建物賃貸借契約において敷引とされた金員は契約締結時に返還不要が確定していることから、その契約が締結された日の属する事業年度においてその全額を収益計上すべきであるとした事例
[法人税法][所得金額の計算][収益の帰属事業年度]に関する裁決事例(国税不服審判所)。
裁決事例(国税不服審判所)
2010/10/18 [法人税法][所得金額の計算][収益の帰属事業年度] 請求人は、本件建物賃貸借契約において敷引とされた金員(本件敷引金)は実質的な前受家賃であるから、本件建物賃貸借契約における賃貸借期間で均等償却した額を毎期収益に計上すべきである旨主張する。
しかしながら、本件敷引金は、従前の建物賃貸借契約の解除に伴い返還を要しないこととなった金額の一部が、本件建物賃貸借契約の予約契約の敷金に振り替えられたものと認められること、本件建物賃貸借契約では敷金の一部とされ前受家賃としては合意されておらず、請求人において前受家賃とする合理的理由がないこと、借主は、本件敷引金について前払家賃とはしなかったことからすると、本件建物賃貸借契約において敷引とすることにより、契約当事者の双方が返還を要しないことに合意(確認)したものと認められる。
そして、本件建物賃貸借契約において、本件敷引金が契約開始後に請求人の任意の方法で償却できるものとされていることからすれば、本件敷引金は、本件建物賃貸借契約が締結された時点において、請求人において返還を要しないことが確定していたものと認められることから、同時点において、一種の権利の設定の対価として返還を要しない確定収入となり、請求人は、自己の所有として自由に処分することができると認められる。
したがって、本件敷引金は、本件建物賃貸借契約が締結された日の属する事業年度において、その全額を収益に計上すべきものと解するのが相当である。
《参照条文等》 法人税法第22条第2項、第4項 法人税基本通達2−1−41
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 建物賃貸借契約において敷引とされた金員は契約締結時に返還不要が確定していることから、その契約が締結された日の属する事業年度においてその全額を収益計上すべきであるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(法人税法>所得金額の計算>収益の帰属事業年度)
- 期末現在において未収になっている工事代金等は、損害賠償請求権を行使し、その支払いを受けるべきことが確定した事業年度の益金ではなく、請負工事の完了した日の属する事業年度の収益であるとされた事例
- 委託販売取引に係る収益の計上時期は委託商品を出荷した日(船積日)の属する事業年度であるとした事例
- 土地建物の譲渡の日について、買受人が分譲マンションの建築をするために建物の解体工事に着手した日とするとともに、収益の額に買受人が支払うべき理由のない立退料等を含めるべきであるとした事例
- 商品等を継続販売することを条件とする広告協賛金はその支払を受けた日を含む事業年度の収益に計上すべきであるとした事例
- 土地の譲渡による引渡しの時期は、譲渡代金の授受完了後に判明したかしに基づき売買代金が改定されたとしても、当初の代金授受完了時であるとした事例
- 総代理店契約の締結を求める者から受領した金員は、契約締結時に、その全額を収益に計上すべきであるとした事例
- 原石運搬工事の損益計上時期は単位当たりの作業量の検収、すなわち役務の提供の完了の時であるとした事例
- 従業員及び常務取締役が行った売上除外に係る法人税の更正処分等について、横領損失と損害賠償請求権に係る収益は同一事業年度に計上すべきであるとした事例
- 不動産賃貸借契約締結に当たって、差入保証金の一部を返還しないこととしていた契約を、後日、中途解約の場合にのみ当該一部を返還しない契約に改めた場合、既往において課税された差入保証金の返還不要部分は取り消されるべきであるとする請求人の主張を排斥した事例
- 本件契約は、借家人の立退業務に係る請負契約ではなく、通常の不動産の売買契約であると認定した上、その収益の計上時期は、売買代金のおおむね95パーセントを収受した時であるとした事例
- 競走馬の売買に係る収益の計上の時期は、業界の取引慣行に照らし、売買代金の全額を受領した時とするのが相当であるとした事例
- 本件事業年度の有価証券売却損は過年度仮装経理の修正経理とは認められず、架空の損失の計上と認定した事例
- 土地と建物を一体のものとして譲渡する売買契約の内容を変更し、まず土地のみを引き渡した場合の土地の売却益の計上時期は、その引渡しの日の属する事業年度であるとした事例
- 輸出取引に係る収益計上基準として船荷証券引渡基準(荷為替取組日基準)は公正妥当な会計処理の基準として相当なものとはいえず、船積日基準によるのが相当であるとした事例
- 都市再開発法に基づいて収受した土地に係る補償金及び土地の明渡し等に伴う損失の補償金等は、本件係争事業年度の収益の額に算入されないとした事例
- ゴルフクラブを経営する請求人が新会員になることを希望する者から受領する本件金員は会員権の名義変更の日の属する事業年度の益金の額に算入すべきであるとした事例
- 本件債務免除益の益金計上時期は債権者からの債権放棄の通知がなされた日を含む事業年度であるとした事例
- 建物賃貸借契約において敷引とされた金員は契約締結時に返還不要が確定していることから、その契約が締結された日の属する事業年度においてその全額を収益計上すべきであるとした事例
- 社内的な帳簿締切日の定めにかかわらず定款所定の事業年度によって売上収益を計上すべきであるとした事例
- 貸室の敷金の返還不要部分の益金算入の時期は、賃貸借契約を締結し、貸室の引渡しのあった時であるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。