請求人が賃貸の用に供していた共同住宅(本件建物)及びその敷地の売却に伴い、本件建物の事務室を賃借していた本件建物の管理会社に対し立退料名目で支払った金員は、本件建物の譲渡に要した費用に該当しないとした事例(平成24年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成27年9月30日裁決)
裁決事例(国税不服審判所)
2015/09/30 [所得税法][必要経費][譲渡所得][譲渡費用]《要旨》 請求人は、賃貸の用に供していた共同住宅(本件建物)及びその敷地の売却(本件譲渡)に伴い、本件建物の事務室(本件事務室)を賃借していた本件建物の管理会社(本件賃借人)に対し立退料名目で支払った金員(本件金員)は、本件譲渡に要した費用に該当する旨主張する。
しかしながら、資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法第33条《譲渡所得》第3項に規定する譲渡費用に当たるどうかは、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものである。これを本件についてみると、請求人と本件賃借人との間の賃貸借契約は、遅くとも本件譲渡の日までに合意解約されたものと認められるところ、当該合意解約がされるまでの間に、本件建物及びその敷地の買主が本件事務室からの本件賃借人の退去を求めた事実を認めることはできない。そして、請求人と本件賃借人との間で本件賃借人の本件事務室からの退去に伴う本件金員の支払についての合意が成立したとする請求人の主張は主観に基づくものであり、また、当該合意が成立したことを明らかにする書面が作成された事実もうかがわれないから、当該合意の成立を認めることも困難である。そうすると、本件賃借人の本件事務室からの退去は、客観的に見て本件譲渡の実現に必要であったとは認められないから、本件金員の支払が客観的に見て本件譲渡を実現するために必要な費用の支払いであったと認めることはできない。したがって、本件金員は、譲渡費用に該当しない。
《参照条文等》所得税法第33条所得税基本通達33−7
《参考判決・裁決》最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(税資256号順号10373)
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
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