従業員及び常務取締役が行った売上除外に係る法人税の更正処分等について、横領損失と損害賠償請求権に係る収益は同一事業年度に計上すべきであるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/02/08 [法人税法][所得金額の計算][収益の帰属事業年度]《ポイント》 この事例は、いわゆる横領損失に係る損害賠償請求権に係る収益計上時期、重加算税の適用に係る「隠ぺい・仮装」の行為者及び更正の期間制限における「偽りその他不正の行為」該当性が主要な争点となったものであり、この事例では、経営に参画する常務取締役も横領行為者と認められること等から、これらの争点については原処分庁の主張を認めている。
なお、更正の期間制限により消費税の更正処分がされなかったことにより、清算されずに残った仮受消費税等の法人税における収益計上時期も争点となったが、この事例では、消費税を納付しなくてよくなったこと(債務免除益)が確定した事業年度に益金の額に算入すべきとの判断から、原処分庁が仮受消費税等の計上事業年度にこれを益金の額(雑収入)に算入して行った原処分を取り消している。
《要旨》 請求人は、会計帳簿の記載の基礎となる売上伝票の一部を抜き取るなどして行った売上除外(本件不正行為)は従業員R及びJ常務の個人的な不正行為であるから、これに係る損害賠償請求権に係る収益は、権利確定主義により請求人が本件不正行為を把握した事業年度に計上すべきである旨、本件不正行為を請求人の行為と同視して重加算税を課することはできない旨、請求人に税額を免れる意図はないから偽りその他不正の行為はない旨主張する。
しかしながら、不法行為による損失の発生と損害賠償請求権の発生、確定は、原則として、これを同時に損金と益金とに計上すべきであるところ、請求人の経営に参画する常務取締役が本件不正行為の事実を把握していたのであり、通常人を基準とすると、請求人において、本件損害賠償請求権の存在、内容等を把握し得ず、権利行使を期待できないといえるような客観的状況にあったということはできず、権利の行使を期待することができないような場合にも当たらないから、本件損害賠償請求権の額は、本件不正行為による損失の発生した日の属する各事業年度の益金の額に算入され、J常務の行為は請求人の行為と同視できるから、請求人に重加算税を課することができ、本件不正行為は「偽りその他不正の行為」に当たるというべきである。
《参照条文等》 法人税法第22条 国税通則法第68条第1項、第70条第5項
《参考判決・裁決》 東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁) 東京高裁平成18年1月18日判決(税資256号10265)
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 従業員及び常務取締役が行った売上除外に係る法人税の更正処分等について、横領損失と損害賠償請求権に係る収益は同一事業年度に計上すべきであるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(法人税法>所得金額の計算>収益の帰属事業年度)
- 土地と建物を一体のものとして譲渡する売買契約の内容を変更し、まず土地のみを引き渡した場合の土地の売却益の計上時期は、その引渡しの日の属する事業年度であるとした事例
- 土地の譲渡による引渡しの時期は、譲渡代金の授受完了後に判明したかしに基づき売買代金が改定されたとしても、当初の代金授受完了時であるとした事例
- 貸室の敷金の返還不要部分の益金算入の時期は、賃貸借契約を締結し、貸室の引渡しのあった時であるとした事例
- 従業員及び常務取締役が行った売上除外に係る法人税の更正処分等について、横領損失と損害賠償請求権に係る収益は同一事業年度に計上すべきであるとした事例
- 委託販売取引に係る収益の計上時期は委託商品を出荷した日(船積日)の属する事業年度であるとした事例
- 本件契約は、借家人の立退業務に係る請負契約ではなく、通常の不動産の売買契約であると認定した上、その収益の計上時期は、売買代金のおおむね95パーセントを収受した時であるとした事例
- 講習会に係る講習料についての収益の計上時期は講習会の終了時であるとした事例
- 買収予定地の一部分の土地をまず買収し引き渡した場合のその土地の譲渡収益はその引渡しの日に実現したものとした事例
- 自動車の運転免許の技能教習料等のうち未教習部分に係る金額について前受金経理を相当であるとした事例
- 総代理店契約の締結を求める者から受領した金員は、契約締結時に、その全額を収益に計上すべきであるとした事例
- 建物の敷金の返還不要部分の益金算入の時期は賃貸借契約を締結した時であるとした事例
- 不動産の譲渡収益について、テナントの立退きが未了であっても実質的に引渡しが完了していることから収益に計上したことは相当であるとした事例
- 商品等を継続販売することを条件とする広告協賛金はその支払を受けた日を含む事業年度の収益に計上すべきであるとした事例
- 有料老人ホームの入居者が支払う入居一時金につき、入居契約に基づいて収受した日の属する事業年度の益金の額に算入すべきであるとした事例
- 電気使用料の計量誤りにより過大に支払った電力使用料等の返還金は、その返還を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入することが相当であるとした事例
- ビル内貸店舗の賃貸借に当たり収受される保証金のうち、賃貸借期間満了時に返還を要しない、いわゆる保証金償却額は、賃貸借契約の締結時の収益であるとした事例
- 専任媒介契約に基づき受領した仲介手数料は、既に、媒介に係る取引当事者間の不動産売買契約が締結され、当該契約の効力は生じているから、当該仲介手数料を受領した日の属する事業年度の益金の額に算入すべきであるとした事例
- 土地の売却益の計上すべき時期はその代金を受領し権利証等の書類を引き渡した日の属する事業年度であるとした事例
- 建物賃貸借契約において敷引とされた金員は契約締結時に返還不要が確定していることから、その契約が締結された日の属する事業年度においてその全額を収益計上すべきであるとした事例
- 輸出取引に係る収益計上基準として船荷証券引渡基準(荷為替取組日基準)は公正妥当な会計処理の基準として相当なものとはいえず、船積日基準によるのが相当であるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。