本件ゴルフ会員権は、その譲渡の時点において優先的施設利用権が消滅していたとは認められないから、譲渡所得の基因となる資産に該当し、その譲渡による損失は他の各種所得と損益通算ができるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2007/05/31 [所得税法][損益通算及び損失の繰越控除] ゴルフ場経営会社F社は、ゴルフ場施設を所有するE社との間で、本件ゴルフクラブの経営並びにこれに関連する業務の一切を受託すること等を内容とする本件委任契約を締結し、ゴルフ場の経営を行っていたところ、E社が所有するゴルフ場施設用地及び建物の一部(本件競売不動産)について担保権の実行として不動産競売開始決定がなされ、K社を買受人とする売却許可決定がなされ、また、別の一部用地等(本件売却不動産)は、E社からV社に任意に売却された。
しかし、本件売却不動産についてはF社とV社の間の黙示の使用貸借契約によりF社が引き続き使用することができたと認められ、F社としては、これと森林組合等から借り受けている土地を引き続き使用することにより、本件ゴルフクラブを構成していた3つのコースのうち2コースの利用を会員に提供できたものと認められ、これら2コースを会員の利用に供すれば、社会通念上ゴルフ会員権の目的を達成することができるといえる。
そして、本件ゴルフクラブの営業は、平成17年1月○日に閉鎖されるまでの間続けられていたとの事実に照らすと、本件ゴルフ会員権の譲渡の時点(平成16年12月5日)でも、F社は、社会通念上ゴルフ場施設の利用というゴルフ会員権の目的を達成できる程度にまでゴルフ場施設をその利用に供することができていたと認められる。
さらに、本件委任契約において、F社は、E社の所有する不動産等だけではなく、自ら賃借した土地をも使用して本件ゴルフクラブを経営することが予定されていたと認められるから、本件競売不動産及び本件売却不動産の所有名義が第三者に移転し、かつ、F社において本件競売不動産の使用ができなくなったとしても、F社が第三者から土地を賃借して本件ゴルフクラブの営業を経営することが可能である以上、本件委任契約の目的が不可能になったとはいえず、また、本件委任契約には契約の終了に関する特約はなく、民法上の委任契約の終了事由も見当たらない。
また、本件ゴルフ会員権について、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務のいずれもが、譲渡時点で消滅していたとは認められない。
以上のとおり、本件ゴルフ会員権の譲渡の時点において、預託金会員制ゴルフ会員権の内容である優先的施設利用権、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務のいずれかが消滅し、その同質性を喪失したとは認められないから、当該ゴルフ会員権の譲渡は所得税法第33条第1項に規定する譲渡所得の基因となる資産の譲渡に該当する。
そうすると本件ゴルフ会員権の譲渡により生じた損失は、所得税法第69条第1項の規定により他の所得と通算することができるというべきであり、これを認めなかった原処分は違法であるから取り消されるべきである。
平成19年5月31日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
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