請求人が被った紳士録の掲載料や登録抹消料として支出した金員に係る損失は、詐欺ないし恐喝により生じたものであるから雑損控除の対象とはならないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2005/07/01 [所得税法][所得控除] 請求人は、「右翼団体系のLら(以下「本件加害者」という。)から、「人事録の掲載に係る年会費を支払わなければ、あちこちの団体が、場合によっては、勤務先や自宅に乗り込む」「人事録の木版を買い取れ」「ブラックブックという人名録の抹消料を支払え」などと次々脅迫を受け、請求人や家族の身の危険を感じ、本件損失に係る金員を支払ったものであり、自らの意思に基づいて現金を支払ったのではなく、本件加害者から抵抗不能の状態に陥るほどの暴行に等しい脅迫を受け、その結果、意思能力を欠き、現金を強取されたものであるから、本件損失は盗難により生じたものである。また、J警察署に届け出た「盗難による被害届」(以下「本件届出」という。)は、数度の事情聴取を受け被害の内容を十分承知しているJ警察署の担当刑事からの進言によるものであり、J警察署長はこれを受理し、本件届出を受理した旨の証明書(以下「本件証明書」という。)を交付しているのであるから、J警察署長は、本件損失を盗難によるものと認識しており、本件証明書はその事実を証明している。」旨主張する。
しかしながら、所得税法第72条第1項の規定から、雑損控除の対象となる損失は、「災害又は盗難若しくは横領による」ものに限られると解されるところ、請求人は、[1]電話で脅迫されて本件損失に係る金員を支払っていること、[2]J警察署は、請求人が届出をした事件を、盗難事件ではなく紳士録の掲載料や登録抹消料として現金をだまし取る詐欺ないし恐喝による事件として捜査しており、本件届出は誤って受理され本件証明書が交付されたこと、[3]請求人が受けたという脅迫の内容及び態様が請求人の主張どおりであることからすると、本件加害者が、請求人の反抗を抑圧する程度の脅迫を加えたとは認められないから、本件損失は、請求人が現金を強取されたことにより生じたものではなく、詐欺ないし恐喝により生じたものとするのが相当であって、「災害又は盗難若しくは横領による」ものとは認められない。したがって、本件損失は、雑損控除の対象とはならない。
平成17年7月1日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 請求人が被った紳士録の掲載料や登録抹消料として支出した金員に係る損失は、詐欺ないし恐喝により生じたものであるから雑損控除の対象とはならないとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(所得税法>所得控除)
- 会社員である請求人所有の自動車は雑損控除の対象となる「生活に通常必要な動産」には当たらないとした事例
- 寡婦控除の適用要件の一つである「夫」とは、身分法の基本法たる民法が定める婚姻関係にある男子を意味するものであるとした事例
- 平成18年分については、請求人が養育費の送金は行っておらず長男と「生計を一にするもの」には該当しないことから、また、平成19・20年分については、元妻が請求人より先に勤務先に対し長男を扶養親族とする旨の扶養控除等申告書を提出していることから、いずれの年分も請求人において長男を扶養親族とする扶養控除の適用は認められないとした事例
- 不動産売買仲介者に現金等を不法に領得されたことによる損失は詐欺による損失であるとして、雑損控除の対象とはならないとした事例
- 扶養控除に関する事項を記載した損失申告書を提出したことによって扶養親族の所属を選択したものとした事例
- 請求人が代表取締役である法人の従業員が、請求人の定期預金の一部を払い戻し、費消したことは横領に当たらず、その損害は雑損控除の対象となる損失に該当しないとした事例
- 扶養親族に該当するための所得要件である合計所得金額の計算においては、租税特別措置法第37条の12の2《上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除》第1項の規定は適用されないとした事例
- オートバイ(400c.c.)の盗難になる損失控除の対象にならないとした事例
- 配偶者名義で支払われた義援金について、確定申告書の提出後に発行された当該義援金に係る受領証等からみて寄付金控除の適用が認められるとした事例
- 請求人が被った紳士録の掲載料や登録抹消料として支出した金員に係る損失は、詐欺ないし恐喝により生じたものであるから雑損控除の対象とはならないとした事例
- 配偶者分べん費は、医療費控除の対象となる医療費を補てんする保険金、損害賠償金その他これらに類するものに該当するとした事例
- いわゆる振り込め詐欺の被害に遭い、だまし取られた金額分の損失は、雑損控除の対象となる災害又は盗難若しくは横領による損失には当たらないとした事例
- 自然医食品等は薬事法に規定する医薬品に該当しないから、医師の処方により購入しても、その購入費は医療費控除の対象にならないとした事例
- 配偶者出産費の付加金は、医療費控除の対象となる医療費を補てんする保険金、損害賠償金その他これらに類するものに該当するとした事例
- 山林の譲渡代金は横領されたものではないから所得税法第72条の雑損控除の対象にはならないとした事例
- 内縁の夫は所得税法第2条第1項第33号に規定する控除対象配偶者に該当しないとした事例
- 共有建物を分割した場合の取壊しによる損害は雑損控除の対象となる災害による損失に該当しないとした事例
- マンション建築用地の開発に当たり、市に対して土地を無償提供したことは、所得税法第78条第2項に規定する特定寄付金を支出した場合に当たらないとした事例
- 特別養護老人ホームへの入所に伴い、市に対して支払った老人福祉法の規定に基づく措置費徴収金は、医療費控除の対象にならないとされた事例
- マンション工事業者による隣接土地の堀削と集中降雨が原因で生じた居宅に係る災害損失について雑損控除を適用した事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。