通にしているとはいえない。
また、請求人は、裁判離婚した元妻との間には相互に意思の連絡がないから、所得税法施行令第219条《二以上の居住者がある場合の扶養親族の所属》第2項第1号は適用されず、同項第2号を適用すべきである旨主張するが、二以上の居住者の間に意思の連絡があるか否かによって同項第1号の適用が左右されるものではない。そして、本件では、平成19年分及び平成20年分とも、元妻が、請求人より先に、勤務先に対し、長男を扶養親族とする旨の扶養控除等申告書を提出しているから、所得税法施行令第219条第2項第1号により、長男は元妻の扶養親族に該当することとなり、同項第2号が適用される余地はない。
《参照条文等》 所得税法第2条第1項第34号 所得税法施行令第219条
《参考判決・裁決》 徳島地裁昭和59年5月30日判決(税資136号594頁) 平成20年10月29日裁決(裁決事例集No.76) 平成元年1月12日裁決(裁決事例集No.37)
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 平成18年分については、請求人が養育費の送金は行っておらず長男と「生計を一にするもの」には該当しないことから、また、平成19・20年分については、元妻が請求人より先に勤務先に対し長男を扶養親族とする旨の扶養控除等申告書を提出していることから、いずれの年分も請求人において長男を扶養親族とする扶養控除の適用は認められないとした事例
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