相続財産の申告漏れの一部について、請求人がその存在を認識していたとまでは認められず、重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/09/27 [租税特別措置法][登録免許税法の特例]《要旨》 請求人は、相続財産である現金、貯金及び出資金の申告漏れについて、現金については相続税申告時に手元になく失念したためであり、また、貯金及び出資金については、その存在を知らなかったためであるから、隠ぺい又は仮装の行為はなかった旨主張する。
しかしながら、重加算税は、その制度の趣旨にかんがみれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要と解するのは相当でなく、納税者が当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきであるところ、請求人は、現金については、その保管状況等からみてその存在を認識していたものと認められるにもかかわらず、申告書作成の際に関与税理士に対してその存在を秘匿する虚偽の説明をしていること、また、貯金については、請求人の取引への関与の状況からしてその存在を認識していたものと認められるにもかかわらず、申告書作成の際に関与税理士から金融機関の残高証明書の入手依頼があったのに入手手続を行わず関与税理士にその存在を知らせなかったことからすれば、これらの財産の申告漏れについては、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上でその意図に基づく過少申告をしたものと認められるから、重加算税の賦課要件を満たしているといえる。一方、出資金の申告漏れについては、申告前に請求人がその存在を認識していたとまでは認められないから、重加算税の賦課要件を満たしているとはいえない。
《参照条文等》 国税通則法第68条第1項
《参考判決・裁決》 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
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