所得税の更正処分取消請求控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成18年(行ウ)第24号)|平成20(行コ)5
[所得税法][譲渡所得][租税特別措置法]に関する行政事件裁判例(裁判所)。
行政事件裁判例(裁判所)
平成20年10月21日 [所得税法][譲渡所得][租税特別措置法]判示事項
土地建物等の長期譲渡所得につき他の所得との損益通算を認めない旨の租税特別措置法(所得税法等の一部を改正する法律(平成16年法律第14号,以下「改正法」という。)による改正後)31条1項後段の規定を,改正法の公布日より前に行われた土地建物等の譲渡について適用することを規定した改正法附則27条1項の合憲性裁判要旨
土地建物等の長期譲渡所得につき他の所得との損益通算を認めない旨の租税特別措置法(所得税法等の一部を改正する法律(平成16年法律第14号,以下「改正法」という。)による改正後)31条1項後段の規定を,改正法の公布日より前に行われた土地建物等の譲渡について適用することを規定した改正法附則27条1項の合憲性につき,公布前に完了した行為や過去の事実から生ずる納税義務の内容を納税者の不利益に変更することは,租税法規の遡及適用に当たり,租税法律主義が目的とする一般国民の生活における予測可能性及び法的安定性の確保を害するものとして,憲法84条の趣旨に反し違憲となり得るが,納税者に不利益な租税法規の遡及適用であっても,(1)遡及の程度(法的安定性の侵害の程度),(2)遡及適用の必要性,(3)予測可能性の有無,程度,(4)遡及適用による実体的不利益の程度,(5)代償的措置の有無,内容等を総合的に勘案して遡及適用することに合理性があるときは,違憲となるものではないとした上,前記法改正は,(1)期間税について,暦年途中の法改正によってその暦年における行為に改正法を遡及適用するものであって,既に成立した納税義務の内容を不利益に変更するものではなく,遡及の程度は限定されていること,(2)土地建物等の長期譲渡所得における損益通算の廃止は,税率の引下げ及び長期譲渡所得の特別控除の廃止と一体として実施することにより,土地市場における使用収益に応じた適切な価格形成の実現による土地市場の活性化,土地価格の安定化を政策目的とするものであって,この目的を達成するためには,損益通算目的の駆け込み的な不動産売却を防止する必要があり,遡及して適用する必要性が高いこと,(3)前記改正の内容について,ある程度の周知はされており,前記改正が納税者において予測可能性が全くなかったとはいえないこと,(4)納税者に与える経済的不利益の程度は少なくないにしても,(5)居住用財産の買換え等について合理的な代償措置が一定程度講じられていることなどの事情を総合的に勘案すると,改正法附則27条1項は,憲法84条の趣旨に反し,違憲無効であるとはいえない- 裁判所名
- 福岡高等裁判所
- 事件番号
- 平成20(行コ)5
- 事件名
- 所得税の更正処分取消請求控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成18年(行ウ)第24号)
- 裁判年月日
- 平成20年10月21日
- 分野
- 行政
- 全文
- 全文(PDF)
- 裁判所:行政事件裁判例
- 所得税の更正処分取消請求控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成18年(行ウ)第24号)|平成20(行コ)5
関連するカテゴリー
関連する裁決事例(所得税法>譲渡所得>租税特別措置法)
- 社会保険診療に係る患者の一部負担金のうち、医師が請求しなかった部分も、租税特別措置法第26条“社会保険診療報酬の所得計算の特例”に規定する社会保険診療に係る収入金額に該当するとした事例
- 土地と建物を一括譲渡した場合において、土地譲渡益重課制度の対象となる土地の譲渡対価の額は、建物の未償却残額に建築費上昇率を乗じて得た建物の価額を土地建物の譲渡対価の額から控除して算定すべきものとした事例
- 農地につき贈与税の納税猶予の適用を受け、引続き農業経営を行っているとしても、相続税の期限内申告においてその農地を相続税の課税価格に算入した上、相続税の納税猶予の適用を受ける旨の記載、担保の提供、農業委員会の証明書の添付等がない場合、相続税の納税猶予の適用はないとした事例
- 昭和59年分の所得税の確定申告書には何ら無効原因となる錯誤の存在は認められず、当該確定申告において既に租税特別措置法第35条第1項の規定の適用を受けていることが明らかであるから、昭和61年分の所得税の確定申告において居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けることはできないとした事例
- 土地の譲渡が「収用の対償に充てるために買い取られる場合」に該当しないとして、租税特別措置法第34条の2の規定の適用が認められないとした事例
- 相続税の申告期限の翌日から2年を通過した日以後に譲渡された相続により取得した土地の譲渡所得について、租税特別措置法第39条の規定の適用は認められないとした事例
- 二以上の家屋が併せて一構えの家屋であると認められるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等の主観的事情は二次的に考慮すべき要素にすぎないとした事例
- 父親所有の家屋に増改築を行った場合において、増改築後に当該家屋を取得した場合にも住宅取得等特別控除が適用されるとの請求人の主張が排斥された事例
- 租税特別措置法第66条の6第1項の規定による課税の特例は租税回避行為がある場合に限定して適用されるべきであるということはできないとした事例
- 本件交際費は外国船主が負担する旨の契約により立替払をしたものであって、請求人の費用ではないとする主張を排斥した事例
- 請求人の多忙及び共同相続人の通院加療等を理由に、請求人が行った相続税の申告期限から3年以内に遺産が分割されなかったことについてのやむを得ない事由の承認申請を却下した処分が適法であるとした事例
- 譲渡した家屋は、主として居住の用に供していたものとはいえないから、租税特別措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当しないとした事例
- 区分所有登記のできない本件買換建物の取得価額は、事業の用に供されている部分の額のうち、請求人の所有持分に相当する額によるとした事例
- 地方税法附則第29条の5第1項に規定する長期営農継続農地として認定を受けた農地につき、その譲渡者が都市計画法に基づく開発行為の許可を受け、譲受者が当該許可を受けていない場合には、その譲渡は租税特別措置法施行令第20条の3第2項第1号に掲げる土地等の譲渡(租税特別措置法第31条の2第2項第4号に掲げる土地等の譲渡)に該当せず、特定市街化区域農地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例は適用されないとした事例
- 確定した決算において原価外処理している未確定の公租公課を課税土地譲渡利益金額の計算上原価の額に算入することはできないとした事例
- 相続開始前3年以内に取得した貸家には借家権の控除はなく、返還不要の礼金の合計額を控除した金額であるとした事例
- 団地協同組合の脱退に際し土地の割当てを返還してその対価を得たことは土地重課制度における土地等の譲渡に該当するとした事例
- 譲渡した土地は、居住用家屋の一部を取り壊して更地とした部分であり、居住用財産に該当しないとした事例
- 請求人がしたビール券の引渡しは、相手方の氏名等を帳簿書類に記載していないことに相当の理由があるから、使途秘匿金の支出には当たらないとした事例
- 居住の用に供していた建物が法人の所有である場合には、その敷地の譲渡について居住用財産を譲渡した場合の課税の特例の適用はないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。