公売不動産の見積価額を減額する改訂は適正であるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2002/11/08 [租税特別措置法][登録免許税法の特例](1)本件見積価額と前回見積価額との開差は、原処分庁が本件公売財産を適正に評価した結果によって生じたものと認められる。イ 本件の時点修正額は、本件公売財産の近隣にある本件公示地の価格を基準として、それぞれの算定時点の間における下落率(価額変動率)を基に算定されていることから、合理的かつ適正に求められた金額であり、原処分庁がこれを控除したことは相当である。ロ 敷金の返還額は、本件公売財産の買受人の債務負担額となるから、これを控除したことは相当である。ハ [1]本件土地については、第三者所有の建物があり、土地の利用、用途等が制約されるなど特殊な要因を含んだ市場性に極めて乏しい物件であると認められ、[2]過去10回の公売を実施し、見積価額を2度見直したにもかかわらず入札者がなかったことも、特殊な要因が影響したものと考えられることから、原処分庁が、これらの特殊な要因を考慮し、市場性減価額を控除したことは、合理的かつ適正なものといえる。ニ 公売に当たっては、財産の所有者が任意に処分する場合よりも、市場性が極めて制限され、見積価額が低廉となるのが通例であるから、原処分庁が公売の特殊性を考慮したことは相当である。なお、原処分庁は、公売の特殊性による減価率を前回見積価額の算定時の20%から30%に変更しているが、これは評価通達に定めた公売の特殊性の調整限度の範囲内において減額したものと認められる。(2)請求人は、原処分庁が本件公売通知書に不適切な記載をしたために、過去10回の公売において入札者がいないという結果となったのであるから、これを根拠に本件公売財産を市場性に極めて乏しい物件であると判断したのは誤りであると主張する。しかしながら、本件公売通知書は、本件公売財産の概要及び利用状況等を正確に記載していると認められるから、誤認等の生じる余地はないと考えられる。(3)請求人は、原処分庁の見積価額の決定に係る評価算定基準に問題があるから、公売の特殊性を参酌する必要は認められない旨主張する。しかしながら、原処分庁が決定した本件見積価額は、不動産鑑定士によって算定された本件鑑定価額を参考としており、請求人が主張する算定方法によって算定された評価額を基礎としたものといえる。そして、本件見積価額の算定に当たり、本件鑑定評価額から減価額を控除したことは、前記のとおり適正であるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。(4)当審判所が、財産評価基本通達に定める路線価の下落率を用いて、本件土地の公売時点の時価を算定すると、17,115,837円となる。そして、この金額は、本件見積価額の算定過程において原処分庁が算出した本件土地の時価、すなわち、本件鑑定評価額から時点修正額、本件敷金及び市場性減価額を控除した後の金額(公売の特殊性による減価額を控除する前の金額)である16,950,000円とほぼ同額となる。このことは、本件見積価額が本件土地の公売時の時価を反映し、同時に、原処分庁の本件公売財産の算定が適正に行われていたことを裏付けるものであるといえる。
平成14年11月8日裁決
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