被相続人の妻が被相続人の財産内容を開示しなかった等の事情は、相続人間の主観的事情にすぎないから、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書の「正当な理由」があるとは認められないと認定した事例(平成20年3月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成26年11月7日裁決)
裁決事例(国税不服審判所)
2014/11/07 [租税特別措置法][登録免許税法の特例]《要旨》 請求人は、亡弟(本件被相続人)の相続(本件相続)に係る亡父の相続税の納付義務を承継しているところ、亡父は、本件被相続人の相続財産の全てを管理していた本件被相続人の妻に対して、相続税法第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》第1項各号に規定する財産(みなし相続財産)を含む相続財産の全容を把握するための明細の提示を依頼したが応じてもらえず、また、本件被相続人の妻が申し立てた遺産分割調停に係る遺産目録等にはみなし相続財産が記載されていなかったが、記載された財産等に基づいて本件相続に係る相続税の課税価格を計算すると課税価格は基礎控除額を下回ることとなったことから、亡父が相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が主張する上記の事情は、相続人相互の人間関係に基因する事情であり、また、上記の事情は、相続人相互の人間関係によりみなし相続財産の確認ができなかったが、亡父がみなし相続財産を課税価格に加えないことを自己判断して課税価格を計算した結果、課税価格が基礎控除額以下になったというものであるから、相続人相互の人間関係を前提とした亡父の自己判断に係る事情といえる。そうすると、請求人が主張する事情は、亡父を含む相続人間の主観的事情にすぎず、亡父が相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったということはできないから、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当しない。
《参照条文等》 国税通則法第66条第1項
《参考判決・裁決》 大阪高裁平成5年11月19日判決(裁Web)
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 被相続人の妻が被相続人の財産内容を開示しなかった等の事情は、相続人間の主観的事情にすぎないから、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書の「正当な理由」があるとは認められないと認定した事例(平成20年3月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成26年11月7日裁決)
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(租税特別措置法>登録免許税法の特例)
- 後発的事由(判決)に基づく更正の請求に対して、請求人が申告当時、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更を来すことを予想し得たとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
- 被相続人が外国人である場合の共同相続人の国税の納付義務の承継額は本国法によるとした事例
- 少額配当等に係る更正の請求は認められないとした事例
- 告知処分時において譲渡担保の目的とされた債権が譲渡担保財産として存続していたとした事例
- 原処分庁が事実の隠ぺい又は仮装の行為によって過大に計上したとする貸倒損失額は、更正処分をした事業年度において所得金額に加算することはできないから、当該事業年度には当該貸倒損失額に係る重加算税の計算の基礎となる税額が生じないとした事例
- 営業譲渡代金の一部から株式譲渡代金名下で個人株主に金員を交付したことが、法人の解散を前提とする残余財産の分配に当たるとした事例
- 公共事業施行者が誤って発行した公共事業用資産の買取り等の証明書等に基づいて、租税特別措置法第33条の4第1項の規定による特例を適用して確定申告したことが、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当しないと判断した事例
- 差押不動産の売買契約における買主は滞納者であり、その購入資金である住宅ローンの返済は滞納者が行い、差押え前に請求人が差押不動産の共有持分を取得した事実は認められないことからすれば、差押不動産の取得に滞納者の妻であった請求人の協力、寄与が認められたとしても、差押不動産は夫婦共有財産ではなく、その所有権を有しているのは滞納者であるとした事例
- 請求人の常務取締役として経営に参画し、担当部門に係る取引全般を総括的に委任されている者の行った仕入金額の架空計上は、たとえそれを請求人の代表者が知らなかったとしても、請求人の隠ぺい又は仮装行為と同視すべきであり、重加算税の賦課決定は適法であるとした事例
- 納税の猶予不許可処分の取消しを求める利益がないとした事例
- 不動産売買契約の和解に伴う損失は、当該和解のあった日の属する事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであって、国税通則法第23条第2項の規定により、そ及して所得金額を減額修正することはできないとした事例
- 課税土地譲渡利益金額の計算上控除される譲渡経費の算定方法につき、確定申告において概算法を採用したときには、後日、実額配賦法を採用して更正の請求をすることはできないとした事例
- 期限後申告書の提出は決定があることを予知してなされたものではないとした事例
- いわゆる「つまみ申告」が重加算税の課税要件を満たすとした事例
- 贈与があったことを前提としてなされた第二次納税義務告知は、受領した金員の性質を誤認したものであり、取り消しするのが相当であるとした事例
- 先の差押調書謄本が送達されたと認定し、これにより滞納国税の徴収権の消滅時効が中断され、その後に行われた差押処分が適法であるとされた事例
- 出資口の譲渡について、売買契約の要素に錯誤があるとして契約解除したことが、国税通則法第23条第2項に規定する「やむを得ない理由」に該当しないとした事例
- 請求人の異議申立ては、不服申立期間の経過後になされた不適法なものであるから、国税通則法第75条第3項の規定により、本件審査請求も不適法であるとした事例
- 譲渡担保権者に対する告知処分及び譲渡担保財産につきした差押処分は、国税徴収法第24条第1項ないし第3項の規定に従って適法になされているとした事例
- 輸入貨物に係る消費税及び地方消費税の申告につき、意図的に過少申告することを認識した上で、正規の価格を示す書類を隠匿したものとは認められないと認定した事例(輸入申告に係る消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・全部取消し・平成26年10月9日裁決)
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。